クラウド特捜部
日本データセンター開設でWindows Azureはどう変わる?
(2014/3/14 06:00)
日本国内にデータセンターができる意味
Azureに関して、日本国内にデータセンターができることは、ビジネス上大きな意味を持つだろう。国内にデータセンターができることで、海外にあるデータセンターよりもネットワーク的な距離が短くなり、レイテンシが小さくなる。ネットワーク遅延を嫌うソーシャルゲームでも、日本のデータセンターができたことで積極的に採用されていくだろう。
それよりもビジネス的にインパクトがあるのは、企業のデータが日本国内のデータセンターから外に出て行かないということだ。
業務データを国内に保持するというルールを持っている企業が多くある。また、厳密にルールとして決まっていない企業でも、海外のデータセンターに企業の重要なデータが保存されていることに懸念を持ったり、何かトラブルが起こるのではというイメージを持ったりしているところも多い。
このため、海外にしかデータセンターがないパブリッククラウドは、日本企業では採用されにくかった。実際、AWS(Amazon Web Services)やSalesforceなどでは、日本国内にデータセンターを作る前と後では、ビジネス的な引き合いが大きく異なっていたと話している。
こういったことを考えれば、Azureもやっと日本国内で本格的に普及していくタイミングに入ったといえるだろう。
米国では、政府機関や金融機関といった特定業種・セクタ向けに、より可用性とセキュリティ性が高い、特別なAzureを提供しようとしている。すでにOffice 365は、米国政府向けに、Office365 for Governmentとして、通常のSaaSとは異なるエリアにデータを分離して保存する専用サービスが用意されている。
将来的には日本国内でも、政府や自治体のクラウドで本格的にAzureを利用したい、という機運が高まってくれば、政府・自治体向けの専用Azureというパッケージが登場するかもしれない。
ただ、Azureの日本データセンター設置において若干残念だったのが、MicrosoftがSaaSとして提供しているOffice 365、Windows Intune、Dynamics CRM Onlineなどが、日本のデータセンターで運用されるようにならなかったことだ。
特にメールサービスを含むOffice 365は、日本国内のデータセンターでの運用が期待される。今や、企業活動において重要なコミュニケーション手段となっているメールサービスを利用する際に、データが日本国内にとどまることが重要と考える日本企業も多い。こういったニーズに応えられれば、Office 365の採用ハードルも低くなるだろう。
一方エンターテインメント分野においては、クラウド連携機能が用意されているXbox Oneでの利用、ということも考えられる。ネットワークトラフィックやデータセンターの容量などを考えると、すぐにエンターテインメント分野でAzureの国内データセンターが利用されるとは思わないが、エンタープライズでの採用が落ち着き、データセンターの運用・拡張が順調にいけば、レイテンシの低い国内データセンターが、Xbox Oneのインフラとしても利用されてくるだろう。