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AWSジャパン、金融市場向け戦略「Vision 2030」でさらなる金融DXを推進 三井住友信託、アフラックの事例も紹介
2026年4月15日 10:16
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWSジャパン)は、金融向け戦略説明会を4月14日に開催した。
2025年に発表した金融市場向け戦略「Vision 2030」を中心に、金融業界の基幹システムのクラウド移行や、AIの活用、サポートなどについて解説が行われた。
また、クラウド移行についての事例として三井住友信託銀行株式会社が、AI活用についての事例としてアフラック生命保険株式会社が登壇し、取り組みについて語った。
金融市場に向けた「Vision 2030」を実現する、AIプラットフォームやレジリエンシーなどの強化
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 鶴田規久氏(常務執行役員 金融事業統括本部 統括本部長)は冒頭で、「ほとんどの大手の金融機関のお客さまにお使いいただいている。また、ほとんどの大手のSIerにもAWS(Amazon Web Services)をベースにさまざまな提案をしていただいている」と紹介した。
金融業界の基幹系のクラウド移行が加速
前述のとおり、2025年には、2030年に向けた金融市場向け戦略「Vision 2030」が発表された。ここで掲げられたのが、「戦略領域への投資拡大」「新規ビジネスの迅速な立ち上げ」「イノベーション人財の育成」「レジリエンシーのさらなる強化」の4点だ。
この4点について鶴田氏は、生成AIを活用して開発生産性を向上させて投資のポートフォリオを大きく変えること、ビジネスを早く立ち上げること、イノベーション人財育成を継続的に推進していくこと、同時に足元のレジリエンシーのさらなる強化にも力を入れていくことを説明した。
こうした取り組みによって、金融業界の基幹系のクラウド移行が加速している、と鶴田氏は紹介した。今回の説明会に登場する三井住友信託銀行とアフラック生命保険もその1つだ。
そのほか、JPX(日本取引所グループ)でTDnet(適時開示情報閲覧サービス)のAWS移行が2027年9月リリースに向けて進行中であることや、arrowheadのマッチングエンジンのAWSでの実証実験を行っていることなどを鶴田氏は紹介。SBI新生銀行についても、少量多品種な金融商品に対応した次世代バンキングシステムでのAWS採用が決まり、チャレンジしていくと同氏は語った。
AIエージェントの本番稼働やスケールのためのプラットフォーム
続いてはAIについて。鶴田氏によれば、AIエージェントでは性能や用途、利用料に応じてLLMを使い分ける世界が来ているという。そして、そのためのプラットフォームとして、共通のAPIで100種類を超えるAIモデルを呼び出せる「Amazon Bedrock」を紹介した。
「AIエージェントは、メインフレームから分散系のシステムに移ったときと同じ状況にあり、アプリケーションの展開や監視・運用のための基盤が必要となる。Bedrockはまさにそういう機能を果たしている」(鶴田氏)。
加えて鶴田氏は、AIエージェントの構築や展開、運用の基盤「Amazon Bedrock AgentCore」も紹介した。
こうしてAWSでは、Bedrockを中心にチップからアプリケーションまでにわたってAIの構築を支援している、と鶴田氏。「生成AIについても、昨年から多くのお客さまで本番稼働をし始めており、今年に入ってスケールの段階に来ていると認識している」。
サポート上位プランなど、金融業界で使われるレジリエンシー対策を紹介
続いてサポートだ。
まず、クラウド移行やAI、内製化など、ユーザー企業における人材育成面にも力を入れていると鶴田氏は紹介した。
具体例として、オリックスグループでは、グループ内横断でAWSの技術コミュニティを作り、技術の横展開を推進しているという。またアイフルでは、エンジニア0人でベンダー丸投げの体制から、5年で200名を超えるエンジニアを集めて内製化を進めていると説明した。
