クラウド&データセンター完全ガイド:JDCC通信

JDCC通信 第33回 JDCC理事長就任に向けて

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2021年秋号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2021年9月30日
定価:本体2000円+税

日本データセンター協会 Japan Data Center Council(JDCC)
http://www.jdcc.or.jp/
日本データセンター協会(JDCC)は2021年6月、新理事長に田中邦裕氏(さくらインターネット代表取締役社長)が就任と発表した。同氏は同協会副理事長を長年務め、白川功前理事長(大阪大学名誉教授)、江崎浩運営委員長(現副理事長兼務、東京大学大学院教授)らとともに業界発展に取り組んできた。

 日本データセンター協会(JDCC)理事長就任にあたりデータセンター(DC)を取り巻く環境と課題解決を通じた業界発展について所信を表明する。まず2008年の設立時よりJDCCを導いてこられた白川前理事長に業界を代表して感謝するとともに、今後各位の協力を得てこの重責を担っていきたい。

データセンターを取り巻く環境

 振り返るとまず社会が変化してきている。そして地震・水害などの災害が立て続けに発生している。中でも東日本大震災の影響は大きく、被災地域の一部DCで物理的被害、通信ケーブル破損、大規模停電下での電源確保が難しいなど多種多様であった。そこで今後の「あり方」について政府や行政を巻き込み、さらに電力会社を交え変電所の立地や容量など踏まえたDC立地など、各種を議論できる素地を得たことで課題解決に向け大きく前進した。インターネットが社会に果たした役割が注目され、コロナ禍の緊急事態宣言下もDC事業の継続が求められるなど、DCは社会インフラであるとの認識の広まりに加えてJDCCの活動もあり、DCの社会的地位は向上してきている。

解決すべき課題

 解決すべき大きな課題は3つある。増えつつあるプレイヤーすべてが事業を伸ばせるという業界発展、データガバナンスと国内データ集積並びに地方分散、温暖化ガス排出量低減などのSDGsやESG対応である。

 まず業界発展では、ビジネス・研究開発の面でDCに関わりたいと思えるようにしていくことが重要だ。関わるのは運営のDC業界、用地・建物・設備・資金などの提供側、利用企業の3者である。現在の主な利用はクラウドベンダーになっているが、自社のITガバナンスと競争力強化を目指す企業が増え、再びDC利用を強化する企業が増えている。そうした中で3者が密接するコミュニティによって関わる者すべての発展を目指す。そしてJDCCはその発展に広く寄与していく。

 次にデータガバナンスと国内データ集積、地方分散だが、データが外国にある状況はリスクがあり、場合によっては日本国民・消費者の不安を招きかねない。保管国における災害や通信逼迫などもある。こうしたことへの対応はDCの国内地方分散含めて多様な議論が必要だ。国でも議論が進められているが業界団体としてビジョンと方針を明確にしながら貢献していきたい。

 最後にSDGsやESGだが、DCは社会の温暖化ガス排出量を低減する。そのためDC業界全体の排出量は増えざるを得ない。だが諸外国はDCもカーボンニュートラル(脱炭素)に向け邁進していて、日本の排出が続けば無責任のそしりを免れない。ただ今のままDC業界が脱炭素に向かうと大きなコスト負担となる。手持ちのモデルでは原価の30%強が電気代である(1カ月間の原価30万円なら電気代は10万円)。そのため電気代が倍になると経営が難しくなるケースもあるだろう。そこで利用企業も応分を負担するという合意形成が重要である。社会の環境意識の高まりを受け、少々高くても脱炭素DCを提供して企業の脱炭素に寄与すべきだ。そのためDC事業者はさらに価値を提供してDCの魅力を高めた上で国のIT支援なども併用して、安定してDC事業を継続できるしっかりしたビジョンが重要である。

 課題は多いが、デジタル化やテレワーク・働き方改革などにより発展が見込まれる中、さらなる成長を目指してJDCCを舵取りしていく所存である。

日本データセンター協会(JDCC)は、データセンター事業者と主要な関連事業者が参加する組織を形成し、水平的垂直的に協力して国際競争力を備えたものへと進化させることに取り組んでいて、IT立国の基盤を支えるデータセンターのあるべき姿を追求することを目的としている。