クラウド&データセンター完全ガイド:特別企画

日本のインターネットの発展を支え続けて25年 JPIXが指し示す「次の一手」とは?

日本インターネットエクスチェンジ株式会社
https://www.jpix.ad.jp

日本初の商用IXとして、1997年に誕生した日本インターネットエクスチェンジ(以下、JPIX)。設立当初から、より良いインターネット・インフラを提供することを使命に掲げ、サービスの向上に継続的に取り組んできた。特に近年ではIXサービスだけに留まらない多彩な付加サービスを展開、地域ISPの業務効率化やビジネス拡大も支援している。そうしたJPIXの舵取りを担う代表取締役社長の山添亮介氏に、同社のこれまでの歩みと現在、注力しているサービス、そして今後の日本のインターネットの展望について話を伺った。
日本インターネットエクスチェンジ株式会社 代表取締役社長 山添 亮介氏

日本初の商用IXとして誕生 先を見据えた規模拡大で顧客獲得増

――はじめにJPIXの歴史と沿革についてご紹介ください。

山添氏 JPIXは1997年7月、日本初の商用IXとして誕生しました。当時は日本でも商用系ISPが次々と産まれた頃で、トラフィック交換には学術系IXのNSPIXP-2がしばしば利用されていました。そうした中、増加の一途を辿るトラフィックへの対応、障害にも即時に対処できる24時間365日の運用が可能な、本格的な商用トラフィックを扱うIX事業者が求められていたのです。そこでインターネット総合研究所(IRI)と国際電信電話(KDD、現KDDI)が発起人となって大手ISPや通信事業者、メーカーに出資を募り、中立性の高い運営を趣旨としてJPIXが設立されました。その後、主要データセンターにPOPを設置しアクセス環境の改善に取り組み続け、現在では250社を超える事業者にご利用いただいています。

――2016年に代表取締役に就任されましたが、これまでのご経歴をお聞かせください。

山添氏 1985年にKDDに入社し国際通信業務の24時間運用の仕事からスタートして以後、様々な業務に携わりました。JPIXが設立された1997年前後にはKDDのグローバルマルチメディア推進室に所属、主にケーブルテレビインターネットの事業化を担当しました。その頃に設立されたケーブルテレビインターネット会社が名古屋でサービスを開始、さらに2001年にはJPIXのフランチャイジーとして名古屋JPIXの運営を始めたのですが、この間、JPIXとも様々な場面で関わるようになり、以後、関係を深めてきました。そうした経緯からJPIXのメンバーや社内体制もある程度知っていましたし、代表取締役社長のオファーをもらった時は、「いよいよJPIXの仕事ができる」と胸を躍らせたことを覚えています。

――代表取締役に就任後、特に注力されてきた取り組みについてお聞かせください。

山添氏 就任当初から、「単に従来のIX事業を維持・継続したままでは、いずれ先細りになる」という危機感を抱いており、次なる成長に向け様々な施策に取り組んできました。その一つが大阪IXの規模拡大です。2002年に開設されたJPIX大阪ですが、私が着任した当時、開設から15年近く経っていたにも関わらず利用企業は20社ほどで、トラフィック量も50Gbps程度に留まっていました。そこで2017年、エクイニクスの心斎橋OS1と京橋にあるKDDIのデータセンターに同時に2か所のPOPを設置、いわゆるGAFAや国内のコンテンツプロバイダとの接続に踏み切りました。結果、西日本の多くの地域ISPが利用してくれるようになり、4年ほどで85社以上のお客様を獲得、現在ではトラフィックも800Gbps以上に達しています。当時の大阪は成長が足踏み状態だったため、同時に2か所のデータセンターに進出することに反対の社員もいましたが、需要を睨み先行投資の必要性を社内に訴求していきました。

IX事業だけに留まらない多彩な付加サービス提供に注力

――近年、JPIXはIX事業に留まらず、事業者向けに様々なサービスを提供されていますね

山添氏 着任後、米国や香港、韓国など海外のIX事業者を訪問したところ、IXだけでなく、様々な付加サービスを提供しており、日本でも同様の取り組みが必須になると感じました。実はJPIXのお客様の中で一番多い業種はケーブルテレビ事業者で、全体の25%を超え、今も増えつづけています。しかし、全国各地のケーブルテレビ事業者ではインターネット技術者が枯渇しており、新サービスや新技術への対応、後進の育成など様々な面で課題を抱えています。その解決に向け、地域の小規模ISPが大手ISPと同様なコスト削減や品質向上が果たせるような新サービスを次々と開発してきました(図)。

図 IXサービスに留まらない、多彩な付加サービスを提供

――現在、特に注力されているサービスについてお聞かせください。

山添氏 現在、最も多く利用されているのがアカマイのShared Cacheサービスです。32万台以上のエッジキャッシュを有するアカマイは、全世界のISPのセンターにキャッシュサーバを設置していますが、トラフィック量の少ないISPは対象外となってしまうケースが多く、また、自社内にアカマイキャッシュが設置してあるISPでも、多くがSSLに対応できていません。そこで、JPIXにSSLにも対応するキャッシュサーバを設置、全国のISPが共同で利用可能な仕組みを提供しています。また、海外IX接続サービスも徐々に利用が増えています。地域の小規模ISPが海外のIXを利用できるようにするため、JPIXが国際専用回線や海外のデータセンターを契約、仲介することで実現しています。

このほか、機器販売の「光スイッチ」も人気上昇中です。24時間365日ノンストップのサービスを提供するために、本来は各センターに運用人員が必要になります。同製品はメンテナンスや障害発生時の自動切り替えや無瞬断切替を可能とするもので、無人のサブセンターにおける運用を効率化するものとして、高い評価を得ています。

――そうした付加サービスの提供によって、どのような成果がありましたか。

山添氏 営業担当者やサービス企画のメンバーがお客様の業務内容や仕組み、困りごとなどに真摯に傾聴し、それに応じたソリューション提案に取り組むようになっています。これは、会社がより良い方向に変化していく兆しだと捉えています。

――さらに顧客満足度を高める取り組みとして、定期的に技術セミナーやユーザー会も開催されていますね。

山添氏 技術セミナーはBGPプロトコルやIXを利用したことのない初心者が安心して運用できることを目的に、ピアリング交渉の仕方やルータの設定方法のほか、光ファイバーの扱い方やラック内、ラック間での配線方法など、プロから正しい知識を学べるカリキュラムを用意しています。私自身も年に1度講師になって、最新の業界動向に関するセミナーを行っています。近年では新型コロナウィルス感染拡大防止を考慮したオンラインによるハンズオンセミナーも開催、無料で行っていることも大きな特長です。地方ISPの技術者の中には目前の業務が最優先でセミナー参加が難しい方も少なくありませんが、有給休暇を取得してまでセミナーに参加いただく方もいるなど、頭の下がる思いです。

一方、ユーザー会も毎年7月と12月に東京で、10月に大阪で開催しており、毎回、参加者による活発なコミュニケーションが行われています。

――JPIXは今年で25周年を迎えますが、今後のインターネット業界の展望と、JPIXのこれからのビジョンについてお聞かせください。

山添氏 今後、東京・大阪以外の地域もトラフィックが増加し、地域系IXも増えていくと予想しています。地域活性化のためにもその運営を地元の事業者に担っていただければ、そうした事業者の支援に向け、今後もJPIXは、IXサービスはもとより多彩な付加価値サービス、人材育成カリキュラムなどを提供し、共に日本のインターネット業界を支え、発展させていきたいと考えています。

お問い合わせ先

日本インターネットエクスチェンジ株式会社 営業部

sales@jpix.ad.jp