サイボウズ Office 10が目指すもの
ユーザーの声を反映、より使いやすくなったサイボウズ Office 10
(2013/9/17 06:00)
10月10日にリリースされる「サイボウズ Office 10」では、「原点回帰」を目指して機能強化が行われた。クラウド版のユーザーの利用実態、調査によって得られたユーザーの声をもとに、新しい機能を加えることよりも、利用頻度の高い機能を、より使いやすくする改善が行われたのだ。
では具体的にどんな点が改善されたのか。改善によって使いやすさを増した機能を紹介する。
ユーザーの利用実態をふまえ機能強化
今回の機能強化は、利用者の実態に合わせて行われた。
「サイボウズ Officeにはたくさんのアプリケーションがあります。これらの中から、どのアプリケーションを使っているのかは利用する企業によって異なります。少数のアプリケーションだけ使う企業もあれば、たくさんのアプリケーションを使っている企業もあります。今回の機能強化では、スケジュールなど利用者が多いアプリケーションや、ユーザー調査を行って改善要望の多い機能の改善を最優先しました」とサイボウズ グローバル開発本部 プロダクトマーケティング部 プロダクトマネージャーの河合真知子氏は、今回のバージョンアップをこう振り返る。
クラウド版の利用実態を観測したことによって明らかになったのは、「スケジュール」機能を利用者の90%以上が利用していること。また、ユーザーからの要望で多かったのは、「Webメール」「カスタムアプリ」の機能向上だった。
ただし、サイボウズ Officeは歴史が長い製品だけに、「これまで通りの使い方を残してほしい」という要望もある。そこで、「一部機能については、従来通りの操作もできるようにしています」とあくまでもユーザーの声を配慮した機能向上となっていることが大きな特長となっている。
3ペインビューの採用など、全面的に強化されたWebメール
実は「Webメール」に関しては、サイボウズ内部でも「機能が弱すぎる」という声があがっていた。
「Webメールについて、通常のメーラーを使ってやり取りをするのに比べ、使い勝手の悪さ、機能の少なさなどが問題だという声があがっていました。実際には、ローカルのアプリケーションならば簡単に機能強化できても、Webアプリケーションとなると開発が容易ではない部分も多数あります。しかし今回はそこまで踏み込んで機能強化を実施し、一般のクライアントメーラーと比較しても、遜色(そんしょく)のない機能と使い勝手を実現することを目指しました」(河合氏)。
そのために、まず取り組んだのは、グループウェア本体のコード改修にまで踏み込んだ機能強化だ。通常の機能強化で、ここまで踏み込んで変更を行うケースは少ない。しかし今回は、将来を見据え、本体のコードにまで踏み込んで機能強化が行われた。その例が、内部データの文字コードをUTF-8に変更したことだ。
「メール機能では、UTF-8のメールを受信した場合に表示を可能にする対応をしていましたが、それでも、『送られてきたメールが文字化けしてしまって読めない』というクレームが多く寄せられていました。こうした声に対応するためにも、サイボウズ Office自体の文字コードをUTF-8へ変更することが必須だと考えたのです。こうした大きな変化は、今回のようなメジャーバージョンアップでないと行えないため、勇気を持って行いました。また、画像の入ったメールや書式付きのメールにも対応してほしいという要望が多かったので、HTMLメールへの対応を行っています」。
Webメールの見た目も大きく変わり、クライアントメーラーのUIとして採用されることが多い、縦3列の3ペインビューを採用した。中央ペインの一覧でクリックしたメールの内容が、画面を遷移させなくても右ペインに表示される。これまでのように、メール一覧画面、メール編集画面を行き来して作業する必要がなくなり、操作の手間が大幅に軽減されることになる。
また今回は、Webメールでは難しい、操作体系の変更も実現している。
「Outlookのようなローカルのメールクライアントであれば、ファイルのドラッグ&ドロップで操作をすることは当たり前です。ところがWebメールでは、こうした操作をするのが難しい。ただ、お客さまからすれば、やはり同じような操作感を望まれますので、メールの移動などの操作がドラッグ&ドロップで行えるようにしました」。
開発の難しさがあっても、ユーザーにとっての使いやすさを実現するための機能強化が進められたわけだ。
スケジュール登録をより行いやすく
利用者が多い「スケジュール」では、一度の登録で複数の予定をより設定しやすいような改善が行われている。
「わかりやすい例でいうと、『3カ月間、毎週月曜日に会議などの予定を入れたい』というケースはよくあると思います。ただ、月曜日は祝日で休みになることも多いので、ただ繰り返し登録をしただけでは、祝日にも登録されてしまいますよね。結局は、祝日に入った予定を取り消したり、あるいは火曜日に振り替えたり、といった調整をしないといけなくなります。これを解消するために、カレンダーを見ながら簡単に登録できるようにしました」。
スケジュール機能は、登録しないと活用が進まない機能であるため、どのユーザーでも簡単に直感的に登録できる、というところに気を配っているわけだ。
