Windows Server 2012研究所
サービスパックではなく、まったく新しいWindows? Windows 8.1を見る 【後編】IE11とクラウド連携編 (SkyDrive連携とBing連携による改善)
(2013/7/26 00:00)
SkyDrive連携とBing連携による改善
Windows 8.1は、クラウドストレージのSkyDriveをドライブとして利用できる。今までのように単にSkyDriveにアクセスできるだけでなく、OSのドライブとしてSkyDriveがシステム上で認識されている。
OSのシステムにSkyDriveが組み込まれているため、すべてのModernアプリでファイルやフォルダを開いたり、保存したりする時に、SkyDriveへのアクセスが用意されているということだ。
例えば、音楽を再生するMusicアプリでは、ファイルを開くを指定するとSkyDriveが選択できる。もしSkyDriveに音楽ファイルが保存されていれば、SkyDriveから音楽を再生することも可能だ(ビデオ再生も同じようにSkyDriveから行える)。
またデスクトップモードにおいても、OSをインストールした状態でSkyDriveをサポートしている。Windows 8のようにオプションソフトのインストールは必要ない。
ただ大きな問題となるのは、SkyDrive以外のクラウドストレージを選択することが現状ではできないことだろう。企業においては、個人向けのストレージサービスを利用するのではなく、Office 365のSkyDrive Proや、高い管理性を持つ企業向けのストレージサービスを利用したいというニーズがあるが、現状では設定を変更できないようだ。
Windows 8.1では、すべての検索がBingに集約されている。ローカルドライブのファイル検索、アプリ検索なども、Windows 8.1に用意されているBingエンジンが採用されている。
検索のすべてをクラウドからローカルまでBingで行うことで、一貫した検索情報の表示が可能になっている。検索対象の場所を「すべての場所」、「設定」、「ファイル」、「Webイメージ」、「Webビデオ」などが選択できるようになっている。
またBing検索の特徴といえるのは、単なるキーワード検索を行うだけでなく、ユーザーが必要とする情報を検索するようになっている点である(行動のためのエンジン doengineを利用)。
つまり、検索結果のリスティングをGoogleのようにページリンクから行うのではなく、ユーザーの疑問に答えを出すような知識を提供しているのだ。さらにBingでは、ソーシャル検索の機能を強化して、質問に対しての答えをできるだけ提供するようになった。
例えば、マリリン・モンローをWindows 8.1で検索すれば、マリリン・モンローの生年月日や没年、代表作などがWeb上のイメージ写真と共に表示される。これにプラスして、Wikipediaなど、さまざまWebサイトが縦スクロールで表示されている。
Build 2013のデモでは、地名を入力するとWebサイトの情報だけでなく、地図を表示したり、付近の観光案内を表示したりしていた。日本において、欧米で提供されるだけの情報提供が実現するかどうかは、日本語や日本に関する情報がどれだけBingに納められるかにかかっている。
Bingマップを見ても、まだまだ充実しているとは言いがたい。このあたりは、Windows 8.1がリリースされてすぐに変わるわけではないだろう。もう少し、時間がかかるように思う。
ユーザーの目から見れば、Windows 8.1のOSにBingが統合されただけと感じるが、開発者にとっては大きな変化が起こっている。Windows 8.1のAPI群としてBingプラットフォームが提供されることになったからだ。
Bingプラットフォームでは、検索だけでなく、音声認識、音声合成、イメージ認識、翻訳、マップなど、クラウドのBingサービスが提供しているさまざまな機能をWindows 8.1から簡単に利用できるようになっている。
例えば、JavaScriptでプログラミングされたModernアプリにおいて、翻訳機能をつける場合、プログラミングが膨大になり、現実的には無理があった。しかしWindows 8.1においては、Bingプラットフォームが提供されているため、簡単なAPIをコールするだけで、Bingの翻訳機能を利用することが可能になった。これにより、アプリの機能を大幅に広げていけるようになるだろう。
Windows 8.1は、見た目や操作などはWindows 8を踏襲している部分が多いため、ユーザーの使い勝手を多少変更したような、小幅な変更に見える。
しかしOSの内部的には、Modernアプリができるだけ簡単に開発できるよう、大幅にAPIが追加されている。また、JavaScriptやHTML5でのModernアプリ開発が容易になるように、WinJS(Modernアプリ開発のためのJavaScriptライブラリ)を充実させるなどの改良が行われている。
今後、企業においても、開発サイクルの短いプログラムは、JavaScriptやHTML5を利用したModernアプリで開発し、本格的なプログラムは、C/C++、C#などのプログラム言語を利用することになるだろう。このような環境が実現することで、Windows 8が求めたModernアプリ中心の環境へとシフトしていくのかもしれない。