クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

ユーザービリティが改善されたオープンソース監視ソフトウェア――Zabbix 4.0

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2019年冬号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2018年12月22日
定価:本体2000円+税

 2018年10月2日、ラトビアのZabbix LLCは、オープンソース監視ソフトウェアZabbixの最新バージョンである「Zabbix 4.0」をリリースした。Zabbixは、ネットワーク、サーバー、ネットワーク機器、サービス、その他のITリソースの監視や追跡を行うために開発されたエンタープライズ向けのオープンソースのモニタリングソリューションだ。

 Zabbix 4.0は、LTS(Long Term Support)バージョンとしてリリースされ、リリース後5年間のサポートを提供し、さらに延長サポートで最長7年間のサポートを受けられる。また、全下位バージョンのエージェントに対しても互換性を実現し、ハイブリットクラウドやマルチクラウド環境においても利用できる、大規模なエンタープライズ環境に最適な監視ソリューションとなっている。

 Zabbix 4.0では、HTTPリクエストによる監視データの取得機能を追加し、クラウドやアプリケーションのAPIアクセスによる監視データの取得に対応。Zabbix 3.2や3.4で追加された保存前処理と依存アイテムの機能を活用して、より容易かつ柔軟にAPIを利用した監視データ収集を行える。また、障害を検知した際のコメント入力機能を強化し、障害の手動クローズや深刻度の変更が可能。コメント入力や障害の状態変更を行った際の通知処理も実行できるようになっている。

 監視対象のメンテナンスを行う際には、トリガー設定のタグを利用することができる。以前のバージョンでは、最小のメンテナンス対象がホスト単位だったが、タグを活用することでアプリケーションごとにメンテナンスを設定し、メンテナンス中の障害検知を抑制することが可能となっている。

 新しい監視データのリアルタイムエクスポート機能では、収集した監視データ、検知した障害の履歴をリアルタイムにファイルへ出力できる。出力されたデータを他のソフトウェアへインポートすることで、ログデータの検索や障害履歴の分析など、収集データをより活用しやすくなっている。

 Webインターフェイスの改善も行い、新しいグラフウィジェットを追加。正規表現指定で複数の監視データを1つのグラフ上に描画することができ、マウスポイントでグラフ上に値を表示することで、より監視データの可視化が行いやすくなっている。グラフや障害画面などの期間選択方式も一新し、目的の表示範囲を的確に選択できるようになっている。Zabbix 3.2や3.4で改善されたダッシュボードや障害画面も含め、システムの状況を容易に把握することが可能だ。

 そのほかにも、データのみを表示できるキオスクモード、多くの情報を表示できるコンパクトビューモード、プロキシとの通信の圧縮機能などの新機能を搭載。障害確認機能の改善、タグによる権限設定、HTTP/HTTPSを利用した監視データの収集、シングルサインオン、Webインターフェイスのアクセシビリティの強化、エージェントの自動登録機能などのさまざまな改善も行われている。

 Zabbixは、オープンソースのGPL(General Public License)で開発が行われており、商用/非商用に関わらず、無料での利用が可能。世界のほぼすべての国のあらゆる業界で活発に利用されており、フォーチュン500社のうち50%以上の企業で利用されている。

画面1:グラフウィジェットが追加されたZabbix 4.0