画面上で操作できるようになったカスタムアプリ
カスタムアプリについては、「作ったアプリケーションを、Excelのように、表の上から直接編集したい」という声がユーザーからあがっていた。これまでのカスタムアプリは、変更したいところをクリックして、編集画面に遷移しなければ編集できなかったからだ。しかし、それでは面倒だという声がサイボウズには寄せられていた。
「先ほどの、Webメールを画面上で編集操作することが難しいのと同様、カスタムアプリについても『画面上での編集操作を実現することは、技術的に簡単ではない』というのが本当のところです。しかし、ユーザーの皆さまからの要望が多いことをかんがみ、当社のWebアプリ作成データベース『kintone』の技術を参考にしつつ、編集画面に遷移しなくても、表の上から、直接編集ができるようにしました」。
ただし、新しい製品であるkintoneとは違い、サイボウズ Officeには従来のユーザーが多数存在する。表を直接編集できる機能に対しては、「直接編集ができてしまうと、誤って触ってしまい、誤編集が行われてしまう恐れがある。従来通り、表を直接編集できない方がいい」というユーザーの声もあった。そこで、直接編集の利用は設定により制御可能とした。ユーザー側で、編集画面に遷移しなくても編集できるのか、できないようにするのかを選べるようにした。
設定は、権限機能によって簡単に変更できる。チェックのついているユーザーのみが表上で編集できるようにすることで、誤操作を防ぐことができるわけだ。
外部利用者の参加権設定機能を強化
今回の機能改善では、立場の異なる多数の人間が利用する可能性があるという、グループウェアならではの機能が改善されている。
中小企業などでは、例えば税理士、ITコンサルタントなど“外部の人”とも情報を共有するシーンが多く見られる。そのためにグループウェアを利用したいというニーズに対しては、利用する機能を簡単に限定できるようにすることで対応した。
「外部の方の場合、機密情報などが書き込まれる可能性のある掲示板にはアクセスできないようにしつつ、スケジュールとWebメールだけを利用させたいといったニーズがありますので、今回はそれに対応しました。実は、これは外部の人だけではなく、社内でも利用できる機能です。例えば、カスタムアプリは特定部署だけで利用するという場合もあります。そうした場合には、設定によって利用者を制限できるのです」。
ユーザーごとに利用できるアプリケーションを絞り込む、といったことは、これまでも、アクセス権の設定などにより対応することは可能だった。しかし、設定が複雑になるため、IT管理者など専門知識を持った人でなければ行えなかったという。
「社内に常駐する派遣のスタッフにスケジュールとメール機能のみが利用できるようにしたいといった場合、設定を行うのはIT管理者ではなく、該当部署の責任者ということも多いようです。そこで、専門知識なしで設定が行えるような改善を行ったのです」。
特にこの機能は、クラウド版登場によって使い方が広がっていることにより、必要性が増してきた機能だ。サイボウズ Office 10の新機能は、ユーザー層の広がりによって生まれたものなのである。
このほか便利なところでは、仕事を始める際にログインし、そこから業務をスタートさせるというグループウェアの特性から、すぐに最新情報を一覧表示できる「未読一覧」機能を付加している。
サイボウズ Officeでは、例えば掲示板への投稿があった場合などに、各ユーザーへの通知を行うようになっている。これが1つ2つであれば、個別に確認しても大きな手間にはならないが、ログイン直後などで多数の通知がたまっている場合、1件1件、その通知の詳細情報へ画面遷移をして確認することを、面倒だと感じる利用者も多かった。
それに対して未読一覧機能では、ページを移動することなく、未読を一覧で確認し、すぐに行わなければならないタスクを処理することができる。これにより、ログインした直後の作業負荷が大幅に軽減されることになる。
未来につなげるために機能強化を選択
これまで紹介してきたことからわかるように、今回のバージョンアップは新しい機能を付加することよりも、従来からある機能の強化が中心だ。
ニュースなどで取り上げられる際には、新しい機能を付け加える方が派手で、アピールしやすい。「しかし、今回は新機能よりも、基本機能を強化することを選択しました。サイボウズ Officeは今後も長期的に利用される製品だからです」。
クラウド版登場で、コスト面など導入のハードルが下がったこともあり、サイボウズ Officeには毎月200ドメインの新規ユーザーが加わっている。クラウド版登場以前、グループウェア市場は飽和状態にあると思われてきたが、クラウド版サイボウズ Office登場でそれは変わった。これまでグループウェアを導入してこなかった業種での導入、小規模な企業が導入するようになったのだ。
「今後もより多くのお客さまに利用していただくために、すでに次に強化したい機能もいろいろあります」と河合氏は意欲を見せる。
では今後、サイボウズ Officeシリーズはどう進化していこうとしているのか。すでに始まっている、新たな機能強化がどう進んでいるのかについて、次回ご紹介しよう。