Windows Server 2012研究所

サービスパックではなく、まったく新しいWindows? Windows 8.1を見る 
【後編】IE11とクラウド連携編

 前回は、Windows 8.1のユーザーインターフェイス(UI)に関して紹介した。今回は、Windows 8.1で新しくなったInternet Explore 11(以下、IE11)、SkyDrive連携、Bingとの連携など、アプリに関連した部分に関して紹介していく。

IE11での主な改善点は?

 Windows 8.1では、WebブラウザのIE11が新たに搭載された。

 IE11は、3Dグラフィックスを表示するWebGL、ストリーミングビデオの標準テクノロジーであるMPEG-Dashへの対応など、新しい機能がサポートされている。ただ、IE9からIE10になった時ほど、新機能追加やWeb標準への準拠が行われた、というわけではない。さすがに、1年でIE自身の機能が大幅に変更されるところまではいかなかった。

 新機能のうちWebGLは、OpenGL 2.0をベースにしており、OpenGLのコマンドをブラウザ上で表示する機能だ。ただしセキュリティ上の問題点から、OpenGL 3.0を利用することが強く推奨されている。

 Microsoftはこの機能について、当初、セキュリティに問題があることから、サポートしないと明言していた。しかし、IE11でサポートした理由について「当初のWebGLはセキュリティに問題があったが、われわれが問題視した結果、規格自体がアップデートされたことで、セキュリティ面での問題点もなくなった。このようになったことで、IE11でWebGLをサポートすることに決定した」と語っている。

 社内的には、さまざまなことがあったようだが、Google Chrome、Mozilla Firefox、Operaなどでサポートされている機能がIEでは利用できない、ということでは、IEの欠点と受け取られかねない。そこで、セキュリティ上の問題点が解決したこともあり、急ぎサポートしたということが本音だろう。

 ただ、WebGLを本格的に採用したWebサイトは実験的なサイトばかりで、現状では、数も非常に少ない。IEでのサポートをきっかけにして、Webサイトでのサポートが増えてくることを期待したい。

 本格的にWebGLの利用が広まれば、今までFlashを使って表現されていた3DモデリングなどのグラフィックなどもWebGLに変わっていくかもしれない。

IE TestDriveにおけるWebGLのサンプル。Windowsのロゴをタッチすると、波打つように動く
WebGLを使えば、写真を3Dビューで見ることも可能(IE TestDriveより)。
IE11のWebGLは、DirectXを利用しているため、GPUのパフォーマンスを利用して高速な3Dグラフィック表示が行える
IE11の内部的には、WebGLをDirectXに変換している

 MPEG-Dash(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)は、HTTPを利用したストリーミング配信の標準規格だ。PCだけでなく、スマートフォンやタブレットなど、さまざまな通信環境とデバイスをサポートしたマルチデバイス、マルチメディアに対応している。

 MPEG-Dashを利用することで、HTTPストリーミングにおいて、帯域がダイナミックに変化する携帯電話ネットワークへ対応するほか、さまざまな解像度を持つスマートフォンやタブレットなどへの対応を果たす。

 大きな特徴は、今までのように、RTSP、RTMPといったストリーミング専用のプロトコルを使用しなくても、HTTPをそのまま使える点。そのため、通常のWebサイトが利用しているCDN(Contents Delivery Network)上にビデオコンテンツを配置して、さまざまなデバイスに対応することが可能になっている。

 IE11でサポートされたMPEG-Dashでは、W3Cが決めたコンテンツ暗号化機能がサポートされている。これにより、有料コンテンツをIE11上で配信することが可能になった。

IE11では、MPEG-Dashをサポートすることで、HTTPで複数の解像度のデバイスへのストリーミングをサポートする
IE11では、コンテンツの暗号化もサポートしている
HDクオリティの映像もMPEG-Dashで再生できる
暗号がかかっているコンテンツは、画面キャプチャしても、ビデオ再生エリアがブラックアウトしている。ブラウザベースでも有料コンテンツを守ることが可能になった

 これ以外に、W3C Canvas 2D Context Level 2をサポートすることでイメージスムージング、破線などの機能がサポートされた。

 IE11では、さまざまな解像度のデバイスで利用することを前提として、画面の拡大率が100%~300%に拡張された。アプリモードとデスクトップモードで異なった拡大率をサポートしていたがIE11では、両モードともに同一の拡大率となった。

 これらの機能は、IE11でサポートされているため、JavaScriptを利用してModernアプリから利用することができる。将来的には、独自のUIを持ち、基盤技術としてIE11でサポートされた機能を使うビデオ配信サービスなども出てくるだろう。実際、Build 2013のデモでは、米国で普及しているビデオ配信サービスのNetFlixなどがModernアプリの開発を進めているようだ。

 また、HTML5で使用する画面表示にDirectXを積極的に利用し、GPUのパフォーマンスを最大限に生かすように改善された。CPUで処理するよりも、大幅にパフォーマンスがアップしている。

(山本 雅史)