特別企画

大塚商会 実践ソリューションフェア2014レポート~当たり前のものにも新しい価値があることをアピール

 2月5日から7日まで、大塚商会のプライベートフェア「実践ソリューションフェア2014 東京」が開催された。例年開催されている展示会だが、今年は、サブタイトルが「ITでコストを見直し、元気をおとどけ。」となっていたことからもわかるように、コスト削減と適切な投資につながるソリューション、中小企業を元気にするソリューションが展示された。

 特徴的だったのは、展示会の定番となっているベンダーごとのブースがなくなったことだ。ベンダー別ブースが置かれていた場所には、セキュリティであれば、「内部の脅威から情報を守る!」、「外部の脅威から情報を守る!」といった具合にテーマが表示され、そこに適した製品が一覧で展示される形式となった。

 こうした変化から、同社が向かおうとしている姿を考えてみた。

「実践ソリューションフェア2014 東京」の会場

最新技術と結びつくコスト見直し

 今回、会場の中央に設けられたテーマステージでは、「見つけよう!オフィスが元気になる秘けつ」というタイトルでコミュニケーション、ネットワーク、LED照明の3つが紹介された。電話、メール、複合機、照明はオフィス内では当たり前のものだが、新しい価値を生むものへの見直しをすることを促している。

さまざまなソリューションが紹介されたテーマステージ

 コミュニケーションは、電話による音声通話、メールによるデータ通信を統合するユニファイドコミュニケーションを提案。外資系企業や大手企業では導入例が増えてきたユニファイドコミュニケーションだが、大塚商会では、中小企業でも利用できるソリューションを提供し始めているため、規模の大小にかかわらず利用しやすくなった。

 ネットワーク紹介のシーンでは、複合機のネットワーク機能を活用し、社内にあるどの複合機からもプリントアウトできる「ロケーションフリー印刷」を実演。IDカード認証による出力者確認と組み合わせ、待ち時間を減らしながらセキュリティや省資源にも配慮する使い方を紹介していた。オフィス内ではコピー機やプリンタという印象が強い複合機だが、現在の製品はネットワークと接続することで、文書サーバーとして利用することも可能。ネットワークを介して複合機から必要な文書を取り出すことで、働き方が大きく変わることを提案する。

スマートデバイスやPCを活用したユニファイドコミュニケーションを紹介
複合機活用の1シーンとして、ロケーションフリー印刷が紹介された

 LED照明は、ここ数年、大塚商会が注力している商材。大塚商会自身がLED照明を導入し、企業がLEDを導入することで実現する省電力効果をアピールしている。会場には、電力削減効果を発表する事例集を集めた小冊子が置かれ、企業のLED導入効果をアピールした。

 さらに今回は、工場や倉庫、店舗にLED照明を導入するメリットを具体的に紹介している。例えば、照明のスイッチが手に届きにくい場所にある倉庫などの場合は、無線スイッチを同時に導入することで利便性が向上することを実演。LED照明、センサー、無線スイッチによる導入で、どれだけ電力が削減されることになるのかを、具体的な数字を示しつつ、寸劇でアピールした。

大塚商会自身、LED照明の導入によってコストの削減と省エネ化を達成している
会場内では、さまざまなLED照明が実際に展示されていた。これはそのうち、工場や倉庫などで利用される投光器タイプ
テーマステージとは別に、節電とBEMSを専門に扱うステージも用意されていた
スマートコンセント、無線スイッチ、人感センサーなどを中心としたPlugwiseソリューション
具体的な削減効果を、数字を挙げて示していた
LED照明とあわせて無線スイッチを導入すれば、より利便性が向上する

 こうした展示は、オフィスで“当たり前になっている”ものも、新しい技術によって、“新たな価値を生むもの”へと生まれ変わる可能性があることを示唆している。特に、ここ数年の技術進化と、それを活用した商品が登場していることから、以前は導入が難しいと思っていた商品でも、導入できる可能性が出てきたことが大きいだろう。

 コスト的にも、これまでより低価格となっていることを考えると、すでに利用している機器も含めて、新しい製品とはどんなものがあるのかを、あらためて検討する時期にきているのではないか、と考えさせる展示が多かった。

スマートフォン、無線LANコーナーも初めて登場

 実践ソリューションフェアは、大塚商会が毎年開催しているプライベートフェアだが、2014年の会場は例年にはない展示がいくつもあった。会場に入ってすぐのところに設けられた“スマートフォンコーナー”もその一つだ。スマートフォンのビジネス利用は決して新しいものではないが、幅広い企業で利用できる環境が整ったことが、こうした展示コーナーが設けられた理由ではないかと感じさせた。

 無線LANを紹介するコーナーが広く取られていたのも、実は新しい動きだ。個人ベースだと、家庭内Wi-Fiや公衆無線LANはすでに当たり前のものとなっているが、“対企業”では、まだまだ無線ではなく有線のLANが主流だからだ。

