クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

拡張性・可用性にすぐれたモジュラー設計とTCO 削減効果が特徴の大容量三相UPS――Galaxy VX

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2018年夏号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2018年6月30日
定価:本体2000円+税

 企業・組織のビジネスITを支えるインフラはますます巨大に、そして24時間365日稼働し続けることが求められている。IT機器が電力で動く以上、不測のトラブルで発生する停電への適切な対処は欠かせない。大規模なITインフラを収容するデータセンターにおいては自家発電装置が備えられているのが常だが、商用電源から自家発電に切り替えるまではUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)が重要な“つなぎ”の役割を果たす。大容量でかつ万一の際にも稼働を保証する高い信頼性・可用性が求められる。

 シュナイダーエレクトリックが2018年7月より受注開始する「Galaxy VX」は、データセンターやエネルギー・発電プラント、交通・産業など大規模インフラ向けに設計・開発された大型三相UPS製品だ。単機で500~1500kVAに対応し、同社が提供するUPS製品ラインアップ中最大容量モデルとなる。

 同製品はモジュール方式を採用し、250kWのパワーキャビネット2~6台で構成。キャビネット単位での増設に対応する。250kWごとに段階的な増設が可能なため、あらかじめ大容量なものを導入するのではなく、サーバールームの増設や増床に合わせて必要な容量だけを追加することで、初期投資を抑制できる。

 そして、冗長構成の構築も容易だ。パワーキャビネットを増設することでGalaxy VX単機での冗長化を実現する。例えば、4台の250kWパワーキャビネットに1台追加してUPS全体で1000kW/N+1の冗長システムを構築することで、1台のパワーキャビネットに故障が発生した場合でも1000kVAの電力を供給し続けられる(写真1)。

 なお、パワーキャビネット自体も複数のパワーブロックで構成されるブロック構造を採用している。そのため、万一の故障の際にはパワーブロックを交換するだけですばやい復旧が可能だ。

写真1:Galaxy VX のモジュラーアーキテクチャ(出典:シュナイダーエレクトリック)

節電効果の高い「ECOnversionモード」を追加

 Galaxy VXの運転モードは従来モデルにも備わる「ダブルコンバージョンモード」に加え、未使用の電気コンポーネントをバイパスする「ECOモード」、そして同製品の大きな特徴の1つである「ECOnversionモード」を搭載している。

 ECOnversionモードは、バイパス運転による給電を常時続けることでダブルコンバージョンモードと同等の高効率性を維持しつつ(最大効率99.2%)、インバータを常時運転(スタンバイ状態)させることで、停電時にはバイパスからバッテリー運転への安定したすばやい切り替えを実現している。シュナイダーエレクトリックの試算によると1000kWの場合、常時インバータ運転のUPSと比較して年間367万9,200円もの電気代を節約できるという。加えて、Galaxy VXは環境温度40度でも定格100%を出力可能としており、これによりサーバールームの空調設置、運転のコストも削減できる。

 ほかには、模擬負荷装置(ロードバンク)を使用せずに定格容量でのUPS負荷試験を可能とする「Smart Power on Test(SPoT)」機能も特徴として挙げられる。このSPoT機能により、運用開始前の検証時や定期試験時にロードバンク関連のコストを削減可能だ。従来、コストや工数などの理由で無負荷試験しかできなかったケースでも容易に負荷試験を行えることは大きなメリットとなる。

 さらに、バッテリーとして従来の鉛蓄電池のほかにリチウムイオンバッテリーの選択も可能だ。リチウムイオンバッテリーを選択することで、UPS設備のトータル設置面積を4~6割削減、重量も6~7割軽量化し、スペースコストを大幅に節約できる。また、バッテリーとしての寿命も、リチウムイオンは鉛蓄電池の2~3倍と言われており、TCO(総所有コスト)の削減に大きく貢献する。