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データセンターの電力需要がさらに増加中 ビッグテック各社は原子力に突き進む

 ビッグテック各社が相次いで原子力から電力を調達することを発表した。先頭を切ったのはMicrosoftで、1979年の炉心溶融(メルトダウン)事故で知られる「スリーマイル島」原発を再稼働して供給を受けるという。これに続いて、Google、Amazonも次世代原子炉の推進に取り組むことを表明した。米国の原子力がデータセンター需要で復活しているようだが、その行方は――。

(行宮翔太=Infostand)

再稼働、先進小型モジュール炉で数年後の電力を確保

 9月20日の発表によると、スリーマイル島原発で再稼働させるのは、事故を起こした2号機ではなく2019年に閉鎖された1号機の方だ。1号機は1974年運転開始で、30年以上の稼働実績がある。閉鎖となったのはもっぱら経済的な理由からで、天然ガスの記録的な低価格と補助金を受けた再生可能エネルギーの台頭で、競争力を失ったためだった。

 Microsoftは、原発を所有するConstellation Energyから20年間にわたって電力を購入する予定で、2028年の再稼働後、800メガワット超の全量をデータセンターに利用する計画だ。発電所の名称も、事故のイメージがつきまとうスリーマイル島(TMI)から、「Crane Clean Energy Center (CCEC)」へと変更される。再稼働の費用は16億ドルと見積もっている。

 その約3週間後の10月14日、今度はGoogleが原子力スタートアップのKairos Powerから電力を購入する契約を結んだと発表した。Kairosは自社開発のSMR(Small Modular Reactor=小型モジュール炉)を2030年から2035年まで順次させる予定で、供給量は最大500メガワットになるという。

 さらに2日後の10月16日には、Amazonが、SMRを開発する別の原子力スタートアップ、X-energyに出資するなど3件の発表を行った。出資額は公表していないが、「5億ドルの投資ラウンドを主導する」と説明している。残りの2件は、Amazonがデータセンターを所有する地域でX-energyのSMRの建設を推進し、稼働させるため地元と協力するというものだ。発電量は合わせて600メガワット以上になる。

 SMRは、モジュール構造で工場で製造して運搬・設置できる小型の原子炉で、立地にも柔軟性があるとされている。GoogleとAmazonは、このSMRに賭けることにしたようだ。

 なお、各社ともこうして得られる電力が「100%カーボンフリー」であることを強調している。