サイボウズ Office 10が目指すもの

サイボウズ Office 10で終わりではない~将来につながる「使いやすさ」を求め開発は続く

 サイボウズは10月10日に、「サイボウズ Office 10」を発売する。これまで紹介した通り、今回のサイボウズ Office 10では新しい機能を増やすことよりも「使いやすさ」を実現するための機能増強が行われた。

 しかし実は、バージョンアップによる機能の開発とは別に行われている作業がある。それは、「カスタムアプリ」機能のテンプレートや、画面デザインを変えることができるデザインギャラリーだ。特にデザインギャラリーは、グループウェア本来の機能とは異なるものだが、サイボウズでは「エンドユーザーの皆さんにとって使いやすさを実現するためには欠かせないもの」として強化を進めている。サイボウズがこうしたテンプレート提供に込めた思いとはどんなものだったのか。

サイボウズ Office 10の画面イメージ

より使いやすいグループウェアを目指し続く開発

サイボウズ グローバル開発本部 プロダクトマーケティング部 プロダクトマネージャーの河合真知子氏

 今回の新機能である、未読一覧からページ遷移することなく作業ができるようになったことや、Webメールが3ペインになったこと、UTF-8化による海外からのメールや、HTMLメール対応によるメールマガジンなど、多様なメールを読めるようになったこと、個人単位での機能のオン/オフができるようになったことなどは、すべて「使い勝手向上」を目指して実現された機能だ。

 そのサイボウズ Officeに搭載されたアプリケーションの中で、「もっと多くの人に利用してほしい」とサイボウズ グローバル開発本部 プロダクトマーケティング部 プロダクトマネージャーの河合真知子氏が強く訴えるのが「カスタムアプリ」だ。

 カスタムアプリは、業務に合わせたアプリケーションをユーザー自身が自分の手で作ることができる機能である。簡単なデータベース機能で、Excelのような表計算アプリケーションに比べると、グループウェアの特性であるみんなで共有することが容易であることに加え、利用方法が簡単で、柔軟に変更ができるというメリットを持つ。

 「現在の利用者数は、クラウド版利用者の35%程度にとどまっています。これを50%程度まで利用者の数を引き上げたいと思っています」と河合氏は話す。

 自分たちで業務アプリケーションを開発するというと、「ある程度IT知識が豊富な大企業」が利用者の中心だと思われるかもしれない。ところが、実際にはそれほど規模の大きくない企業が利用している例が多い。

 「導入事例を見ると、『少人数で必要な情報を共有することに取り組む。そのためにカスタムアプリを利用している』という企業が多いようです。業務アプリケーションを自作できるカスタムアプリとはいっても、複雑な業務のためのアプリケーションを作るための機能ではありません。情報が共有できていないことで起こる『悪い状況』を改善するのです」。

共有ToDoを作成しているカスタムアプリ機能活用の例
連絡帳機能として活用している例

 実際にカスタムアプリを導入し成功した事例としては、「共有タスク管理」、「クレーム管理」、「商談進捗管理」、「社内Q&A」、「レンタル機器管理」、「契約書管理」、「見積もり依頼」、「障害対応以来」などがある。社内で情報共有が必要な内容ばかりだ。

 では、導入を成功させている企業には、どんな特長があるのだろうか。

 「導入目的が明確な会社では上手にカスタムアプリを活用されています。なんとなく会社の中でうまく情報共有できていない。なんとかならないかといった漠然とした状況で導入されてもうまくいかないようです」

 現場リーダーが明確な業務改善意識を持ち、現状を改善する目的でカスタムアプリを導入することで成功に至る企業が多いようだ。

カスタムアプリ機能を利用すればノンプラミングでアプリ作成できるので、中小企業でも利用しやすい

カスタムアプリ用テンプレートの開発は独立して行う

さまざまな用途向けにカスタムアプリのテンプレートが用意されている

 サイボウズ側でも、企業がうまくカスタムアプリを使うためのサポートを行っている。利用者の多い代表的なアプリについては、「テンプレート」として提供しているのだ。テンプレートを利用すれば、ゼロからの開発ではなく、欲しいアプリケーションを作り上げることができる。

