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第二世代アナリティクスベンダー統合始まる SalesforceのTableau買収

もはや「No Software」ではない

 SalesforceのTableau買収の狙いは分かりやすい。まず技術面ではデータ分析技術の獲得だ。

 Salesforceは自社のAI技術「Einstein」をTableauで補完できる。セールスコンサルタントのMiller Helman GroupのCEO、Byron Matthews氏は「Salesforceのソフトウェアは、営業マネージャが自分たちのチームを管理するのに必須だが、営業担当側はセールスのクローズを支援してくれない限り、特に使おうとは思わない」とNew York Timesに実情を明かす。そこでTableauの分析が意味を持つというのだ。

 一方で、BIはSalesforceが強みとする技術ではなく、TableauもCRM以外で使われることが多いなど、「この組み合わせは完璧ではない」(Sanford C. Bernsteinのアナリスト、Zane Chrane氏、Bloombergが引用)とする意見もある。Chrane氏は、Salesforceは「Wave Analytics」を持っており、Tableau買収はその失敗を意味するとも指摘している。

 Salesforceが成長を維持するという点でも技術分野の拡大は重要になる。同社は営業支援やCRMなどのフロントオフィス機能をSaaSで提供することで実績をあげてきた。だがそのフロントオフィスも飽和状態だ。2018年にMuleSoftを65億ドルで買収して次なる成長の模索が顕著になっている。MuleSoftはAPI連携技術で、その獲得にはフロントオフィスからバックエンドとつなぐ技術を得た意義がある。

 そしてTableau買収となるのだが、Tableauは技術の拡大だけではなく、提供形態でもSalesforceとは異なる。2003年創業の同社はオンプレミスで誕生し、その後クラウドを進めているベンダーだ。ZDNetに寄稿したConstellation ResearchのアナリストDoug Henschen氏は「Tableauの顧客の3分の1がクラウド」とし、Tableauがクラウドをプッシュするか、Salesforceがハイブリッド戦略を進めるかのどちらかが必要になる、と分析する。その際、MuleSoftは重要な役割を果たせそうだ。

 CNBCは「No Software」をスローガンに、マスコット「SaaSy」まで作ってクラウドを売り込んだSalesforceの歴史に触れながら、「Salesforceはピュアなクラウドの外に活路を見いだすしかない」と分析した。Bloombergは「Salesforceは汎用のIT企業になろうとしている。Oracleがデータベースから巨大なITコングロマリットに転身したのと同じ」とする。

 市場の反応というと、買収発表を受けてSalesforceの株価は下がり、その週は回復していない。同社の動きを歓迎しているとは言えないようだ。