2026年6月12日 06:00
25年後、ITは「社会のOS」として完成する
STNetは、四国電力グループの情報通信会社として、四国で通信サービスやデータセンターサービスを展開しており、2013年には新高松データセンター「Powerico(パワリコ)」サービスを開始している。
電力会社を親会社とし、四国でデータセンター事業を展開するSTNetにとって、現在の課題や、急増するAIの需要への対応などをどのように考えているのか。STNet 常務取締役 プラットフォーム本部長の稲井正典氏に話を伺った。
――今回は25年先という未来を見据えたお話を伺いたいと思います。まず、25年後のIT環境や社会はどうなっているとお考えでしょうか。
稲井氏:私たちは将来から逆算して今を考える「バックキャスト」の思考を大切にしています。25年後の日本において、最も確実な事実は「人口が約2000万人減る」ということでしょう。特に労働人口の減少スピードは、これまでの25年の倍近いペースで進むと言われています。
そのような社会では、サイバー空間とフィジカル空間が融合した「Society 5.0」が完成していなければなりません。ITはもはや単なるツールではなく、電気や水道と同じ「社会の基盤」であり、「社会のOS」になっているはずです。
――その「社会のOS」を支えるインフラとして、データセンターのあり方はどう変わるのでしょうか。
稲井氏:重要なのは「電力とデータセンターの最適化」です。現在、データセンターは東京・大阪に約9割が集中していますが、都市部の電力インフラには限界があります。近い将来、超高速・低遅延なAPNの進展によって距離の壁がなくなり、電源立地地域近傍にデータセンターが分散配置される「地域分散型」の構造が必然的にやってくると考えています。
AIが変えるデータセンター設備――「空冷」から「水冷」への転換
――現在の状況に目を向けると、生成AIの登場でデータセンターに求められるスペックが劇的に変わっていますね。
稲井氏:その通りですね。当社のデータセンター「Powerico」は、親会社が四国電力である強みを活かし、「電気が豊富(Power+Rico)」であることをコンセプトに2013年に開業しました。当時は、1ラックあたり最大21kVAというスペックはオーバースペックだと言われました。しかし今や、GPUサーバーを置きたいというお客様からは、もっと高いスペックの問い合わせが相次いでいます。
――具体的にどのような設備対応を進めているのでしょうか。
稲井氏:現在は空冷で1ラック15〜20kVAの供給を行っていますが、次世代のGPUやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)を考えると、特に冷却面において、空冷での運用には限界があります。そこで当社は、2027年1月の完成を目指し、水冷設備の導入を決定しました。これからのデータセンター事業者にとって、水冷対応は避けて通れない道だと判断しています。
また、データセンターの建設には通常5〜6年の歳月を要します。将来の需要に応えるため、新たなデータセンターの建設についてもスピード感を持って検討を加速させているところです。
地域の結節点として、自らもAIを使いこなす
――データセンター事業者自身がAIを活用する側面についてはいかがですか。
稲井氏:AIの活用は必須ですね。私たちは「人がいるデータセンター」を強みとしてきましたが、そこにAIを掛け合わせることで、より高い価値を提供できると考えています。
具体的には、お客様とのコンタクト履歴をAIで解析して最適な提案に繋げたり、膨大な稼働データから故障を予見する「予測保全」への活用を進めています。また、セキュリティ分野では「守る側も攻める側もAI」という状況になっており、AIなしでは戦えないフェーズに入っています。
――最後に、地域データセンターとしての今後の展望をお聞かせください。
稲井氏:現在、自治体システムのガバメントクラウド化が進んでいますが、私は「運用主権」や「データ主権」の観点から、地域のデータセンターがその役割を担うべきだと考えています。
また、災害対策(BCP)の面でも、東京・大阪の2拠点だけで考えるのはリスクがあります。南海トラフ地震の津波や富士山噴火などの広域災害を想定すれば、香川県のような安全性の高い地域に拠点を分散させることは、日本のレジリエンスを高めることに直結すると思います。
――香川県もIT誘致やNVIDIAとの連携など、非常に積極的ですね。
稲井氏:ありがたいことに、データセンターを地域の「結節点」として地方創生のモデルにしようという動きがあります。25年後、私たちのデータセンターが四国の、そして日本の社会OSを支える不可欠なピースとなっているよう、これからも挑戦を続けていきます。
――ありがとうございました。


