クラウド&データセンター完全ガイド:JDCC通信

JDCC通信 第22回 環境条例への対応とデータセンター活用による環境負荷軽減制度の結果

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2018年秋号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2018年9月29日
定価:本体2000円+税

日本データセンター協会 Japan Data Center Council(JDCC)
http://www.jdcc.or.jp/

日本データセンター協会(JDCC)では、温室効果ガス排出規制が業界にとって適正となるよう関係省庁や自治体へ向けてデータセンター利用による削減効果の説明や省エネ支援事業協力など、環境問題に取り組んできた。ここでは、規制や支援、JDCCの取り組みについて概要を紹介する。

 温室効果ガス排出削減が社会から求められている。関係省庁・自治体が条例などを制定していて、データセンターも規制対象となっている。

 一方、企業や組織が自前ではなく、事業者(商用)データセンターを活用することでトータルの省エネにつながる。

 最近では、データセンター関連の省エネ支援施策もある(表1)。ここでは、規制と省エネ支援、日本データセンター協会(JDCC)の取り組みについて紹介する。

表1:代表的なデータセンター省エネ関連支援事業
組織支援事業・制度状況
経済産業省データセンターを利用したクラウド化支援事業2015年3月にて終了
東京都中小規模事業所のクラウド利用による省エネ支援事業2017年1月にて終了
東京都環境配慮型データセンター認定制度2017年3月にて終了
JDCC環境に優しいデータセンター認定2017年3月にて終了(認定は2018年3月まで有効)

東京都環境条例とJDCCの働きかけ

 本条例は都内で一定以上の温室効果ガスを排出する事業所に対して総量削減を義務化するもの(不足分は排出権購入で相殺できる)。2010年度より施行され、都内のデータセンターも規制対象だ(規模による)。

 しかし、基本削減量をデータセンターに課すとかえってトータルの排出量が増えてしまう。理由は、事業者データセンターの方が企業のそれよりもエネルギー効率に優れているからだ。

 そこで、JDCCでは協会設立間もないころに環境政策WGを設置。関係省庁・自治体の制度検討会などでこうした省エネ性を説明、適正な制度となるよう働きかけてきた。結果、省エネ性が認められ、データセンターによる増加分は適正化するなどが制度に組み込まれている。

 なお、同条例は現在、2020年度以降の制度内容を検討している最中だ。

東京都「クラウド化支援事業」

 本事業の正式名称は「東京都中小規模事業所のクラウド利用による省エネ支援事業」。都内の中小規模事業所の情報システムをクラウドサービスへ移行する際、その費用の一部を助成するもの(すでに終了)。移行先は都内でなくてもよいが、そのクラウドサービスが一定基準以上の省エネデータセンターを使用している必要がある。

 それを証明する方法として東京都は「環境配慮型データセンター認定制度」を用意。実はその審査項目がJDCC「環境に優しいデータセンター認定」と同じであるため、実質、JDCCの認定がそのまま東京都の認定になる(約100件が認定された)。

 本事業は東京都とJDCCが事前に協議して策定。審査実務をJDCCが担当するなど含めて最終的に協定を締結して、2015年度から2年間実施した。ただ、利用件数が数件にとどまり、今後に課題を残す形となった。

将来への展望

 ここでは東京都のケースで紹介したが、東京都に限らず今後も説明や協議、協業など働きかけを続けていく。

 将来像としてAIやIoTを活用した省エネ社会がある。その土台となるデータセンターを含めた今後の環境政策のあり方について先を見据えた多角的な議論や提案が必要だ。本WGへの支援ならびに積極的な参画をお願いしたい。

日本データセンター協会(JDCC)は、データセンター事業者と主要な関連事業者が参加する組織を形成し、水平的垂直的に協力して国際競争力を備えたものへと進化させることに取り組んでいて、IT立国の基盤を支えるデータセンターのあるべき姿を追求することを目的としている。