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クラウド戦略とオープンソース開発の行方は IBMのHashiCorp買収

買収後のオープンソース戦略は?

 もうひとつ、IBMがHashiCorpのオープンソース開発をどのように扱うのかという疑問がある。

 クラウド分野のオープンソース開発者Kelsey Hightower氏は買収のニュースを受けて、「もし私がHashiCorpとの取引を担当するIBMのリーダーだったら、HashiCorpの全製品を(オープンソースライセンスの)Apache-2.0に移行するのが最初の決断となる」とツイートした。

 HashiCorpは昨年、製品ライセンスをオープンソースの「Mozilla Public License v2.0」から「Business Source License v1.1」に変更して、開発コミュニティに波紋を広げた。最近も、Terraformをフォークして生まれた「OpenTofu」プロジェクトとの間で、弁護士間の激しい応酬があったところだ。

 買収発表の際、IBMはHashiCorpのオープンソース開発には言及していない。広報担当者は「われわれのオープンソースへのコミットメントとその実績は非常に明確だ」とSDxCentralに語ったという。

 一方で、HashiCorpは、Terraformをはじめ7つの製品を単一プラットフォームに統合したクラウド管理型SaaSサービス「The Infrastructure Cloud」を発表したばかりだ。

 大口顧客には魅力的な製品だが、もしこれで、小規模のユーザーのHashiCorpツール利用が損なわれるとなれば、反発が出るだろう。VMwareでは、大口優先のサブスクリプション化が大炎上を招いた。

 だが、IBMは、OpenTofuプロジェクトを管理しているLinux Foundationの有力スポンサーだ。また、Linux Foundationが昨年末に立ち上げたVaultのオープンソース版「OpenBao」はIBMが支援して発足した。

 IBMがライセンスを巡る混乱を収め、HashiCorpツールの大企業への展開とオープンソースの開発・活用のバランスを取れば、関係者皆がWin-Winになれそうだが、どうだろうか――。