クラウド&データセンター完全ガイド:JDCC通信

JDCC通信 第26回 データセンターネットワークガイドラインとネットワークインフラ更改への提言

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2019年秋号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2019年9月30日
定価:本体2000円+税

日本データセンター協会 Japan Data Center Council(JDCC)
http://www.jdcc.or.jp/

日本データセンター協会(JDCC)ネットワークWGでは、ネットワークガイドラインの今年度中作成を目指して活動している。本ガイドラインは別WGよるデータセンター全体の運用ガイドラインの一部で、まとめてから発行予定だ。また、サーバーに比べて期間が長いネットワークインフラ更改の指針についても提言していきたい。

ネットワークガイドライン作成

 日本データセンター協会(JDCC)ネットワークWGの目下の目標は「データセンターネットワークガイドライン」の運用版を今年度中に作成することである。本ガイドラインは、JDCCデータセンター運用ガイドラインWGからの要請であり、最終的には同WGが進めている運用全体のガイドラインとしてまとめられてから発行予定だ。

 その担当分に着手しているが、体系的なガイドライン作りは困難と言わざるを得ない。理由は、いくつもの事例を調査した結果、ネットワーク運用は事例ごとに大きく異なるためである。

 この事実は、WGメンバーがミーティングに持ち寄った事例研究より得られたもので、見識を深める目的もあってミーティングは活発な情報・意見交換の場となっている。WGメンバーは大半がネットワークエンジニア。しかし、所属企業の業種はさまざまで、通信キャリアや電機メーカー、SIer、専業などの事業者のほか、コンテンツやサービス提供(自社利用)など幅が広く、ネットワーク運用についてもそれぞれである。例えば、運用自動化は事例の各社ともに何らかの仕組みを持っているが、一言でまとめられるほどの共通性はない。体系的なまとめを通信キャリア系に寄せると品質は高くなるが運用コストも上昇してしまう一方で、コンテンツ提供系など自社利用に寄せれば自由度は高くなるが厳密性は低くなるといった状況だ。

 しかし、それぞれのビジネスにふさわしい運用がある事実は示す必要があるだろう。そのため、さらに事例を集めるなどして、興味を抱いてもらえるガイドラインを目指し、バランスを取っていきたい。

ネットワークインフラ更改への提言

 ほかの活動としては、ネットワークインフラ更改、特に時期・サイクルについて提言していきたい。ネットワークインフラの更改は、サーバーのような3~5年でなく、実際はもっと長い。しかし、ネットワークも進歩が速く、長くても5年でリプレースしたいところだ。ネットワーク関連の減価償却が10年というのも影響しているだろうが、建物や設備のライフサイクルと同程度と捉えて延々と使い続けているケースは多い。典型はサーバー更改によりNICが次世代のものになったりできたりするものの、ネットワークがそのままというケース。まさに宝の持ち腐れである。総合的な効率性や合理性を踏まえてライフサイクルを正しく認識するとともに、更改がいつなのかを運用側全体で共有していく必要がある。

 更改は危険、停止という事故が起こりえるという声もある。ある意味それは正しいが、たとえ停止してしまったとしても影響を最小限に抑える技術がすでにある。その鍵が「部分的に差し替え可能なネットワークインフラ」で、「IP CLOS」ネットワークアーキテクチャである。北米大手などによる採用が7~8年前より始まり、それらの成功例を多数見てきた筆者所属の企業もこのアーキテクチャを採用している。

 ネットワークインフラのライフサイクルについては情報を収集しつつまとめているところで、今後発信して問題を提起していきたい。そして、ネットワークエンジニアが「JDCCの情報に基づいて」と言えば、周囲が理解を示してくれる環境を実現したい。

 現在、本WGは24社70名が参加している。WGは多数の事例が必要であり、また、多数の事例を理解したい方は、ぜひ本WGに参加してほしい。

日本データセンター協会(JDCC)は、データセンター事業者と主要な関連事業者が参加する組織を形成し、水平的垂直的に協力して国際競争力を備えたものへと進化させることに取り組んでいて、IT立国の基盤を支えるデータセンターのあるべき姿を追求することを目的としている。