Windows Server 2012研究所

サービスパックではなく、まったく新しいWindows? Windows 8.1を見る 【後編】IE11とクラウド連携編 (モバイル端末向けの改善、省電力性を強化)

モバイル端末向けの改善、省電力性を強化

 特にモバイル端末向けの機能としては、今までタッチベースでは使いにくかったブラウザの操作をタッチベースのHTML5 ドラッグ&ドロップ機能をサポートすることで使いやすくしている。

 さらに、ホバー機能(マウスカーソルを合わせる機能)をタッチ操作に対応させた。これにより、今まで操作しにくかったドロップダウンメニューの表示や選択がタッチ操作でもやりやすくなった。

 しかしIE11の最大の特徴は、新機能よりもブラウザを動作させた時の省電力性だろう。タブレットやノートPCなどバッテリで動作するデバイスが増えることで、Windows OSにおいても省電力性が大きな問題となっている。IE11では、GPUを積極的に利用してCPUの負荷を減らし、高い性能を保ちつつも電力消費が少なくて済むようになっている。

 さらには、IE11のプログラムだけで省電力性と応答性の向上を図るのではなく、IE11に強力な開発者向けツール(F12ツール)を搭載することで、Webサイトの挙動1つ1つのCPU負荷などをチェック可能になった。

 F12ツールは、Visual Studio 2013で提供されている分析機能を利用しているようで、Webサイトのローディングにかかる時間とCPU負荷、レンダリングやイメージデコーディングにかかる時間とCPU負荷などをグラフ化して表示してくれる。

 こういった分析ツールがWebブラウザに標準装備されるのは初めてだろう。もちろん、ブラウザやJavaScriptが使用するメモリ使用率なども分析することができる。

 このほか、240ピクセルのモバイル画面から4Kディスプレイまでのあらゆるサイトの外観をプレビューできるほか、世界中の任意の場所におけるモバイルWebページの応答性をテストすることも可能だ。

 こういった機能は、JavaScriptやHTML5ベースでModernアプリを開発する上で必要になる機能だろう。またIE11は、PCだけでなく、Windows Phone、Xbox Oneなどにも搭載されるため、さまざまな解像度のテスト、さまざまな地域でのテストがエミュレーションできるようになっているのだろう。

IE11のF12ツールでは、プロファイルをとることで、Webコンテンツの分析ができる。グラフでパフォーマンスを表示しているため、ボトルネックを探しやすい
IE11のF12ツールでは、どの部分がメモリを消費しているなどが一目でわかる
F12ツールは、デスクトップモードでしか動作しない

 JavaScript自体のパフォーマンスに関しては、ChromeやFirefoxに比べると高い性能を示しているとMicrosoftは語っている。このあたりは、使用するJavaScriptのベンチマークソフトによって結果が異なるため一概にいうことはできない。IE11はほかのブラウザに劣ることはないといえる。

 ただ、JavaScriptのエンジンは、IE10で採用されたChakraが使用されている。IE11になりチューンアップされてはいるが、大幅なパフォーマンスアップは現状では無理だろう。このあたりは、次世代のIE12などでは、JavaScriptをベースにしたTypeScriptなどが本格的に採用されるのかもしれない。TypeScriptは、ECMA(情報通信システムの標準化団体)で作成されている次世代JavaScriptの仕様をベースにしている。

 個人的にも現状のJavaScript言語自体は、さまざまな面で行き詰まりを見せているような気がする。まったく新たなスクリプト言語を作るというのは無理があるが、ECMAなどで次世代のJavaScriptが決まれば、こういったスクリプト言語が一般のWebサイトでも利用されるようになるだろう。この時には、Web上のスクリプト言語でもネイティブに近い性能が出せ、幅広いプログラムを開発できるようになるかもしれない。

 Microsoftにとっても、JavaScript言語の進化は必須だ。実際、Modernアプリが広がっていく上で、HTML5やJavaScriptは重要な位置を占めている。こういった標準規格の進化がWindows 8以降のWindowsアプリを支えていくのかもしれない。

IE10で採用されたJavaScriptエンジンのChakraがIE11でも使用されている。IE10に比べるとChakra自体もチューンアップされている
IE10でも有名になったFishBowlのデモ。今回は、2000匹を動かしてみたが、約30FPSで動作している
仮想の芝をブラウザのロゴで刈るベンチマーク(Lawn Mark 2013)。IE11は、高い性能を出している
JavaScriptのベンチマークで有名なSunSpider。結果は141.2msとほかのブラウザに比べても高い性能を示している
ModernアプリのIE11は、表示したWebサイトをタイルで表示する
URLを入力するエリアに文字を入力すれば、インスタント検索でキーワードを表示してくれる

(山本 雅史)