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クラウドリソースの取引市場を開設へ ドイツの証券取引所 (クラウドコンピューティングの新しい時代へ)

クラウドコンピューティングの新しい時代へ

 業界はもちろん、このニュースを評価している。Forrester Researchのアナリスト、Phil LeClare氏はZDNetへの寄稿で、「勇気ある動きだ。クラウド経済が公開された場所で取引されるようになる」とし、「クラウドコンピューティングの次の時代に入りつつある」と記した。IDCアナリストのDavid Bradshaw氏は「このモデルがうまくいくか、興味深い」とReutersにコメントした。

 クラウド事業者への影響については、IDCのBradshaw氏が、クラウド提供者にとっては利用を最適化する方法として面白い場所になり、スポット市場では自身の顧客に対するよりも安くキャパシティを提供することになるのではないか、と予想する。だが需要が生まれることから、価格が上がる可能性も十分にあるとみる。

 ForresterのLeClare氏は、長期契約者には取引所のメリットは感じにくく、3年程度の契約であれば変化はないと予想。地元欧州のクラウドプロバイダがリソース調達の選択肢として利用し、顧客に再販するような形式もありうると見ている。また、企業が余剰のストレージキャパシティを提供する可能性については、ドイツのデータ保護法のほか、多くの場合でクラウド管理スタックがプライベートクラウドに実装されていることなどから、難しいと考えている。

 また将来的には、取引所で調達するリソースに適しているワークロードとそうでないものが区別されるだろうとも予想する。取引所の登場が、企業が自社のビジネスモデルを変革するチャンスをもたらし、IT部門が、コストがかさむ“コストセンター”から、収益を生む“プロフィットセンター”になるといった変化が押し寄せる可能性も指摘している。

 だが、これらの変化がすぐに起こることはないだろう。それはDeutsche Boerse自身も認識しており、黒字化の目標は開始後3年と設定している。証券取引所は競争が激しく、生き残りをかけて大手同士の統合が進んでいる。Deutsche Boerseも2012年にニューヨーク証券取引所のNYSE Euronextとの合併を試みた経緯がある。クラウドリソースの取り引きは、拡大を図る証券取引所の新しいメニューになるかどうか、と言う点でも注目されている。

岡田陽子=Infostand