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OracleがNetSuiteを買収 クラウド「100億ドル」レース

NetSuiteのメリットは不明瞭

 多くのメディアは、Oracleがクラウド分野で掲げる売上目標を達成するためという観点から伝えている。Oracleの創業者でCTOのLarry Ellison氏は6月、業績発表の席で「クラウド業界で最初に100億ドルを売り上げる企業になる」と宣言していた。

 Market Realistは、Oracleが会計年度2016年度(2015年6月-2016年5月)のクラウドの売上高を前年比36%増の29億ドルとしており、同部門が2017年度に65%成長するとの見通しを示していることを挙げる。Oracleがさらに急成長するためには「買収しかなかった」と解説している。NetSuiteの2017年の予想売上高は12億ドルで、合わせて60億ドル規模になる。

 NetworksAsiaは、Ellison氏が100億ドルという目標を打ち出して以来、企業買収に出るとの見方が浮上していたことを挙げる。100億ドル到達に必要な年成長率は113%であり、社内で成長させるよりもNetSuite買収の方が近道ということだ。一方で、両社の売り上げを合わせても、なお100億ドルに到達しないことにも触れ、「NetSuite顧客へのOracle製品のクロスセルがカギを握る」としている。

 買収には防御的な含みもあったようだ。VentureBeatは「OracleがNetSuiteを買収しなければ、他社が買収しただろう」とし、Salesforce.com、SAPなど、Oracleのライバルに取られる前に獲得を図ったのだとみている。

 一方で、NetSuiteのメリットは明確ではない。NetSuiteは赤字で、2016年第1四半期の業績は、売上高が前年同期比31%増の2億1660万ドルなのに対し、2970万ドルの損失を計上している。プレスリリースでは「Oracleのグローバルスケールを後ろ盾に、NetSuiteのクラウド製品をさまざまな国のさまざまな産業に提供できる」とメリットを強調している。だが、それだけだろうか?

 VentureBeatは「NetSuite顧客には先行きが不透明」とする。OracleはNetSuiteを独立企業として運営するとしているが、PeopleSoftを買収した際は、大量の解雇とともに製品統合も行われた。今回もNetSuiteがOracleに統合され、製品価格が上昇するのではないか、と懸念する。

 Networks Asiaは対照的に、NetSuiteのCRMポートフォリオの弱みだった統一性のないユーザー体験と、予測分析の欠如を解決できるだろうとしている。