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シリコンバレーを分断 ヒートアップする大統領選

税、規制、AI、そして仮想通貨

 テック業界で起きている共和党支持の動きには、イデオロギー以外にもいくつかの背景がある。これをFTは、「税の軽減」「規制緩和」の大きく2点から分析している。

 「税の軽減」は、Biden政権が計画する資産1億ドル以上の富裕層への増税案への反発がある。Andreessen Horowitzはブログとポッドキャストで、「この増税はスタートアップとベンチャーキャピタルの両方を完全に殺してしまう」と述べている。

 「規制緩和」は、現政権下の公正取引委員会(FTC)や司法省(DOJ)は、テック業界で独占的的立場にある企業に厳しいという意見だ。その一つの例がAdobeによるFigmaの買収だ。2022年9月に計画が発表されたが、当局の承認を得られず1年3カ月後に合併合意を解消した。規制当局はMeta、Google、Amazonなどのプラットフォーマーにも厳しい姿勢で臨んでいる。

 この流れでは、“今が旬”のAIの開発にも悪い影響が出ると投資家は見ているようだ。

 ビッグテックを顧客とする弁護士事務所FreshfieldsのパートナーBoris Feldman氏は、FTCのLina Khan委員長を名指しで批判している。「テックのCEOたちはKhan氏の執拗な敵意を懸念している。FTCはAIの発展を妨げようとしており、これが非西側諸国に対してわれわれを競争上不利な立場に追いやる可能性があるからだ」

 そして直近でホットなのが暗号通貨業界だ。Trump大統領は自らを“暗号通貨大統領(Crypto President)”と呼んでいる。7月25日から3日間、ナッシュビルで開催された「Bitcoin 2024」に登場して「国家としてビットコインを備蓄する計画」を打ち上げた(国家備蓄はビットコインの価格を支える効果があると考えられている)。そして、その暗号通貨に80億ドルという巨額の投資をしているのが、Andreessen Horowitzだ。

 なお、Trump氏の副大統領候補J.D. Vance氏は元VCだ。早くからTrump支持を打ち出したPayPal共同創業者Peter Thiel氏の下で働いていた経験がある。