クラウド&データセンター完全ガイド:新データセンター紀行

大阪市内直結のネットワーク環境と高い対災害性 短期建設でクラウド事業者の大口需要にも対応――NTT Com 大阪第7データセンター

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2020年冬号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2019年12月23日
定価:本体2000円+税

NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は2019年12月1日、同社の新たなデータセンターとなる「大阪第7データセンター」(写真1)の提供を開始した。大阪第7データセンターは、GPUサーバーなど最新の機器にも対応できる設備を備えるとともに、モジュール設計により短期建設を可能にし、大手クラウドサービス事業者などの大口需要にも対応するデータセンターとなっている。

写真1:NTT Com「大阪第7データセンター」(出典:NTT Com)

大阪の中心部と直結できるデータセンター

 NTT Comの大阪第7データセンターは、大阪市内から公共交通機関で30分以内、京都・神戸市内からも約1時間でアクセス可能な、水害や地震などの災害リスクが低い茨木市内に立地。関西最大級のサーバールーム面積約3800㎡、1700ラック相当を有し、完成時には約9500㎡、4200ラック相当のスペースを提供する(写真2)。

 NTT Comのデータセンターブランド「Nexcenter」が定めるグローバルで統一化された厳格な設備・運用基準に準拠。電力・空調・通信設備の冗長化やセキュリティに加えて、NTT Comのネットワークインフラ基盤に直結することで、大容量かつ高品質・高信頼なネットワークサービスを低コストで利用できる。

 大阪第7データセンターは、大阪におけるNTT Comのデータセンター間をつなげる大容量・高速ネットワークリング「Nexcenter Connect Metro」により、ISPやデータセンター事業者のネットワークの相互接続点であるIXがある大阪市内の堂島エリアにダイレクトに接続できる(図1)。これにより、大阪市内にあるNTT Comの既存のデータセンターとあたかも1つのデータセンターのように利用できる。

 また、各種クラウドサービスなどにセキュアに接続できる次世代インターコネクトサービス「Flexible InterConnect」を活用でき、大阪第7データセンターと顧客拠点やクラウドサービス、IX、ISP事業者などをセキュアに接続し、柔軟なデータ流通を実現できる。

写真2:大阪第7データセンターのサーバールーム
図1:大阪第7データセンターを軸とするネットワーク活用イメージ(出典:NTT Com)

クラウドベンダーの需要に応える柔軟な設備対応

 11月27日に行われた大阪第7データセンターの説明会では、NTT Comエバンジェリストの林雅之氏(写真3)がデータセンターの市場環境について説明した。現在も国内のデータセンター市場は堅調な成長となっており、企業顧客からの堅調な需要が続くとともに、大手クラウドサービス事業者からの需要が特に旺盛になっているという(図2)。

写真3:NTT Comエバンジェリストの林雅之氏
図2:データセンターを取り巻く市場環境(出典:NTT Com)

 海外の大手クラウドサービス事業者などでは、東京とともに大阪に拠点を構える例が増えており、関西圏ではデータセンターへの大口需要が高まっている。

 林氏は、こうした市場の状況に対して、データセンター事業者側の対応としては、クラウド向け需要に対応した新しい設計モデル、高発熱・高密度サーバーへの対応などデータセンターインフラ技術革新への対応、AIや大規模ストレージなど新たなITサービス/ソリューション基盤への対応が求められていると説明。今回提供を開始した大阪第7データセンターでも、こうした対応を行っているとした。

 大阪第7データセンターは、建物やフロア単位で柔軟にカスタマイズできる、キャンパス型のモジュール設計のデータセンター建物となっている(図3)。同様の設計の建物を建てていくことで、サービス提供の工期短縮やコスト低減を実現。クラウドサービス事業者などの旺盛な需要に応える。開所時点では1棟目と2棟目が完成しているが、2020年には同じ敷地内に3~5棟目も完成する予定となっている。

図3:モジュール型にすることで、早期建築と需要の変化への柔軟な対応を実現(出典:NTT Com)

高密度サーバー、HVDCにも対応

 サーバールーム内の空調には、冷却効率が高い壁面吹き出し方式の空調設備を採用している(図4)(写真4)。壁面から吹き出された冷気はラック前面へ、機器からの排熱はラック背面から天井を通って空調機へと流れる。GPUサーバーなど超高発熱サーバーの冷却にも対応できるほか、この仕組みにより二重床不要で不要で建物階高を抑制できるため、建物コスト削減にもつながっているという。

