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動き出すLibra ただし、もうLibraではない

もはや「通貨」ではない?

 Libraは今年4月、方針を大幅に転換した。「2.0」と題した新しいホワイトペーパーに示した大きな変更は以下の4項目だ。

  1. 単一通貨の「ステーブルコイン」(実通貨の準備金に応じて発行する暗号資産)を、複数通貨を裏付けとするものに加えて提供する
  2. 堅牢なコンプライアンスフレームワークで決済システムの安全性を高める
  3. 「非許可型のオープンなブロックチェーン」のネットワークは将来にわたって断念する
  4. 準備金の設計に強力な保護を組み込む

 金融界や規制当局からの強い要請を受けた結果だが、特に、1と3は大きい。「複数通貨の裏付けを持つ(通貨バスケット式)ステーブルコイン」と「ブロックチェーンのオープン化」は、Libraの最大の特徴だったからだ。

 しかし、「バスケット式ステーブルコインは為替リスクが高くなる」(単一通貨の方がリスクは低くなる)、「オープン化は最終責任者が存在しない」といった批判が強かったことから、取り下げを余儀なくされた。

 Libraへの反響は、おそらくFacebookの予想を上回ったのだろう。昨年6月の発表以来、各国の金融監督当局や中央銀行、政治家らが一斉に懸念を表明。マネーロンダリングの恐れや、金融政策への悪影響などが挙げられた。

 一言で言えば、「既存の金融システムを脅かすような通貨」が生まれ、それをFacebookがコントロールしうることへの拒否反応だった。

 2019年10月の協会正式発足時には、立ち上げメンバー28社のうち7社が不参加を決めた。特に、PayPalや、Visa、Mastercardらの決済大手の離脱は痛手となった。

 さらに同月、G20が「Libraを規制の対象にする」「深刻なリスクに対応するまで発行を認めない」との方針を確認するなど逆風は続き、見直しは避けられない状況になった。ホワイトペーパー2.0は、これらへの回答といえる。

 象徴的なのが、協会のミッションの文言だ。Libraの発表時は「多くの人びとに力を与える、シンプルでグローバルな通貨と金融インフラになる」だったが、現在、「グローバルな通貨」は「グローバルなペイメントシステム」に変わっている。