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データセンター急増で米国の配電網危機 原子力も本格利用へ

 AWS(Amazon Web Services)が電力を100%原子力発電所から供給するデータセンター・キャンパスを購入した。ハイパースケーラー各社は、爆発的に増加する需要を受けてデータセンターの建設を急ピッチで進めている。だが米国の電力は極度の不足に向かっており、独自電源を探る動きが強まっている。

(行宮翔太=Infostand)

原発隣接のデータセンターを取得

 AWSが購入したのは、ペンシルベニア州にある米国最大級の原発「サスケハナ蒸気電気発電所(SSES)、出力2495メガワット」に隣接するデータセンター・キャンパス「Cumulus」だ。同発電所を所有するTalen Energyが開発した施設で、使用する電力は100%SSESから供給する。AWSで初の原子力で稼働するデータセンターとなる。

 敷地面積は約2万8000平方メートルで、土地、電力インフラ、電源シェルなどが含まれ、価格は6億5000万ドル。AWSは10年間、電力を購入する契約を結んだ。Talenによると、センターの現在の容量は48メガワットだが、AWSはさらに拡張する計画で960メガワットにすることを目指している。

 もっとも、これはAmazonが発表したのではなかった。3月上旬、Talen Energyが投資家向けに行ったプレゼンテーションで明らかになり、これを受けてメディアが取材して報じたという順番だ。

 Financial Timesによると、AWSはこの話をする際に慎重だったという。取材に対して同社は原子力という言葉を使うことを避けながら、「天候に左右される風力発電や太陽光発電を補うため、新たな技術革新やテクノロジーを模索し、炭素を含まないクリーンなエネルギー源に投資している」(Amazon広報担当者)とコメントした。

 データセンター電源への原子力の利用では昨年、Microsoftが核融合発電のスタートアップHelionと電力購入契約を結んでいるが、他社では具体的な動きがなかった。原発に反対する声に配慮していたようだ。

 コンサルタント会社Radiant Energy Groupのマネージング・ディレクター、Mark Nelson氏は、「米国は原発の多くを失ったが、それにはAmazonやいくつかの企業が原子力をクリーンエネルギーとして認めなかったことも一因だ」とFinancial Timesに解説している。

 原子力推進派でもある同氏は、Amazonのスタンスの変化を歓迎しているという。