クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

特別編:「データセンターを支える黒子たち」を支える、最新のラック性能試験設備――日東工業 風雨・耐震試験棟

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2018年冬号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2017年12月21日
定価:本体2000円+税

業界初の風雨試験および3軸耐震試験

 分電盤やブレーカー、キャビネットなどのメーカーである日東工業。データセンターでおなじみのものとしてはシステムラックを提供している。例えば、制震ラック「ガルテクト」(写真1)は、ラック本体を別の筐体に格納した2重構造で、免震台の設置よりも省スペースでラックの制震を実現。免震台を設置するよりも安価に震災対策が行える。

写真1:日東工業の制震ラック「ガルテクト」

 その日東工業が、主力工場である菊川工場(静岡県菊川市)内に風雨・耐震試験棟(写真2)を建設し、2017年9月13日より本稼働を開始した。これにより、メーカー保有の施設として業界初の風雨試験および3軸耐震試験が可能となった。

写真2:風雨・耐震試験棟の外観

 3軸耐震試験設備(写真3)は、水平方向(X軸・Y軸)と垂直方向に最大25cm動く。従来は水平1軸と垂直方向の2軸試験設備で試験を行っていたが、「3軸になることでより忠実に自然環境を再現できる」(同社)という。加震テーブルは3m×3mの広さで最大3トンまでの物を置くことができる。この設備で試験するのは、主にシステムラックや高圧受電設備で、取材時にはテスト用の標準ラックが置かれていた。

写真3:3軸耐震試験設備

 最大加速度はX軸方向に3G、Y軸および垂直方向に2Gを加えることができる。小刻みな揺れから大きな揺れまでさまざまな周波数で振動を加え、実際の地震の波形を再現する。取材時には、2016年4月の熊本地震と2011年3月の東日本大震災の揺れが再現された。特に東日本大震災の揺れ時間が長く、再現とわかっていても不安になるほどだった。これらの振動にも転倒や破損しないことをテストし、製品を設計・製造している。

 ちなみに加震台は、振動が外部に伝わることを防ぐために「浮基礎」となっている。空気バネ(タイヤチューブ状のもの)の上に載せ、建物の基礎から数cm浮いた状態にする(写真4)。その浮基礎の中でダンパーによって振動を吸収している。加震台が地面にも建物にも直接触れないため、振動が外部に影響しない。

写真4:浮基礎・防振装置

 風雨試験設備(写真5)では、最大風速60m/s、最大降雨量300mm/hまでの強風や豪雨を再現し、耐風圧性能や防水性能の評価を行う。データセンター内で風雨にさらされることはないが、建物外に置く発電機や監視カメラ、IoTセンサのキャビネットについては、このような性能が要求される。

写真5:風雨試験設備

 菊川工場内には従来から菊川ラボラトリがあり、防水性能評価、防塵性能評価、日射熱性能評価、機械試験評価(扉の開閉耐久試験など)といった設備がある。これらの試験設備は外部の評価試験も受け入れている。データセンター関連では、iDC熱性能評価の設備がある。温度センサーを設置した2つの部屋で、対策をした場合としない場合の比較などが行える。

 近年、情報化社会の発展に伴い、情報通信のインフラ、監視インフラなどの重要度がますます高まっている。それらに使用されるキャビネットやシステムラックは、異常気象に伴う台風、豪雨、地震などの過酷な自然環境にも耐えうる性能が要求される。

 日東工業取締役社長の佐々木拓郎氏は、「風雨・耐震試験棟の開設で、当社製品の設置環境に対する性能検証をより強化することができた。今後も、お客様の課題解決により貢献できる安全・安心な製品の提供を行っていきたい」と抱負を述べた。