クラウド&データセンター完全ガイド:DCC2P

バーテックのツールレスアイルコンテインメント――DCC2P Vol.10「改正省エネ法対策特別セミナー」講演レポート

 クラウド&データセンター完全ガイドでは、データセンター業界における新たな価値創造を目指すコミュニティ「DC Co-Creation Place(DCC2P)」を2020年に設立し、定期的な勉強会や交流会を企画・開催している。2023年3月17日にはその第10回目のイベントとして、「データセンター事業者の改正省エネ法対策」にフォーカスした特別セミナーを開催した。本稿では当日のプログラムの中から、バーテックの新井健一郎氏が、ツールレスで簡単にアイルコンテインメントできる「アイルカバー」を紹介したセッションの概要を紹介する。 text:柏木 恵子
バーテックの新井健一郎氏

ブラシがデータセンターの省エネに役立つ?!

 効率が悪い古いデータセンターであっても、まだしばらく使い続けなければならないことはよくある。あと数年のために、大がかりな空調工事はできない。そんな時には、手軽にアイルコンテインメントできるツールが役立つ。

 バーテックは大阪の工業用特殊ブラシのメーカーで、データセンター向け製品もある。例えば、ラックのブランクパネルにブラシを使うものがある。アイルコンテインメントしていても、ラックに空きがあると熱が逃げてしまうため、ブランクパネルは必須だ。

 ブラシは、ほこりなどは通さないが、空気の流れを完全に止める密閉ではない。つまり、熱は伝わらないようにしつつ、気圧が変化した場合の調圧効果がある。実は、密閉するコンテインメントの場合、ファンに負荷がかかるのでファンの故障リスクがあると言われている。さらに、ブラシならすき間のない状態でケーブルを通すことも可能だ。

後付けできるお手軽アイルコンテインメント

 改正省エネ法のベンチマーク制度ではPUE 1.4を目指すということになっているが、多くの事業者では以下のようなことが課題になっている。

・予算がない、費用がかさむ
・大がかりなことはしたくない
・複雑なものを導入して故障が起きるようでは困る
・どこに頼めばいいか分からない

 これに対して、「ツールレスで簡易なコンテインメントをして電気代を削減し、PUEを改善できる」というのが新井氏のメッセージだ。「アイルカバー」は、ラックとラックの間に渡す天井パネルと、通路の端につけるビニールドアで構成され、コールドアイルをコンテインメントする。

アイルカバー

 天井パネルは複数枚乗せるが、端がブラシになっていて、調圧効果がある。デモビデオでは脚立を使って女性が一人で設置していたので、重く見積もっても数kg程度だろう。ラックにマグネットで固定するので、地震で落ちることはない。たとえ何かの要因で落ちた場合でも、大した重さでない分、それが当たったとしても破壊力は小さい。

 出入り口は、取っ手つきのビニールドア。上部にポールを渡してサイドを両面テープで貼り付け、チェーンの重しで床につくように設置する。裾の部分がブラシになっているので、部屋自体のドアの開閉でカーテンが引っ張られてバタバタするようなこともない。

アイルカバーの利点と取り付け条件

 アイルカバーの主な特徴は以下の通りだ。

・工事不要でコストを最小限にできる
・サービスを止めずに導入できる
・設計不要な規格化された製品

 マグネットと両面テープで設置する単純な構造なので故障もないし、自分たちで設置できるのでどこに頼めばいいのか悩む必要もない。ただし、規格化された製品なので、以下のような取り付け条件がある。

取り付けられる条件

 4種類のベースキットがあるが、単品での販売も可能。大きなコストはかけられない、稼働中のサーバを止められないなど、古いデータセンターのアイルコンテインメントに困っている場合は、検討してみてはいかがだろうか。

 取付条件に合わない場合はバーテックまで問い合わせしてください。