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パブリックIaaSに参入 VMwareの「vCloud Hybrid Service」 (仮想化/プライベートクラウドの延長としてのパブリッククラウド)

仮想化/プライベートクラウドの延長としてのパブリッククラウド

 vCHSの一般提供によって、VMwareは本格的にAWSとMicrosoft Azureと対抗することになる。現在、この市場ではAWSが独占状態にあるが、VMwareはAWSの牙城を崩すことができるだろうか。

 Arstechnicaは、既存顧客の利用が中心になると予想。「社内でVMware技術を多用しており、オンプレミスとクラウドで一貫性のある管理環境を持ちたいと思っている顧客には便利なサービスだ」と述べている。また、これがハイパーバイザーなど仮想化技術で激しく競争するMicrosoftと同じアプローチである点も指摘する。VMwareが同時に発表したサービスとしてのデスクトップなどの付加機能は差別化になりそうだ。

 Gartnerのアナリスト、Kype Hilgendorf氏は、さらに詳しく公式ブログで分析した。vCHS戦略については「VMwareはパブリッククラウドサービスの構築を迫られていた」と見る。仮想化とプライベートクラウド分野で展開してきた同社だが、企業の間ではパブリッククラウドの利用に前向きなところが増えている。

 企業はクラウドネイティブなアプリケーション、それにワークロードの開発・テストなどの用途でパブリッククラウドの利用を検討しており、「80~90%の(パブリッククラウドを利用していない)ワークロードがパブリッククラウド環境に移行する“変曲点”が迫りつつある。VMwareは将来予想されているシフトに取り残されたくないはずだ」(Hilgendorf氏)という。

 そう聞くと防衛的な動きととれるが、Hilgendorf氏はvCHSが受け入れられるかについて楽観している。「エンタープライズ顧客の興味は高いだろう」。なぜなら、既存顧客はvSphereなどのVMwareの技術に大きな投資をしており、簡単にパブリッククラウドに移行できる方法がVMwareから提供されることに期待していると見るからだ。VMwareが併せて発表したネットワーク仮想化「NSX」や管理機能などは、このようなハイブリッドクラウド環境に必要な機能となり、既存顧客にとって十分に魅力的だという。

 Hilgendorf氏は、AWSはエンタープライズ向けではないというVMwareの見解に異論を唱えながら、vCHSはAWSに影響は与えず、ローカル市場でvCloudベースのクラウドを提供する事業者や小規模なクラウド事業者に脅威となると予想する。

(岡田陽子=Infostand)