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切り札は原子力発電? 爆増する電力需要とデータセンター

脱炭素戦略のため原発に期待

 データセンターがエネルギー源を原発に求める背景には、AIの急拡大や暗号資産マイニングで電力需要が爆発的に増加しているという事情がある。

 McKinseyが今年1月にまとめたデータセンター投資予測のレポートによると、データセンターの電力需要は、米国市場だけでも2022年の17ギガワットから2030年には35ギガワットへ倍増すると予想されている。米国は世界市場の約40%を占める。特に「ハイパースケーラーのデータセンターは大規模で、「8万世帯分の電力を使用する可能性がある」という。

 Microsoftなどハイパースケーラーの多くは2030年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするという目標を掲げ、再生可能エネルギーのサプライヤーからの電力購入などで必要量を賄おうとしている。

 しかし、莫大(ばくだい)な電力を24時間365日必要とするデータセンターでは、こうした契約はコストがかさみ、また電力需給自体の逼迫(ひっぱく)で再生可能エネルギーの調達も難しくなりつつある。

 Business Insiderによると、総電力の4分の1をデータセンターが消費しているというバージニア州で、電力会社のDominion Energyが今年初め、自社の容量を2倍に増やす計画を発表した。そのために2つの石炭火力発電所の廃止を遅らせ、合計9ギガワットのメタン火力発電所を新設することを検討しているという。「再生可能エネルギー100%」はむしろ遠のいているようだ。

 こうしてクラウド業界は、原子力発電に熱い視線を注いでいるが、SMRや核融合発電のような新技術には不確定な部分も多い。コスト面で本当に有利なのか、廃棄物、安全性にも問題はないか、という疑問の声も根強い。

 データセンターの電力問題では模索が続きそうだ。