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CEOの議会証言も平行線 TikTok禁止めぐり米国沸騰

若者の50%以上が禁止に反対

 白熱した議会の外では何が起こっていたのだろう。

 Wall Street Journalによると、公聴会が始まる数時間前、中国商務省の広報官は、TikTok売却か米国での禁止を求めるBiden政権に「断固として反対する」とする声明を発表。「中国および世界の投資家の、米国への投資に対する信用を大きく傷つけるもの」と非難した。

 TikTokのサポーターも多い。TikTokが公聴会前に公表したデータでは米国での利用者は1億5000人という。中には、それで生計を立てている者も少なくない。

 議会の外では、「Keep TikTok」(TikTokを維持せよ)のプラカードを手に、TikTokの“インフルエンサー”が集まった。TIMEによると、集まった数十人のフォロワーは計6000万人を上回るという。中には、TikTokで文法のレッスンを投稿して590万人のフォロワーを持つユーザーは、収益や友人とのつながりを断たれることに反対してやってきたと述べた。

 一方ライバルの「Facebook」「Instagram」を持つMeta、「Snapchat」のSnap、「YouTube」のAlphabetなどの株価は軒並み上昇。特に株価が低迷していたMetaは30%上昇した。

 市民はどう思っているのか? 3月下旬にSocialSphereが行った調査によると、親会社ByteDanceと中国政府の関係を「懸念する」は61%だった。

 逆に「懸念しない」は31%だったが、ミレニアル世代(27~42歳)が29%なのに対しZ世代(18~26歳)は41%と受け止め方が異なる。その上で、TikTok禁止に「反対」はZ世代で過半数(53%)に達し、ミレニアル世代(34%)を大きく上回った。

 なお、Pew Researchの調査によると、米国の13~17歳のソーシャルメディア使用で、TikTokは67%、Instagram(62%)、Snapchat(59%)などを上回り、Facebook(95%)に続いて2位だ。

 委員の一人は公聴会で、「今はデータにアクセスされていることを気にしないかもしれないが、いずれ気になるだろう」「データがパワーを持つようになった時に」と述べた。TikTok禁止に反対するユーザーへのメッセージだ。

 TikTok禁止は、一部ですでに現実のものとなっている。米国では連邦政府職員に業務用端末からのTikTok削除を命じており、州レベルでも同様の措置をとるところが出ている。欧州でも、ベルギーや英国などで政府職員や議員にTikTok削除を求める動きがある。

 なお、米国全体での禁止法は実現するにしても、まだ時間がかかる。Reutersによると、下院とは別に上院で提案された法案の方が成立の可能性があるという。

 しかし、その場合も、議会での議決をへて大統領が署名するまでに数カ月。そこから商務省が実行するまで、さらに1年ほどかかる見込みという。