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AI企業・コミュニティが参戦 新型コロナとの戦い

企業、オープンソースコミュニティも続々参戦

 AI、テクノロジー業界は新型コロナ対策で活発に動いている。Kaggleと同じくGoogle傘下のAI技術企業DeepMindは3月6日、SARS-CoV-2に関連したタンパク質構造の予測を公開した。同社は囲碁AI「AlphaGo」で知られるが、近年、AIを使ったタンパク質構造予測技術「AlphaFold」に取り組んでいる。

 AlphaFoldは「CASP」(Critical Assessment of Structure Prediction)などこれまでの研究の成果をベースにしており、精度の高いタンパク質の3Dモデルを生成するという。今回、SARS-CoV-2に関連したタンパク質の構造予測を公開。「これらの構造予測は実験的に確認されたものではないが、ウイルスがどのように機能するのかという学術界の問いに答えるため貢献できる」としている。

 感染症の震源地である中国のBaiduも、2019年に開発したアルゴリズム「Linearfold」を公開した。Unite.AIによると、Linearfoldを利用してウイルスのRNA二次構造を予測し、どのように拡散するのかを理解するのに役立つという。構造の解析を高速に行うことで、「伝令RNAワクチン開発の時間を削減できる可能性がある」とUnite.AIは記している。

 オープンソース界も動いている。病原体の進化をリアルタイムに追跡するプロジェクト「Nextstrain」は、遺伝子情報をベースとする感染症動向を世界で共有することができる。分析とビジュアル化ツールを使って公開されているデータを表示。「疫学の理解を助け、対応を改善すること」を目的としている。Bill Gates氏もTwitterで「素晴らしい」と称賛している。

 Wiredによると、シアトルのティーンエージャーがCOVID-19陽性判断を受けた際、Seattle Flu Studyが、そのウイルスの配列についてのゲノムデータを「Gisaid」(ゲノムデータの共有プラットフォーム)で共有したことが開始のきっかけという。

 これを見たNextstrainユーザー研究者が、シアトル地域に住む無関係の患者のものから派生していることを発見し、地域で数週間前からウイルス拡散が始まっていることがわかったという。

 新型コロナは世界で猛威を振るい、世界の死者は1万人を超え、経済にも大きな影を落としている。一方で、AIとインターネット、データを活用した戦いも、世界の知恵を集めて猛烈な勢いで進められている。