また、インフラとサービスのレジリエンシーにも力を入れている。「クラウドがオンプレミスに匹敵する、さらには凌駕するぐらいレジリエンシーを高めていけると確信している」(鶴田氏)。
具体的には、大手の金融機関を対象にレジリエンシーのワークショップを展開している。さらに、「金融リファレンスアーキテクチャ日本版」も2025年10月にアップデートした。最新バージョンでは、サイバーレジリエンスに対応。加えて、「金融リファレンスアーキテクチャ」自体をAIが参照して利用者にナレッジを提供できる環境を、年内に完成させる予定だと鶴田氏は説明した。
サポートプランについては、2025年末に、これまでの最上位のEnterprise Supportのさらに上位にあたる「AWS Unified Operations」が新設された。例えば、Enterprise Supportでは障害イベントから15分以内に初動を起こすところ、Unified Operationsでは5分以内にAWSからプロアクティブにアプローチするという。また、顧客を徹底的に理解した「ドメインスペシャリストエンジニア(DSE)」が、顧客環境に応じた対応を迅速に行うとのことだ。
金融業界では、SOMPOホールディングスがUnified Operationsプランを契約したと鶴田氏は紹介。そのほか、サポートサービスを契約している金融業界の例を同氏は挙げた。
サイバーセキュリティの強化についても鶴田氏は取り上げ、AWSでは脅威インテリジェンスをグローバル規模で収集・分析して対応していることや、PQC(耐量子計算機暗号)検討会にもメッセージを出していることなどを紹介した。
最後に、ここまでの内容から、金融業界でAWSが使われている理由について鶴田氏はまとめた。足元のレジリエントな基盤とセキュリティ、AIサービスの選択の自由、サポート体制、イノベーション文化を挙げ、それをパートナーとともに展開して、今後のビジネスをさらに拡大していきたいと語った。
- 初出時、鶴田規久氏の肩書きが古いものになっておりましたので、修正いたしました。お詫びして訂正いたします。
三井住友信託銀行:少量多品種なビジネスモデルにAWSの親和性が高かった
三井住友信託銀行株式会社のクラウド移行については、岡松参次郎氏(執行役員)が登壇。「三井住友信託銀行のAWSへの戦略的“Bet”とAmazon Cultureを活用した組織変革」と題して、「簡単に言うと、超AWS版を使い倒しますという内容」(岡松氏)を語った。
同行では、基幹系システム以外の情報システムは、ほぼすべてAWS上で稼働しているが、同行のサービスが少量多品種ということもあって、現在では200弱にも及ぶという。
岡松氏はAWS活用について、3段階で説明した。フェーズ1は2017年からで、クラウドにリフトしただけのIaaSとしての利用から始まった。フェーズ2ではそこから、コンテナやAuroraなどのクラウドネイティブなサービスを標準として定め、顧客元帳などの最重要システムの移行も決めた。
さらに、これからのフェーズ3については、「AWSをPaaSやSaaSとして使うだけではなく、中身をきちんと理解して、自社でスクラッチで作ったのと同じ環境を、より早くより強固に構築する段階へと進んでいきたい」と岡松氏は語った。
では、なぜAWSに「戦略的“Bet”」するかについて、岡松氏は「お客さまひとりひとりのサービスをたくさん創造したいというこだわりによって、個別システムが乱立し、その結果、機能が重複して、ガバナンスの欠如などの構造的課題が生じていた」と以前の状態を説明した。
この問題解決のためにAWSを採用したことについて、同行の少量多品種なビジネスモデルに、AWSのビルディングブロック形式が親和性が高かったことを岡松氏は挙げた。同行ではこうした理由から、AWSを標準アーキテクチャにして、プロセスの標準化を推進したという。
さらに、AWSとの協業により、クラウドネイティブ化の「All-Out Cloud Factory」という枠組みを開始したことを岡松氏は紹介した。標準化、プラットフォームエンジニアリングの構築、AIやDBMSの集約などによるデータ利活用環境の整備の3つを柱とする。
