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OracleがNetSuiteを買収 クラウド「100億ドル」レース

 OracleがクラウドERPのNetSuiteを93億ドルで買収する。幾多の企業買収を重ねてきた同社にとっても、2番目の規模の大型買収で、これまでの買収にはないレベルの戦略的狙いが含まれている。Oracleの野望は成就するのだろうか?

NetSuiteのクラウドERP製品と顧客をまるごと手に

 Oracleは7月28日にNetSuiteの買収を発表した。買収額は、NetSuiteの株価に18%のプレミアムをつけて1株あたり109ドル、総額93億ドルとなる。取引は現金で行われ、年内に完了の見込みだ。額では2004年に敵対的買収を行ったPeopleSoftの104億ドルに次ぐ規模となる。

 NetSuiteはERPをオンデマンド形式で提供することを目的に、1998年に創業された。ERPのほか、CRM、Eコマース、リソース管理・プロジェクト管理と製品ラインを拡充しながら成長してきた。例えば、財務管理分野は年成長率40%で成長しており、Gartnerが選出した急成長中の財務管理プロバイダーで堂々のトップになっている。

 OracleのCEO、Mark Hurd氏は「OracleとNetSuiteのクラウドアプリケーションは補完関係にあり、市場で永遠に共存する」とプレスリリースで強調している。NetSuiteの創業者で会長兼CTOのEvan Goldberg氏は「18年間、クラウドでビジネスを動かすことができる単一システムを開発してきた。Oracleとの組み合わせは、NetSuiteの顧客、従業員、パートナーにとって勝利をもたらす」と述べている。

 この買収の目的は明白だ。クラウド時代に向けて、オンプレミスでソフトウェアを提供してきたOracleが、クラウドERP製品と顧客をまるごと買い取るというものだ。

 VentureBeatは「Oracleにとって中規模市場の足がかりは死活問題だった」と解説する。これまでのオンプレミスモデルからクラウドへの移行が起こっており、「Oracleの中核であるデータベースや関連ソフトウェア上に構築したエンタープライズのバックオフィスシステムという収益性の高い市場は、競合他社の侵食を受け始めている」と述べている。

 そして、この移行が最も顕著なのが中規模企業市場であり、Oracleは、NetSuiteを通じてクラウドの震源となっているSMB市場への足がかかりを得られる、と分析する。NetSuiteは3万の顧客を抱えており、これがOracleのクラウド顧客として加わるのだ。