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賛否分かれる HashiCorpの“脱”オープンソースライセンス

 インフラ・アズ・コード(IaC)の「Terraform」で知られるHashiCorpが、長年採用してきたオープンソースライセンスを、商用サービスでの利用を制限するライセンスに変更すると発表した。数年前から、MongoDBやRedisなどオープンソースベンダーのライセンス変更が散発的に行われており、その流れに沿うものとなる。

「商用オープンソースモデルは進化する必要がある」

 HashiCorpは代表製品のTerraformに加え、暗号鍵管理の「Vault」、仮想マシン環境の構築・管理ツールの「Vagrant」などのインフラの自動化・管理技術を提供している。Vagrantを除くとオープンソースと商用版を提供しており、オープンソース版のライセンスにはGPLと相互性の高いMozilla Public License v2.0(MPL)を採用してきた。

 2021年12月にIPOを果たしたHashiCorpは、直近の2023年2月~4月期で前年同期比37%増の1億3800万ドルを売り上げるなど、業績は悪くない。

 そのHashiCorpの共同創業者兼CTOのArmon Dadgar氏が8月10日付の公式ブログでライセンス変更を発表した。

 Dadgar氏は「自由にソースコードが利用できるようにすることで、開発者が自由にダウンロードし、調査し、自分たちの問題を解決するのが容易になる」という信念から、製品をオープンソースにすることを決めた。それによってクラウドプロバイダーらとの密な提携が可能になり、共同顧客やパートナーにメリットをもたらしたと、振り返った。

 だが、その一方で、「実質的な貢献をせずに、純粋なOSSモデル、OSSプロジェクトでのコミュニティの作業をうまく利用するベンダーも存在する」と述べ、「オープンソースはイノベーションを複製し、既存の流通チャネルを通じて販売することへの障壁を減じてきた」としながら、「商用オープンソースモデルは進化する必要がある」と、今回のライセンス変更の理由を説明した。

 HashiCorpが新たに採用するのは「Business Source License v1.1」(BSLまたはBUSL)だ。今後公開されるHashiCorpの製品に適用されるが、HashiCorp API、SDK、ライブラリは引き続きMPL 2.0を採用するという。

 このBSLはMariaDBが2013年に作成したライセンスで、Couchbaseなどのオープンソースプロジェクトも採用している。「コピー、改変、再配布、非商用利用、特定の条件下での商用利用を許可するソース利用可能なライセンス」とHashiCorpは説明する。

 Dadgar氏は、コミュニティ、パートナー、顧客への影響を最小限にするため「HashiCorpのBSL実装には、ソースコードの広範な使用を許可する追加の使用許諾を含む」と説明する一方で、「HashiCorpのコミュニティ製品上に構築した競合サービスを提供するベンダーは、将来のリリース、そしてわれわれの製品が貢献を受けたバグの修正、セキュリティパッチを組み込むことができなくなる」としている。