クラウド&データセンター完全ガイド:イベントレポート

【データセンターコンファレンス2016 Autumn】サービスのSLAを確保するために不可欠な要素とは
SDI世代のデータセンター・マネジメント

インテル

「SDI(Software Defined Infrastructure)」時代を迎え、データセンター事業者は、インフラとIT機器の垣根を越えた管理が求められている。そして、より信頼性の高いサービスを提供するためには、発熱や冷却、電力、スペース効率も考慮したSDIの実現が不可欠となる。SDI世代のデータセンター管理の最新動向について、インテルの高木氏が解説した。

インフラの属性を考慮した管理で SDI時代の到来に備える

インテル株式会社 データセンター・ソリューションズ ビジネス・デベロップメント・マネージャー 高木正貴氏

 モバイルやSNSなど、コンシューマーサービスの主導によるICTの発展が、ニューデジタルエコノミー時代を牽引している。これまでの企業システムでは対応できないような大規模なワークロードをこなすためにHadoop等の新しい技術基盤が次々に誕生。そうした技術基盤は企業活動にも大きな影響を及ぼしており、最新のICTをいち早く使いこなし、俊敏で高効率な活動ができるかどうかが、ビジネスを左右するようになっている。

 このような変化の潮流はデータセンターにも波及しており、近年、大きな注目を集めているのが、CPUやメモリといったコンピューターリソースをはじめ、ネットワーク、ストレージなど、データセンターを構成するハードウェアを抽象化するとともに、ソフトウェアで自由に制御可能とする次世代のITインフラ「SDI」である。

 「SDIの登場によって、より柔軟で迅速なインフラ構築の実現に期待が寄せられていますが、最終的な目標は、より信頼性の高いサービスの提供、すなわちSLAの担保にあります」と訴えるのが、高木氏だ。

 「例えば、仮想マシンを定義する際にはCPUやメモリ等の性能面に目が向きがちですが、サービスのSLAを考えた場合、電力やセキュリティ、温度、使用率、設置場所といった、インフラの属性も考慮する必要があります。これらの属性一つひとつをきちんと把握可能なSDI環境を整えずして、SLAを保証したサービスを顧客に提供できません」(高木氏)

SDI時代を見据えた 2つのソリューションを提供

 インテルでは、コンピューターやストレージ、ネットワーク等のリソースをプールし、必要に応じて動的に組み合わることで適切な性能を備えたサーバを実現する「IntelR Rack Scale Design」等、データセンターを支援する取り組みを推進している。そして、SDI時代を見据え、インテルが展開するソリューションが、「IntelR Data Center Manager(DCM)」「IntelR Virtual Gateway(vGTW)」である。

 「それぞれSDKの形態で配布しており、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)やデータセンター事業者が自社製品やサービスに組み込むことで独自のソリューションとして顧客に提供することが可能です」(高木氏)

 DCMとvGTWの機能について見ていこう。DCMは、ラック、サーバなど任意の単位での電力/温度のリアルタイム監視とポリシーベースの電力キャッピング、そしてPDU、UPS、ネットワーク、ストレージなどのITデバイスの消費電力管理を実現する。高木氏は、「DCMは、サーバ単位だけではなくラック単位など、任意のグループでの電力キャッピングが行えます。例えば、4kWが上限のラックであれば、その許容範囲を超えないよう各サーバの消費電力を制御することも可能です」と説明する。

 一方、vGTWは、データセンターのハードウェアの診断とトラブルシューティングを実行するツールであり、リモートKVMコンソールやリモートパワー制御、コンポーネントレベルのヘルスモニタリングといった機能を提供する。高木氏は、「これらの機能は、ベースボード管理コントローラ (BMC)経由で提供されるため、デバイスが電源投入して以後、すべての状態をリモートから管理できます。BMCの機能は各ハードウェアベンダーによって独自の実装を行っていますが、そうした差異を吸収し、マルチベンダー環境下でも管理を行えるのがvGTWのメリットです」と話す。