図4:サーバールームの空調には壁面吹き出し空調方式を採用(出典:NTT Com)
写真4:奥の壁面から吹き出された冷気がサーバーラック前面から取り込まれる

 1ラックあたりの供給電力は定格9kVA、実効6kVAで、20kW以上の電力を消費するサーバーの設置にも対応。また、床耐荷重も2t/㎡となっており、高重量なサーバーの設置にも対応する。

 電力設備については、受電はデータセンターが立地する地区のエネルギーセンターからのA系B系ルートによる二系統受電で、サーバールームの各ラックまで二系統で配電される。非常用発電装置には海外では一般的なディーゼル発電機を採用し、N+1冗長構成で48時間以上無給油運転が可能(写真5)。UPSもN+1冗長構成となっている。

 また、電源に関しての取り組みとしては、約20%の消費電力削減を実現するHVDC(高電圧直流給電)システムに対応するスペースも用意するなど、最新技術の導入を予定している(写真6)。

写真5:非常用発電装置にはディーゼル発電機を使用する
写真6:サーバールーム内にはHVDC(高電圧直流給電)システムに対応するスペースも用意されている

球面すべり支承を用いた建物免震構造を採用

 耐災害性の面では、大阪第7データセンターでは免震装置として球面すべり支承を用いた建物免震構造(写真7)を採用することにより、阪神淡路大震災、東日本大震災クラスの巨大地震でも、建物や顧客機器への衝撃を抑えた安全な運用継続が可能となっている。また、建物は大雨や近隣河川の氾濫時でも浸水が極めて少ないエリアに立地しているため、水害のリスクも低い。

写真7:免震装置として球面すべり支承を採用

 通信ネットワークは近隣の2つの通信ビル経由の複数ルートで冗長化されており、敷地・建物に異なる経路・引き込み口から入線している。

 セキュリティ設備については、ICカードや生体認証、セキュリティゲート(写真8)、監視カメラなどを備える、また、入館受付機(写真9)とラック電子錠、ラック鍵ボックス(写真10)などによりスピーディーな入館を可能にする「スマート入館」が導入されている。

 NTT Comによると、これまでのデータセンター需要は東京が圧倒的に大きかったが、最近は大手クラウド事業者の大阪への需要も大きく、そうした需要に向けて大阪のデータセンターの拡充を進めているという。実際に、大阪第7データセンターも今回完成した2棟のうち半数程度は既に契約済みとなっており、2020年中に完成予定の3棟にも問い合わせが寄せられているという。また、番号は前後しているが、NTT Comでは大阪第6データセンターの建設も進めており、関西地区でのデータセンターの新設は今後もさらに続くようだ。

写真8:セキュリティゲート
写真9:入館受付機
写真10:ラック鍵ボックス
表1:NTT Com 大阪第7データセンターの設備概要
所在地大阪府茨木市
開設2019年12月
建物データセンター専用建物、鉄筋コンクリート造 建物免震構造 地上2階建(一部3階建)
サーバールーム面積当初:約3800㎡(1700ラック相当) 終局:約9500㎡(4200ラック相当)
スラブ耐荷重約2,000kg/㎡
電力設備 受電二系統受電、IT機器向け総電力提供可能容量 当初:11.5MW 終局:29.5MW
   非常用発電装置N+1冗長構成 48時間以上無給油運転可能
     UPSN+1冗長構成 バッテリー保持時間5分以上
空調設備N+1冗長構成 水冷式 壁面吹き出し方式
消火設備超高感度煙検知装置、熱感知装置、ガス消火設備
セキュリティ設備ICカード、生体認証、セキュリティゲート、監視カメラ、スマート入館
その他設備レンタルオフィス、無線LAN、ラウンジ、顧客用倉庫スペース、駐車場
保守・運用サービス(24/365)機器監視、技術サポート、セキュリティ、通信、ストレージ、マネージドサービスなど
各種認証(取得予定含む)ISO 9001、ISO 14000、ISO 20000、ISO 22301、ISO 27001、Privacy mark、SSAE16/ISAE3402、PCI DSS