この支援による最初のプロジェクトとしては、業務の心臓といえる顧客元帳を、商用データベースからAurora PostgreSQLに移行する。「このプロジェクトでは、AWSからマイグレーションノウハウの提供を受けて迅速化と効率化を図り、今後の標準化推進の橋頭堡とする」(岡松氏)としている。
さらに技術とインフラだけでなく人材育成の取り組みについても岡松氏は説明した。4月にはシステム子会社を本社に統合してモノづくりを推進。さらに、Tech Journeyとして、全社で約2000名が参加する学習ムーブメントを創出。AWSのカルチャーを参考にしたり、先人たちの経験談を講演で聴いたりといった活動をしているという。
最後に次のステージについて、岡松氏は、顧客ひとりひとりのオーダーメイドサービスインフラの提供、少量多品種のスケール実現、フルスクラッチでありながら効率性と統制の効いたインフラ群の実現を挙げ、「ダ・ヴィンチ エンジニアリングと言えるような世界を作れたらいいと期待している」と語った。
アフラック生命保険:AIエージェントと協働する環境をBedrock AgentCoreで構築
アフラック生命保険の事例としては、AIを企業の中核能力とする「AX(AI Transformation)」の取り組みについて、二見通氏(取締役専務執行役員)が語った。
同社ではこれまでDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、顧客サービスの高度化や業務の効率化に取り組んできた。一方で、AIの進化が早い中で、人とAIが協働する環境を用意して、顧客サービスや働き方などを再創造しようとするのがAXだという。「これからは、組織や人材、カルチャー、商品開発など、あらゆる面でAIを最大限に活用していく」と二見氏。
こうした環境をAWSとの協業によって実現する。その想定ユースケースを3つ、二見氏は紹介した。
ユースケース1は、保険金の支払いだ。これまでは一部で生成AIを利用していたが、AIエージェントが検索・判断・入力して、支払いを素早く行えるようにする。もちろんヒューマン・イン・ザ・ループの原則により、最終的な判断は人間が行う。
このユースケースのポイントとして、複数のAIエージェントが協調して動くことがある。そこでAWS Bedrock AgentCoreによって、マルチエージェントのA2Aやセキュリティを実現する。
2つめのユースケースは、契約保全業務だ。これまでほぼすべて人が手で処理していたのを、AIエージェントが情報照会や可否判断を行って効率化する。
このユースケースについては、Bedrock AgentCoreのGatewayにより、オンプレミスのホストコンピュータのビジネスアプリケーションと連携し、契約照会などを行えるようにする。
3つめのユースケースは、コンタクトセンターだ。人間によるコンタクトセンターは現在24時間365日稼働しているわけではないのに対し、生成AIを組み合わせたアバターが対応する。
このユースケースにおいては、Bedrock AgentCoreが、AWS上のAIエージェントと他社のクラウド上のAIエージェントをシームレスに連携してくれるという。
なぜAWSを選んだかについては、二見氏は、AWSの安全性と俊敏性を挙げた。安全性としては、AWSがエンタープライズで安定的に利用されてきた実績などがある。そして全世界からベストプラクティスが集まりアップデートされる点や、プロフェッショナルサービスとしてAWSのエンジニアが寄り添ってアドバイスしてくれることを同氏は挙げた。
今後のAWS活用については、「来年はオープン系のものはフルクラウドで稼働させる予定。メインフレーム上のビジネスアプリケーションも順次クラウドに移行していく」と二見氏。加えて、人材育成にも力を入れていき、そこでもAWSと連携していきたいと語った。
そこでAWSに期待することとしては、AWSによるコストベネフィットと、そこで捻出された資金を戦略的な投資に使いたいこと、そしてスピードと先進性を二見氏は挙げた。そして、AWSの「Vision 2030」にも含まれるレジリエンシーの強化について、「金融機関にとっては重要な点なので、引き続き強化していただきたいと思っている」と期待を語った。




































