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「拡張現実」が一気に普及? 世界に「Pokemon Go」インパクト

成功のカギはARか、それともポケモンありきか

 Pokemon Goの人気は、次のトレンドを模索するテクノロジー業界にとっても良い知らせだ。スマートフォン(モバイル)、位置情報、ソーシャル、とトレンドの基本を押さえつつ、現実世界を拡張するAR技術を利用しているからだ。ARは数年前から次世代の技術といわれながら、普及にはなお遠い状態が続いていた。

 Marketing Weekは、ARは自動車、小売などで一部利用が始まっていたが、「Pokemon Goがやっと日常のものにした」と述べている。そして「ARは、VR(仮想現実)ヘッドセットやGoogle Glassが成功しなければ、成功しないだろうと思われていた。だが、任天堂とNianticは、これを覆し、カメラ付きスマートフォンを所有する50億人という市場を最大活用した」と賞賛している。

 Mobile World Liveは「スマートフォンにiPhoneが、ソーシャルメディアにFacebookが与えたのと同じぐらい大きなインパクトになるだろう」と評価する。

 DellのエンタープライズマーケティングJeremy Klutts氏は、VRと比較して分析。FacebookのOculus買収、Googleの「Cardboard」、Samsungの「Gear VR」など主要ベンダーがVRに投資して、次世代のコンテンツ消費技術として定着させようとしている中で、「Pokemon GoがVRを殺してしまった」とブログの中で述べている。

 同氏は、Pokemon Goが高価なヘッドセットを必要しない点に触れながら、「Pokemon Goの潜在市場は20億台だが、VRヘッドセットの売り上げは、2020年にやっとその10%に達すると予想されている程度だ」と述べ、VRビジネスへの悪影響を懸念する。規模の経済だけではない。VRはヘッドセットを装着した途端に(切り離された感覚になり)ソーシャルではなくなるのに対し、ARはソーシャル体験を容易に実現できると指摘する。

 Android Headlinesは逆に、「Pokemon GoはARの船出を台無しにする」とするオピニオン記事を公開した。人気の理由は「ARだからではなく、ポケモンという人気アニメだったから」と見ており、本当にARゲームが離陸するときのじゃまになるのでは、と憂いている。

 また、Pokemon GoはARのアプローチをとってはいるが、デプス(測距)センサーなどARを構成する高度な技術を持たないことから、「そもそもARと呼んで良いかどうかも、議論の余地がある」と厳しい。AR機能を利用できるスマートフォンは現在市場に多くない。Lenovoが先に発表した「Tango」こと「Lenovo PHAB2 Pro」が初の本格的なスマートフォンになると背景を説明する。Pokemon Goでは既存のカメラやGPSだけでAR的な体験を楽しめるため、消費者が本格的なAR機器に関心を示さなくなるとの懸念を訴えた。