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切り札は原子力発電? 爆増する電力需要とデータセンター

原発から電力供給する計画が続々

 データセンターの電源を原発に求める動きは、特に今年になって顕著になっている。

 1月、東部ペンシルベニア州のサスケハナ蒸気発電所(原発、出力2495メガワット)近くに新しいデータセンターキャンパスが開業した。原発を運営するTalen Energyと子会社のCumulusDataが開発している施設の第1期分で、約2万8000平方メートルの敷地に48メガワットの電力供給を受ける。原発に直結する米国初のデータセンターキャンパスで、1200エーカー(約4.85平方キロメートル)、容量475メガワットまで拡大する計画だ。

 また8月には、多くのデータセンターが立地するバージニア州で、電源開発のIP3やGreen Energy Partners(GEP)がサリー原子力発電所(800メガワット2基)の電力を利用するデータセンターキャンパスの計画を発表した。641エーカー(約2.6平方キロメートル)の敷地で、2024年に着工。将来的にはカーボンフリーの水素エネルギー生産施設の建設なども視野に入れているという。

 そして、ついにデータセンターのための原発が登場した。コロケーションおよびデータセンター建設のStandard Powerは10月6日、オハイオ州とペンシルベニア州の2カ所にデータセンター向けの原子力発電施設を建設すると発表した。

 今年1月にNRC(米国原子力規制委員会)から初めてのSMRの商業利用の認可を得たSMRメーカーNuScale Powerなどと協力する。SMRはモジュール構造で、工場で製造してプレハブのように運搬・設置できる小型の原子炉。出力300メガワットまでのものを言う。英米加日など各国で開発中の新タイプの原発技術だ。

 Standard Powerは2つの施設から計1848メガワットの電力を供給する。NuScaleの各モジュールは高さ65フィート(約20m)、直径9フィート(約2.7m)の円筒形で、出力は各77メガワット。計24基を設置し、2029年までに稼働させる予定だ。

 Standard PowerのMaxim Serezhin CEOは「われわれは、レガシー・ベースロード・グリッド容量の多くがオフラインになると考えている。それはAIコンピューティングやデータセンターの電力需要の増加の中、新しい持続可能なベースロード発電の選択肢が市場にないためだ」とコメントしている。