 また、CPUやメモリなど、コンポーネントレベルのヘルスモニタリングをリモートから行えるため、障害の発生を常時監視できるようになり、迅速なトラブル対応が可能となる。

 このほか、将来的には故障予測機能も実装される計画であり、トラブルの発生を未然に防げるようになる。

 これまで説明してきた機能に加え、DCMとvGTWには、4つの共通する機能がある。1つが「クロスプラットフォームのサポート」だ。サーバの温度や電源、ファンの状態などを監視する標準プロトコルとして「IPMI(Intelligent Platform Management Interface)」が用いられるが、ISV各社では、自社製品に対する付加価値づけを行うため、IPMIに独自の実装を行っているケースが多い。DCMとvGTWはそのような差異を解釈、吸収できるため、異なるISVのサーバープラットフォームをサポートすることが可能だ。

 2つ目が「統合データ分析機能」で、各テレメトリデータを取得、分析することで継続的なトレンドの把握と問題点の解決を支援する。3番目が管理監視の一元化であり、先述したようにクロスプラットフォームをサポートしているため、データセンター内のマルチベンダーのサーバを1つのコンソール画面で管理できる。そして4番目が「エージェントレス」で、各種データの取得に際して、OSではなくBMCにアクセスするため、OSへのエージェントのインストールは不要だ。

図 インテルのデータセンター向け管理ソリューション

1万台のデバイスに対して 詳細なインフラ管理を実現

 さらにインテルは、デバイスやラック単位だけでなく、サーバルーム単位、さらにはデータセンター単位での使用電力や温度の状況をグラフィカルに表示したり、デバイスの使用率などの分析を行ったりするソフトウェア「IntelR Data Center Manager Console(DCM Console)」も提供している。データセンター全体から各デバイスまで、温度や電力の使用状況がひと目で分かるほか、コマンドラインインタフェースによる既存管理ソリューションとの連携や、Excel Sheetからの機器情報のインポートもサポートしている。

 「DCM Consoleは、最も熱が発生している場所や、フロアやラックスペースの使用率も表示されるほか、日付を遡ることで、時系列でその変化を追うことも可能です。それらの情報を表示させるダッシュボードもガジェットを組み合わせることで、簡単かつ自由に構成できます」(高木氏)

 高木氏は、国内のインターネット事業者におけるDCMの活用事例も紹介。その事業者は、3か所のデータセンターにそれぞれフロアを借りて顧客に向けてサービスを提供しているが、合計で約1万台のデバイスが稼働していたという。それらのデバイスはマルチベンダー環境にあり、多種多様なベンダーのサーバが使用されていた。さらに、各デバイスや設置されているロケーションの管理をExcel Sheet、およびサードパーティー製の構成管理データベース(CMDB)で行っていたが、Excel Sheetによる管理は煩雑であったほか、CMDBとの同期も上手くいかないといった苦労を抱えていた。

 「対して、DCMを導入したことで、デバイスの配置場所やデータセンターの階層図がひと目で分かるようになったほか、Excel Sheetと既存CMDBとのデータ同期も実現されました。さらに使用率の低いサーバの検出や、ラックごとの電力の許容範囲の計算も簡単に行えるようになっています」(高木氏)

 最後に高木氏は、「世に期待されているようなSDIが実現されるには、まだまだ乗り越えなければならない壁は存在します。しかし、インテルは真のSDIを実現しデータセンター事業者を支援していくため、日々、ソフトウェアの機能拡張に取り組んでいます。DCMやvGTWなどのツールも、現時点で十分に活用できる機能を備えており、無償トライアル版もサイトからダウンロード可能なので、ぜひ一度活用していただきたいと思います」と訴え、講演を締めくくった。

お問い合わせ先

  • インテル株式会社
  • http://www.intel.co.jp/dcm
  • dcmsales@intel.com

(データセンター完全ガイド)