2021年10月8日 06:00
弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2021年秋号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2021年9月30日
定価:本体2000円+税
AIやビッグデータ、ディープラーニング(深層学習)など新たな技術がビジネスで積極的に活用される中、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に対するニーズは高まり、また多様化している。しかし実際にHPCを活用するにあたっては、越えなくてはならないさまざまな技術的障壁が存在する。
物理マシンによるスーパーコンピューター共有サービスの「AXXE-L by XTREME-D」など高速計算サービスを提供するエクストリーム-D株式会社(以下、エクストリーム-D)は、同社初のハードウェア製品となる「AXXE-L One」を発表した。AXXE-L Oneには、HPC/AIジョブを実行するために必要となる主要コンポーネントをパッケージ化したソフトウェア「AXXE-L by XTREME-D(以下 AXXE-L)」があらかじめ組み込まれている。
AXXE-L One は、計算ノードサーバー「AXXE-L One for Compute」を中心に、ログイン、ゲートウェイ、ストレージなどの各種ノードと組み合わせたオールインワンソーリューションとしての提供も予定しており、ユーザーの利用・実行環境や好みに合わせた最適なインフラを提供することを目指している。
今回発表されたAXXE-L One for Computeは、デル・テクノロジーズ株式会社のハードウェアを基に開発されており、CPUはAMD EYPC 7003、GPUはNVIDIA製(A100、V100、T4)、Mellanox InfiniBandを搭載。BIOS/ファームウェアも出荷前にエクストリーム-Dで最適値を設定済みとなっており、インターネット接続環境があれば電源を入れるだけで即利用開始が可能だ。今後は他のハードウェアベンダーとも同様の連携を進めていく予定という。
より多くの人にHPC環境を利用してもらえるよう
AXXE-L OneにあらかじめインストールされているAXXE-Lは、スーパーコンピューターを利用して計算を実行するためのプラットフォーム。大学や研究機関といった限られた分野のものだったHPC環境を、より多くの分野の人に利用してもらうことを目的に開発され、ベアメタル(物理マシン)でスーパーコンピューターを誰でも利用することができるようにすることを目指して開発された。
実際にHPCを利用して計算を実行するためには、さまざまなコンポーネントが必要となる。コンポーネントが複雑で、何が必要か分からないといったことが企業でのHPC導入の課題となっていた部分もあり、AXXE-LはHPCを利用するにあたって必要となるコンポーネントをあらかじめ含むことで、利用の障壁を低くしている。
HPCを実行する環境は活用方法や用途により多岐にわたっているが、AXXE-LはさまざまなHPC環境に対応し、どの環境であっても、同じ操作方法で利用することができる。そのためAXXE-L Oneは、自社のサーバー室やデータセンターに設置して自ら運用することはもちろん、エクストリーム-Dがベアメタル高速計算環境を構築しているデータセンターで管理/運用代行を依頼することも可能だ。
AXXE-LはフロントエンドにJupyterを採用している。Jupyerはブラウザー上で動作するプログラムの対話型実行環境。ノートブックと呼ばれるファイルにPythonなどのプログラムを記述し、実行結果を逐次確認しながら、作業を進めることができる。多くの企業ではワークフローの作成と実行を別々の人が担当しているため、Jupyerを使うことによってワークフローを作成、そのワークフローを設計者へ展開することが容易に行えるようになる。なお従来のコマンドラインでの入力にも対応している。
AXXE-L Oneは、エクストリーム-Dのパートナー各社の協力のもと開発されており、それぞれのベンダーが販売する製品と同じ品質と保証を受けることができる。計算リソースが不足するような場合でも、AXXE-Lシステムソフトウェア経由でバースティングに対応できるため、今ある予算での導入を可能とし、必要に応じてハイブリッド環境を構築し、計算性能を常に向上させていくことができるという。