 サイトを見ると、テンプレートの中でも人気のものに星をつけて紹介し、デモによる紹介や設定や使い方のポイントについても文章で紹介するなど、利用前の敷居をできるだけ下げる工夫を行っている。

 特にテンプレートはカスタムアプリ利用のための敷居を下げるために重要な役割を担っている。

 「サイボウズ Office 10がリリースされてテンプレートの数が増えた、と思われる方がいるかもしれません。しかし、実はそれは違うんですよ。テンプレート増強はOffice 9時代から行われていたのです。Office10の開発とは全く別に、毎月2本のペースで新しいテンプレートが作られているのです」。

 すでに紹介している通り、サイボウズ Officeはクラウド版登場以降、着実に利用者が増加している。現在でも毎月200アカウントのペースで新規導入が続いているのだ。

 「利用者の幅が広がっているため、着実に新しいテンプレートが求められているのです。そこでサイボウズ Office 9時代から、テンプレート開発は製品開発とは別に進められることが決まりました。サイボウズ Officeの開発と一緒に開発していたのでは、バージョンアップのタイミングなど製品開発が優先され、テンプレート開発が後回しにされる可能性があります。別々の開発体制とすることで、テンプレートの数を増やすことに支障がない体制を作り上げたのです」。

 テンプレートの充実は、開発部門ではなく、ユーザーの声を聞くことが多いマーケティング部門主導で決定した。ユーザーからのリクエストに迅速に応える体制を目指し、バージョンアップとは全く関係なく、テンプレートは月に2本のペースで増加している。以前は自分たちの業務に必要なテンプレートがなかった場合でも、新たにテンプレートが作られている可能性がある。

 「テンプレート紹介のページを見て、最新情報を確認してほしいと思います」と河合氏は話す。

利用者から人気のデザインテンプレートもマーケティング部門主導で開発

デザインギャラリーから、最新のデザインを入手することができる

 カスタムアプリのテンプレート同様、通常の開発とは全く別に開発されているものがもう一つある。それがデザインギャラリーだ。これは企業単位ではなく、利用するユーザー自身が画面デザインを変えることができる機能である。当初はバックグラウンドを自分の好きな色に変更できる程度だったが、現在は約70種類のテンプレートが用意されている。

 このテンプレートも、カスタムアプリ同様マーケティング部門主導で、年に4回、季節に合わせたデザインが配信される。例えばクリスマスシーズンにはサンタや冬をイメージしたデザインが配信される。

 「デザインの変更は、グループウェア本来の機能に影響するものではありません。しかし、グループウェアは毎日使うものだけに、ユーザーからの反応が最も多い機能でもあります」。

 以前、サイボウズ Officeのバージョンアップにより、それまで利用していたデザインが利用できなくなったことがあったが、その時には各企業の管理者のもとに社内のエンドユーザーから一斉にクレームが入ったという。

 これほど、エンドユーザーからの反応が即座にある機能はあまりない。そうした経験を経てサイボウズ側でも、「グループウェア本来の機能とは違うものの、決しておろそかにしてはいけない機能」という認識が定着した。

 「エンドユーザーの反応が大きいのは、毎日利用するグループウェアならではのことだと思います。毎日見る画面だからこそ、本来の機能とは違うデザインに対して反響があるのでしょう。季節に応じたデザインを利用するというのも、SNSのデザインを気分に応じて換えるのと同じような感覚があるからではないでしょうか」

 エンドユーザーの要望に応えるためにも、デザインテンプレートは今後も新しいデザインが提供されていく。

 「サイボウズ Officeは10になって終わりではありません。今後も続いていく製品です。使いやすさを追求すること、そして今回紹介したカスタムアプリのテンプレート、デザインギャラリーのテンプレートの充実は、使っていただいている方の期待に応えるために必要なものです。使いやすさの追求、そして機能強化は今後も止まらずに続いていきます」と河合氏は強調する。

 サイボウズ Office 10の機能強化は、新たに歴史を重ねていくために欠かせない一歩となった。そして、「次のバージョンでは、より使いやすい製品としていきたいと思っています」と河合氏をはじめ、サイボウズのスタッフは、次のバージョンをよりよいものにするために、構想を練り始めている。

三浦 優子