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賛否分かれる HashiCorpの“脱”オープンソースライセンス

企業価値とオープンソースは相反する?

 HashiCorpのDadgar氏が記しているように、オープンソースベンダーのライセンス変更の動きは数年前から起こっている。

 2018年8月、NoSQLサーバーの「Redis」を開発するRedis Labsは、AGPLからCommons Clause条項付きApache License 2.0に変更。その2カ月後にドキュメント志向データベース「MongoDB」のMongoDBもライセンス変更を発表、AGPLからSSPLにした。

 メッセージキュー「Apache Kafka」のConfluentも、「KSQL」などの製品のライセンスをApache License 2.0から独自のConfluent Community Licenseに変更した。ElasticsearchはApache LicenseからSSPLへ。HashiCorpが採用するBSLに乗り換えたのは分散SQLデータベース「CockroachDB」だ。それ以前はApache Licenseを採用していた。

 これらのベンダーの多くが理由に挙げるのは、“フリーライド(ただ乗り)”だ。Redis Labsは「クラウド事業者は、(もしあったとしても)ほとんどこれらのオープンソースプロジェクトに貢献していない」、MongoDBは大手クラウド事業者を示唆しながら「ほとんど貢献せずに多くの価値を得ている」と書いていた。

 こうしたただ乗り批判は、最近のRed HatとRHELクローンベンダーの対立でもみられたものだ。

 英国のオープンテクノロジー団体OpenUKのAmand Brock氏は、The Registerに、「競合他社のイノベーションを可能にするというのはオープンソースの必然であり、このプレッシャーは株主に価値を生むというニーズには一致しない」と語っている。

 一方で、AWSでオープンソース戦略を担当したあと、現在MongoDBでバイスプレジデントをつとめるMatt Asay氏はInfoWorldへの寄稿で、今回のライセンス変更が「現実政治であり、すべての関係者への助けるになる」と評価している。

 Asay氏はクラウドベンダーとソフトウェア開発者の力関係はライセンスによって大きく変わる、とする。その上で、HashiCorpは「ソースコードの広範な使用許可」と「競合製品への利用禁止」を両立させたと読み取る。

 新ライセンスはオープンソースでないかもしれないが、「その“商用利用”規定に抵触する企業・開発者は片手で数えられる程度であり、それらもライセンスに従うことでHashiCorpにとってのより良いパートナーとなるだろう」とAsay氏は述べている。

 オープンソースの始まりは1983年にRichard M. Stallman氏が開始したGNUから。この40年を振り返ったMIT Technology Reviewの記事では96%のコードベースがオープンソースソフトウェアを取り入れていると指摘、「反抗的なルーツから、長い年月を経てここまできた」と記している。