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次の“破壊”ターゲット? Amazonのオンライン処方薬局

成功への課題は?

 Amazon Pharmacyは、Prime会員をテコに顧客を獲得する戦略を持っているように見える。

 Neuberger Bermanのアナリスト、Ari Singh氏は「他の医薬品宅配よりも顧客フレンドリーで、特典で顧客を引き込める」としながら、それでも成功するには、薬局、保険、薬剤給付管理者(医薬品の仲介業者)の三者間のバランスが求められるとWall Street Journalにコメントしている。

 また、薬を求める消費者の多くは高齢者で、Prime会員では少ない層となっている。Amazonはこうしたユーザーを取り込まねばならない。さらに、オンライン販売では、例えば郵送で盗まれるおそれがある薬の販売はできず、リアル薬局に及ばない部分もある。

 それでも、Amazon全体の戦略から見るとAmazon Pharmacyは理にかなっている。

 TechCrunchは、Amazonが生鮮食料品を扱う「Amazon Fresh」、高級食料品小売の「Whole Foods」などを持っており、今回の医薬品の取り扱い開始で、「消費者がAmazonだけでニーズを満たせる世界」に近づきつつあるとする。ヘルスケアという切り口から見ると、Amazonは8月にフィットネスバンド「Halo」を発表したところだ。

 そこで気になるのはデータの扱いだ。ヘルスケアの個人データは、クラウド企業の次のターゲットとなっている。Googleが数千万人分のヘルスケア情報をクラウドに保管していたという「Project Nightingale」が報じられたのは、ちょうど1年間のことだ。

 Amazonはプレスリリースで、Amazon Pharmacyで顧客が入力した情報は米国のヘルスケア情報基準であるHIPPAに基づいて安全に保管され、ユーザーの許可なくして広告やマーケティング利用では共有しないと述べた。Amazon Pharmacy担当バイスプレジデントを務めるTJ Parker氏はCNBCに対し、「Pharmacyの情報と体験は、Amazon.comの体験とは切り離されている」と強調している。

 もうかる業界に次々と参入して“破壊的イノベーション”で拡大してきたAmazonだが、薬局事業でも市場を席巻するのだろうか――。