クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

長期サポートを受けられるオープンソースの監視ソリューション――Zabbix 5.0

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2020年夏号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2020年6月30日
定価:本体2000円+税

 ラトビア共和国のZabbix社の日本法人であるZabbix Japan LLCは2020年5月12日、オープンソース監視ソフトウェアZabbixの最新バージョンZabbix 5.0をリリースした。Zabbix 5.0は、ネットワークサーバ、ネットワーク機器、サービス、その他のITリソースの監視や追跡を行える、エンタープライズクラスでオープンソースのモニタリングソリューションとなっている。また、Zabbix 5.0は、LTS(Long Term Support)バージョンとなっており、Zabbix 4.2や4.4で実装した機能も含まれ、リリース後5年間のサポート(延長サポートで最長7年間)が提供されている。

 Zabbix 5.0では、ITMSシステムやメッセージングサービス、アラートサービスなどとの連携を容易にし、プラグインシステムによってアプリケーション監視機能やWebインターフェイスの独自機能などの拡張性も向上している。RedmineやJIRA、ServiceNow、Zendeskなどのチケット管理システムとの連携、Microsoft TeamsやSlackなどへの障害通知連携などをWebインターフェイスから選択することで利用できる。また、Docker、Elasticsearch、MySQL、Redis、Memcachedなどの監視プラグインとテンプレートを標準搭載し、アプリケーションの監視も行うことが可能だ。

「Zabbix 5.0」の画面

 これらのサービス/アプリケーション連携や監視テンプレートは、Zabbix 4.2や4.4で導入して5.0で機能強化を行った監視データの保存前処理や、通知のWebhook機能によって実現される。ユーザーが独自の連携機能やアプリケーション監視機能を作成する場合も、独自のスクリプトの作成などを行うことなく、Webインターフェイスからの設定のみで機能を実現することが可能だ。

 Go言語を利用して新規に開発を行った、新しいZabbixエージェント(Zabbix Agent 2)のWindows版もリリース。従来から試験的に配布していたLinux版とあわせて、正式にサポートが開始されている。新しいZabbixエージェントは、内部の監視処理の改善によって、より柔軟な監視設定が行えるだけでなく、Go言語を利用したプラグインシステムによって機能拡張が容易になる。Zabbix 5.0で追加しているアプリケーションの監視機能もこのプラグインシステムを利用しており、アプリケーションの監視機能の実装をより早く簡単に行え、メトリックデータの収集が可能となる。

 監視設定に必要なパスワードやAPIトークンなどを非表示にできることで、他の管理者に機密情報を開示することなく監視設定を共有でき、よりシステム全体のセキュリティが向上された。監視設定や監視データの保存に利用するMySQLやPostgreSQLとの接続に暗号化通信を利用でき、強固なハッシュパスワードが利用可能。Zabbixプログラム間の通信の暗号化に強固な暗号化アルゴリズムを設定できるなど、セキュリティの強化に関するさまざまなな改善が行われている。

 さらに、Webインターフェイスのメインメニューデザインを刷新し、ワイドスクリーン用に適したユーザーインターフェイスへの改善も行われている。ダッシュボードウィジェットのグラフを画像として保存できる機能や一覧表示のフィルターの強化など、ユーザビリティが改善されている。