Windows Server 2012研究所
サービスパックではなく、まったく新しいWindows? Windows 8.1を見る 【後編】IE11とクラウド連携編 (モバイル端末向けの改善、省電力性を強化)
(2013/7/26 00:00)
モバイル端末向けの改善、省電力性を強化
特にモバイル端末向けの機能としては、今までタッチベースでは使いにくかったブラウザの操作をタッチベースのHTML5 ドラッグ&ドロップ機能をサポートすることで使いやすくしている。
さらに、ホバー機能(マウスカーソルを合わせる機能)をタッチ操作に対応させた。これにより、今まで操作しにくかったドロップダウンメニューの表示や選択がタッチ操作でもやりやすくなった。
しかしIE11の最大の特徴は、新機能よりもブラウザを動作させた時の省電力性だろう。タブレットやノートPCなどバッテリで動作するデバイスが増えることで、Windows OSにおいても省電力性が大きな問題となっている。IE11では、GPUを積極的に利用してCPUの負荷を減らし、高い性能を保ちつつも電力消費が少なくて済むようになっている。
さらには、IE11のプログラムだけで省電力性と応答性の向上を図るのではなく、IE11に強力な開発者向けツール(F12ツール)を搭載することで、Webサイトの挙動1つ1つのCPU負荷などをチェック可能になった。
F12ツールは、Visual Studio 2013で提供されている分析機能を利用しているようで、Webサイトのローディングにかかる時間とCPU負荷、レンダリングやイメージデコーディングにかかる時間とCPU負荷などをグラフ化して表示してくれる。
こういった分析ツールがWebブラウザに標準装備されるのは初めてだろう。もちろん、ブラウザやJavaScriptが使用するメモリ使用率なども分析することができる。
このほか、240ピクセルのモバイル画面から4Kディスプレイまでのあらゆるサイトの外観をプレビューできるほか、世界中の任意の場所におけるモバイルWebページの応答性をテストすることも可能だ。
こういった機能は、JavaScriptやHTML5ベースでModernアプリを開発する上で必要になる機能だろう。またIE11は、PCだけでなく、Windows Phone、Xbox Oneなどにも搭載されるため、さまざまな解像度のテスト、さまざまな地域でのテストがエミュレーションできるようになっているのだろう。
JavaScript自体のパフォーマンスに関しては、ChromeやFirefoxに比べると高い性能を示しているとMicrosoftは語っている。このあたりは、使用するJavaScriptのベンチマークソフトによって結果が異なるため一概にいうことはできない。IE11はほかのブラウザに劣ることはないといえる。
ただ、JavaScriptのエンジンは、IE10で採用されたChakraが使用されている。IE11になりチューンアップされてはいるが、大幅なパフォーマンスアップは現状では無理だろう。このあたりは、次世代のIE12などでは、JavaScriptをベースにしたTypeScriptなどが本格的に採用されるのかもしれない。TypeScriptは、ECMA(情報通信システムの標準化団体)で作成されている次世代JavaScriptの仕様をベースにしている。
個人的にも現状のJavaScript言語自体は、さまざまな面で行き詰まりを見せているような気がする。まったく新たなスクリプト言語を作るというのは無理があるが、ECMAなどで次世代のJavaScriptが決まれば、こういったスクリプト言語が一般のWebサイトでも利用されるようになるだろう。この時には、Web上のスクリプト言語でもネイティブに近い性能が出せ、幅広いプログラムを開発できるようになるかもしれない。
Microsoftにとっても、JavaScript言語の進化は必須だ。実際、Modernアプリが広がっていく上で、HTML5やJavaScriptは重要な位置を占めている。こういった標準規格の進化がWindows 8以降のWindowsアプリを支えていくのかもしれない。