 しかし、スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの利用機会が増えてきた現在では、社内でも無線LANを本格的に利用する必要性が生まれた。それが、今回の展示会会場に無線LANコーナーが設けられた理由とみられる。

 企業内のインフラや利用する機器も、ワークスタイルの変化によって、考え直すべき時期に来ていることを示す、大きな一例と言えるだろう。

スマートフォンやタブレット端末を紹介する「スマートフォンコーナー」が設けられ、端末も多数展示されていた
無線LANの相談コーナーなどが設けられていたのも、こうしたスマートデバイスの活用が本格化したことが背景にあるのだろう

メーカー別ではなくキーワードによる目的別展示へ

 そして、このような変化に対して、メーカー別ブースではなく、「新しいワークスタイルで営業力アップ」「成果につながるクライアント活用」「Webサービスで今すぐはじめる」といったキーワードで展示していたことが今回の大きな特徴となった。

 キーワードによる展示は、出展するメーカーからすれば、来場者にメーカー名を覚えてもらうことが難しくなる、といった点で歓迎すべきものではないかもしれない。しかし、来場するユーザーの立場で考えれば、メーカー別のブースを見ても、「メーカー名、製品名を見ても、自分が利用したいものなのか、即結びつけることは難しい」と感じるだろう。

 そこを狙い今回は、あえてメーカー名ではなく、スマートデバイス、ユニファイドコミュニケーション、クラウド(大塚商会ではWebサービスと呼んでいる)などを中心に、前述のようなキーワードによる目的別展示へと変更したようだ。

 新しい展示方法だけに、来場者がどう感じたか、意見を聞く必要はあるだろうが、ITの展示会のあり方に一石を投じたことは間違いないのではないか。

1テーマ1台、1社1台といった形でPCが置かれ、展示コーナーが設置されていた従来のスタイルではなく、キーワードごとに展示コーナーが設けられている。こちらは、「成果につながるクライアント活用」コーナー
展示ではシステムごとのベンダー名、製品名などの掲示を省く代わりに、こういったパネルでまとめて製品を紹介していた

「街の電器屋さん」に求められる高い技術

 今年ならではの展示といえるのが、大きなスペースが設けられたWindows XPからの切り替え相談コーナーだ。オレンジのジャケットを着た相談員が常駐し、Windows XPにまつわる、あらゆる相談を受け付けるコーナーである。

 会場のオープン早々から、相談コーナーに出向いて相談をする人の姿があった。サポート終了まで時間は残り少なくなっているが、いまだにWindows XPの切り替えに悩む人が多いことを示している。

Windows XPからの移行など、企業の課題を解決するための「ITなんでも相談コーナー」も設けられていたが、開場後すぐの早い時間から相談が寄せられていた
大塚商会の大塚裕司社長
法被でこそないが、そろいのジャケットに身を包んで相談を受ける姿は、“街の電器屋さん”をほうふつとさせる

 かねてより大塚裕司社長は、「街の電器屋さんのような存在になる」ことを掲げている。このWindows XPコーナーはまさに街の電器屋さんを具現化したもので、オレンジ色のジャケットに身を包んだ相談員の姿は、かつての電機メーカーのイベントをほうふつとさせる。

 しかし、大塚社長が言及する、“ITの世界で街の電器屋さんのような存在となる”ことは、実は容易なことではない。

 大塚商会の主な顧客である中小企業は、専任のIT担当者を持たないことがほとんどだ。しかし、現在のようにさまざまなIT機器、サービスが身の回りにあふれる時代となると、利用者自身は意識しないまま、それらを使っているといったケースも出てくる。

 それをサポートするのが、ITの世界での“街の電器屋さん”ということになるが、Windows XPからの切り替え相談一つとってみても、現在まで残っているものは、切り替えがしたくとも、技術的に難しいためにそれが進んでいないといったケースも多いのだ。

 現在、システムインテグレーター、サービスプロバイダーのビジネスは大きな曲がり角に差し掛かっているといわれる。クラウドの台頭により、従来のようにサーバーが売れる時代ではなく、システムインテグレーターは顧客の問題を解決する、まさに街の電器屋さんのような、顧客をサポートする存在でいることが求められる。

 だが、技術的な高度化、複雑化が進む中、顧客を支える“街の電器屋さん”でいることは、決して簡単なことではない。もちろん、求められる要求も顧客ごとに異なる。そうした中で、顧客を理解し、顧客を支えるパートナーでいることができるのか。

 以前の街の電器屋さんは、現在ほど家電製品が家庭になじんでいない中で、家電に対するトラブルを解決する頼もしい存在であった。

 大塚商会が、大塚社長が言及するような“ITの世界での街の電器屋さん”になれるかどうかは、確実なところはまだわからない。だが、メーカー別ブースを廃したことなどからも、2014年の展示会場では、そのための決意を感じることができた。これからも、同社の取り組みに注視していきたい。

三浦 優子