クラウド特捜部

日本データセンター開設でWindows Azureはどう変わる?

 2月26日からMicrosoftのパブリッククラウドサービス「Windows Azure」の日本国内のデータセンター(実際は複数のデータセンターから構成される)が稼働した。

 今回は、Windows Azure(以下、Azure)の日本データセンターのサービスやコスト、日本データセンターが持つ意味などを解説していく。

リージョンによって提供されるサービスが異なるWindows Azure

 Azureの日本国内データセンターは、東日本(埼玉)と西日本(大阪)の2カ所が開設された。これにより、日本国内でのディザスタリカバリ(DR)が可能となった。さらに、既存のデータセンターと組み合わせれば、ワールドワイドでのDRも可能になる。

 国内データセンターを開設すること自体は、前CEOのスティーブ・バルマー氏が日本へ来日した2013年5月に発表されたが、それから約1年かけてのオープンとなった。ただし2月26日にサービスインしたとはいっても、数カ月前から36社が早期導入テストを行っていたことからもわかるように、実際には2013年の秋から冬には、データセンターの運用は始まっていたと思われる。

昨年の5月、前CEOのスティーブ・バルマー氏が、Azureの日本データセンターの設置を発表した。Azureはリージョンごとに2つのデータセンター(群)を作ることで、冗長性を高めている
今後、日本国内におけるパブリッククラウドの市場は大幅に拡大していく

 もともと、Azureは高い可用性を持っている。Computeサービス(仮想マシン、Webロール、Workerロールなど)は、同じデータセンター内に複数(3つ以上)の複製が用意されている。

 もちろん、複製は同じノードではなく、可用性を高めるために別のノードに作成されるし、ストレージに関しても複数の複製が分散して用意される。こういった仕組みにより、ノード単位でトラブルが起こったとしても、システム全体で運用が停止するといったことがほとんどなくなる。

Azureは、データセンター内部でデータを3重複製して高い冗長性を持たせている
Microsoftによれば、Azureは高い信頼性とセキュリティ性を持っている。実際、Azureは各種のデータセンター向けの認証を受けている
Microsoftのデータセンターは、同社のGlobal Foundation Services(GFS)という部門がワールドワイドで管理している。GFSはコストを下げ、環境負荷の低いサーバーを構築している。日本データセンターで利用されているわけではないが、サーバーとストレージを合わせた専用システムもデザインしている
GFSでは、最新のXeon E5-2400 v2を使用したサーバーを採用している。ブレード筐体にHDDが搭載されている

 ただ、一口にAzureといっても、北米と日本のデータセンターで提供されているサービスは異なる。どちらかといえば北米はフルセットのサービスで、日本はサブセットになっている。また、東日本と西日本で提供されているサービスも異なる。

 例えば、Mobileサービスやビッグデータの解析を行うHDInsight、BizTalk Serviceなどは、日本のデータセンターでは現時点で提供されていない。Media Serviceは西日本データセンターだけで提供されている一方、ネットワークのVirtual Networkは東日本データセンターだけで提供されている。

 このように日本のデータセンターでは、Azureのすべてのサービスが提供されているわけではない。日本国内で提供されていないサービスを利用するには、距離的に近い香港もしくはシンガポールといったアジア太平洋地域のデータセンターか、あるいは北米のデータセンターを使う必要がある。

 現時点では、最低限必要なAzureのサービスを提供するデータセンターが日本に設置されたと考えるべきだろう。将来的に日本国内でAzureを利用するユーザーが増えていけば、国内のデータセンターの規模も大きくなり、各種サービスも日本国内のデータセンターで提供されていくようになるだろう。

ワールドワイドで提供されているAzure上のサービス。日本データセンターは、フルサービスではない
日本データセンターの設置により、レイテンシが3倍以上改善する。今まで海外のデータセンターでは十数ミリ秒だったが、日本国内のデータセンターでは数ミリ秒と、レイテンシのけたが1つ少なくなっている
Azureの利用はワールドワイドで拡大しており、トラフィックも急速に拡大している。Microsoftはクラウド事業者としてトップ3に入るだろう

(山本 雅史)