クラウド&データセンター完全ガイド:イベントレポート

優れたエネルギー効率でサーバー台数と電力を削減する、AMDの最新サーバー向け第4世代AMD EPYCプロセッサー

データセンター事業者向け改正省エネ法・省エネルギー対策 特別セミナー 第2弾 省エネソリューションセッション

 クラウド&データセンター完全ガイドでは、「データセンター事業者向け改正省エネ法・省エネルギー対策 特別セミナー 第2弾」として、データセンター事業者に向けた改正省エネ法への対策や、省エネを実現するソリューションを紹介する特別セミナーを3月15日に開催した。省エネソリューションセッションでは、日本AMDの中村正澄氏が最新サーバー向けCPUの第4世代AMD EPYCプロセッサーを紹介した。AMD EPYCプロセッサーは、定番のサーバー向けCPUに比べても、優れたパフォーマンスやエネルギー効率を有しており、高パフォーマンスのCPUでサーバー台数と電力を削減することで、CO2排出量削減に貢献できるとして、ベンチマーク結果を使って優位性を説明し、実際に効果があった企業を紹介した。
日本AMDの中村正澄氏

サーバー向けCPUの戦略とロードマップ

 AMD製品は、PC、ゲーム機、自動車など、さまざまな分野で使われている。データセンター向けには、今回紹介するEPYCの他にGPUも提供していて、日常的に使うクラウドサービスやSNSでも、バックエンドはAMD製品で動いているものが多いという。

 AMDでは、ハイパフォーマンスコンピューティングとAIワークロードを実行するデータセンターの演算ノードをアクセラレートするため、電力効率を2020年の基準数値から2025年までに30倍に高めるという目標、「30 X 25目標」を掲げている。現在までのところ、目標を上回るスピードで達成しているという。

 AMDのデータセンター向けCPUは、2017年に最初のEPYCを出荷した。現時点では第4世代が最新プロセッサーで、4種類のCPUをリリースしている。さらに今年(2024年)、第5世代のCPUをリリースする予定だ。

戦略とロードマップ

 「AMDは今後も、長期にわたってサーバー向けCPUを作っていくとお約束します」(中村氏)

チップレットアーキテクチャ

 EPYC CPUでは、2017年の第1世代から、複数のチップを組み合わせてひとつのCPUに仕上げる、チップレットという技術を採用している。

 サーバー向けは、パソコン向けに比べて信頼性が高く高パフォーマンスでなければならない。そのためには大きなキャッシュと、たくさんのコアが必要になる。これをひとつのチップで作ると、巨大なチップサイズになってしまい、今のトレンドには合わない。

 そこで、複数の小さなチップをひとつのパッケージにするのがチップレットだ。CPUコア、キャッシュ、メモリコントローラーなど、それぞれを小さなチップにして、必要な組み合わせのひとつのチップを作る。

 これにより、AMDのCPUは世代がひとつ上がるとパフォーマンスが約2倍になる。一般的には、世代が上がっても20%アップや30%アップというのが普通のようだ。加えて、小さなパーツを好きなように組み合わせてひとつのCPUを作るので、コアを増やしたCPUやキャッシュを多くしたCPUなど、製品バリエーションが増える。

AMD EPYC チップレットアーキテクチャ

 また、データセンターではセキュリティが重要だ。通信の暗号化やバックアップデータの暗号化などはすでに技術が確立しているが、稼働中のコンピューターのセキュリティについては、同じような技術がまだない。AMDではその分野に注目し、「AMD INFINITY GUARD」という、使用中データの保護にも取り組んでいる。

AMD INFINITY GUARD

EPYC 9004シリーズのパフォーマンス

 EPYCの性能についてはさまざまなベンチマークの結果がグラフで紹介されたが、ここではひとつだけ紹介する。

競合製品とのベンチマーク比較

 上の図は、ARMアーキテクチャ(白)、第4世代の定番(グレー)、第4世代EPYC(青)のベンチマークの比較だが、EPYCのスループットが他を圧倒して優れている。これ以外に、同じスループットを出せるサーバー当たりのコンテナ数を調べたところ、やはりEPYCが約3倍のコンテナを積めるという結果が出た。

 ARMは携帯電話などに使われ、消費電力が小さいことで知られる。省エネのためにはARMを使うとよいのではないかと思うかもしれないが、携帯電話は使っていない時に電気を切るので電力消費を抑えられる。しかしサーバーは常に動いている必要があるため、携帯と同じARMアーキテクチャーだから消費電力が少ないと期待しては誤ってしまうこともあるだろう。エネルギー効率のベンチマーク結果も紹介されたが、これもEPYCが1.8倍効率がいい。

 また、ベンチマーク結果からの試算では、同じ性能を発揮するのに、定番CPUと比較して40%ほど少ないサーバー台数で実現できる。サーバー台数が少ないので、電力消費も4割程度少ない。その他にソフトウェアのライセンスコストやスペースなども減らせるので、総コストの削減が見込める。

採用事例

 最後に、実際にEPYCを使ってコスト削減やCO2排出削減を実現した企業が紹介された。

採用事例

 半導体製造の大手であるTSMCは非常に多くのコンピューターを使用しているが、AMDを採用して台数削減を行っている。シンガポールのDBSという金融機関は、非常に早い段階からEPYCを採用し、VDIやミッションクリティカルなシステムで仮想環境を使って、消費電力を50%削減した。

 JOCDNはテレビ番組を配信するTVerの会社だが、スループットの向上と消費電力の削減に成功した。他にも、配信系やWebTech系で採用が多いという。

 「現在、サーバーのCPUは非常に競争が激しい状況になっている。サーバーのCPUについて深く考えたことがなかったという場合は、次のリプレイスの際にAMDの製品を検討の選択肢に入れて計算してみてほしい」(中村氏)