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AI開発の責任をめぐって二分 カリフォルニア州AIモデル安全法「SB 1047」

各界から湧き起こる賛否

 法案は当初案に業界からのフィードバックを受けて、いくつかの修正が行われた。刑事罰の削除(民事罰のみとする)、州規制機関設置の取りやめ、オープンソースモデル開発の保護(費用1000万ドル未満で微調整したモデルを対象外とする)などで、これを受けて8月15日に州歳出委員会を通過した。

 しかし、それでも反対は根強かった。まず民主党の重鎮Nancy Pelosi連邦名誉下院議長(カリフォルニア州)が声明を出し、「消費者や知財の保護は必要だが、SB 1047はカリフォルニア州がAIをリードすることを妨げる恐れがある」などとして反対を表明した。

 そして、22日には、カリフォルニア商工会議所など経済団体、サンフランシスコ市長らが、一斉に反対の声明を発表。同時に当事者となるOpenAIの知事宛て書簡の内容を、Bloombergが報じた。

 いずれも「法案はAI業界のイノベーションを阻害し、この問題に関する規制は州ではなく連邦政府が行うべきだ」とするほか、可決されると「AIに関する米国の競争力や国家安全保障に『広範かつ重大な』影響を及ぼす可能性がある」と主張。知事に署名を拒否するよう求めている。

 一方、推移を見守っていた開発者や研究者の間からは、9月に入って逆に法案成立を推進する動きが起こった。

 9月9日、OpenAI、Google DeepMind、Anthropic、Meta、xAIの現・元従業員100人超が「最も強力なAIモデルは、深刻なリスクをすぐにもたらす可能性がある」として、規制法案を支持する公開書簡を発表した。

 さらに学術界も法案を支持する。翌19日に発表した知事あて公開書簡には、“AI界の3人のゴッドファーザー”のうちGeoffrey Hintonトロント大名誉教授と、Yoshua Bengioモントリオール大教授の両氏が署名。また、Stuart Russell UBバークレー教授らAI界の大物、「クリエイティブ・コモンズ」で知られるLawrence Lessigスタンフォード大教授ら広い範囲の研究者100人余りが賛同している。なお、Elon Musk氏も支持派だ。