クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

S3 APIネーティブのオブジェクトストレージをアプライアンス化「HYPERSTOREアプライアンス」

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2018年春号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2018年3月30日
定価:本体2000円+税

写真1:HSA-4000シリーズ(出典:クラウディアン)

 IoTだとセンサーから膨大な非構造化データの収集があり、AIにおいても学習のために大量のデータが必要となる。それらの多種膨大な非構造データを一時的にとはいえ従量課金制のクラウドプラットフォームに保管することにコスト的な困難を感じる企業も多いはずだ。

 そこで注目が集まっているのが、収集したデータをすぐそば(エッジ)で処理を行い、必要なデータだけを分析や応用のためのシステムに移すという構成が多く見受けられるようになってきている。

 こうしたエッジで利用するストレージに求められるのは、さまざまな非構造化データを効率的に扱えることはもちろん、コストパフォーマンスや拡張性、可用性、データ保護、運用管理性などだ。

多彩な機能を装備したオブジェクトストレージ製品

 クラウディアンが販売を開始した「HYPERSTOREアプライアンス」は、同社が従来提供してきたオブジェクトストレージソフトウェア製品「CLOUDIAN HYPERSTORE」を世界共通仕様のハードウェアに搭載して最適設定したものだ。

 1Uサイズの「HSA-1500」と4Uサイズの「HSA-4000」の2シリーズがあり、HSA-1500シリーズは3.5インチHDD12台(ホットスワップ対応)と、2.5インチSSD4台まで搭載可能で、実効容量は48TBから144TB。HSA-4000シリーズは1筐体に2ノード収容、3.5インチHDD70台(ホットスワップ対応)と2.5インチSSDを4台まで搭載可能で、最大800TBの実効容量となっている。

 HYPERSTOREは最小構成で3台のノードからスタートでき、必要に応じてノードを追加することで、クラスター全体のストレージ容量を無停止で拡張できる。

 さらに、ポリシーベースの階層化機能を使用して、利用頻度の低いデータやアーカイブをAmazon Simple Storage Service(S3)やGoogle Cloud Platform、Microsoft Azure Blob Storageなどのパブリッククラウドに自動転送してコスト合理性の高い管理も行えるとしている。

 データ保護機能の充実もHYPERSTOREの特徴の1つだ。暗号化により保管データの安全性を高めることはもちろん、単一クラスター内でさまざまなデータ保護の種類をカスタマイズすることができる。

 データのレプリケーション、復元に必要なパリティ情報をデータと一緒にノードに分散配置するイレイジャ―コーディング、もしくは両方の組み合わせを選択して、確実なデータ保護を実現できる。レプリケーションをノード内に保管するだけでなく、複数のデータセンターへの分散配置による保護を選択可能だ。

 業界標準と言えるAmazon S3に完全準拠しているため、S3 APIを活用してさまざまなクラウド対応アプリケーションを利用可能だ。統計や課金、利用量管理機能を標準で装備しており、Amazon S3に近いクラウドストレージサービスをオンプレミス、プライベート環境に迅速に構築できる。

 運用管理機能としては、ユーザーやグループごとにQoSや課金情報などを設定して管理でき、HYPERSTOREを複数の地域や拠点に拡張していてもWebベースのコンソールから統合管理が行える。

 こうした特徴によりHYPERSTOREは、データのバックアップやアクティブアーカイブ用途はもちろん、IoTやAIのためのオブジェクトストレージとして、また、DR(Disaster Recovery)やハイブリッド/マルチクラウド用ストレージなどとしても活用が進んでいるという。

 価格はHSA-1500シリーズ(3台セット)の実効容量48TBモデルが885万円、96TBモデルが1005万円、120TBモデルが1125万円、144TBモデルが1275万円。HSA-4000シリーズ(2台/ 4ノードセット)の価格は実効容量186TBモデルが1990万円、373TBモデルが2650万円、466TBモデルが3160万円、560TBモデルが3700万円。いずれも別途年間保守費が必要となる。