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DeepMind共同創業者を迎えて新組織 MicrosoftのAI戦略再構築

OpenAI依存からの脱却

 今回の改組のきかっけとも考えられるのが、2023年末のOpenAIのSam Altman氏解任騒動だ。

 11月17日金曜日の夜、Altman氏は取締役会から突然CEOを解任された。OpenAIは「取締役会とのコミュニケーションで、一貫して率直さを欠いていた」などと説明している。

 このときMicrosoftは週明けの20日、ただちにAltman氏を迎え入れる用意があると表明。さらにこれを受けて、OpenAIの従業員の9割以上が、解任が撤回されないならAltman氏とともにMicrosoftに移ると言い出した。MicrosoftはAI業界トップの経営者と人材を一気に手にするかに見えた。

 ところが、Altman氏の解任は発表から5日で撤回され、Microsoftにとって夢のような話は流れてしまった。“当て馬”にされたとまで言われる始末だ。

 「Microsoftの株価が乱高下したこの話は、同社がいかにスタートアップに依存しているかを浮き彫りにした」とWall Street Journalは指摘する。また、非営利組織としての側面も持つOpenAIをMicrosoftがコントロールするのは困難とする見方も出ている。

 こうしたことから、Microsoftは態勢を再構築しているようだ。2月にはフランスのAIベンチャー、Mistral AIとの複数年にわたる提携を発表。額は非公表で同社に投資していることも明らかにした。

 Mistralはこの時点で設立10カ月ながら欧州で最も注目のAIスタートアップだ。同日、GPT-4に迫る性能のLLM「Mistral Large」を発表している。MicrosoftがOpenAI一辺倒ではないことを印象付ける動きだった。

 そして、昨年には果たせなかったAI業界トップの経営者と人材の取り込みが、Suleyman氏とそのチームの受け入れと言えるだろう。

 一方でOpenAIの位置づけについて、Nadella氏は今回の従業員向けメッセージでこう述べている。

 「われわれのAIイノベーションは、最も戦略的で重要なOpenAIとのパートナーの上に構築が続いており、OpenAIの基盤モデルの上に革新的な製品を構築してゆく。そして本日の発表は、われわれのパートナーシップの構成と原則をさらに強化するものである」