Infostand海外ITトピックス
AI搭載「自律型致死兵器」が近い? テクノロジー業界の悩み
2019年3月11日 11:39
軍事転用への反対の声は出るが……
テクノロジー企業の中には、AIを兵器に利用することへの根強い抵抗がある。国防総省の「Project Maven」は、ドローンの静止画・動画からAIで目標物を識別する技術開発のプロジェクトだが、担当したGoogleの従業員から反対が沸き起こった。これを受けて同社は2018年6月に契約更新をしないと発表。今月末で終了する予定だ。
先月はMicrosoftでも、HoloLensを利用した陸軍の「IVUS」(統合ビジュアル強化システム)の契約に反対する声が上がった。「識別、判断、交戦を敵に先んじて実行する能力の強化によって“lethality”を増強する」というプログラムで、契約額は4億8000万ドルだった。これに対し従業員が契約放棄を求める幹部あての公開書簡を送り、100人超の署名を集めた。
しかし、こうした声も兵器開発を止めるほどの力はないようだ。
Wired.comは、国防総省の担当者の話として、「昨年6月のGoogleのProject Maven撤退発表のあと、1ダースを超える大手防衛企業が、業務を引き継ぎたいとペンタゴンの担当者にアプローチしてきた」と伝えている。Googleが撤退しても、代わりはいくらでもいる――。
Microsoftの方は、Brad Smith社長が公開書簡に対して見解を説明。「米国人として国防を支援することが必要」「契約からの撤退は、新しい技術を責任ある方法で使うための議論に参加しないことになる」として理解を求めた。契約は継続する。なお、これに続いて陸軍幹部が、プロジェクトは「武器ではなく訓練援助である」とも述べている。
AIは、民生にも軍用にも適用できる両面性を持った技術で、話は簡単にいかない。「兵器への利用禁止は技術開発を阻害する」という議論もある。
そしてAIの開発は、データとコンピューター(クラウドも利用できる)があれば、基本的に誰もができるものだ。核のように大規模なウラン濃縮施設を建設する必要はない。その意味で、核兵器と原子力発電の関係よりも、軍用と民生の距離ははるかに近い分野だと言える。