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NTTデータ・スマートソーシングとコンカーが提携、出張経費精算のBPOサービスを提供

Concur Travel&Expenseの旅費精算プロセスを一括提供

 株式会社コンカーは17日、株式会社NTTデータおよび株式会社NTTデータ・スマートソーシングとの業務提携を発表した。出張経費精算にかかわるBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービス事業を共同で推進する。

左から、NTTデータの笹田和宏執行役員、コンカーの三村真宗社長、NTTデータ・スマートソーシングの和田泰之社長

 NTTデータ・スマートソーシングは、日本初のConcur BPOパートナーとなり、コンカーが提供するクラウド型出張・経費精算システム「Concur Travel&Expense」を活用したBPOサービスを、2015年9月から提供。出張旅費などの経費精算に関して、事前の審査から、経費発生後の経費登録、支払い審査までを一括して請け負う。

 これまでコンカーでは、Concur Travel&Expenseを100%直販で行ってきたが、NTTデータ・スマートソーシングのBPOサービスを通じて、初めて間接販売に乗り出すことになる。「サービスを提供する企業を明確にしてライセンスを提供していくものであり、幅広く間接販売を加速するものではない、限定的な仕組み。Concur BPOパートナーの契約も、当面は、NTTデータ・スマートソーシングだけとなる」(コンカー・三村真宗社長)という。

 コンカーは、米Concur Technologies(以下、)の日本法人で、同社の主力製品である「Concur Travel&Expense」は、大手企業を中心に、全世界150カ国、3万社、2700万人のユーザーが利用。フォーチュン500の61%以上の企業が採用しているという。処理ボリュームは、年間4兆円に達しており、米国Travel&Expense市場の10%を占めている。日本でも、ファーストリテイリング、三菱重工、双日など、400社以上が利用しているとのこと。

 昨年、Concur本社は独SAPに買収されたが、組織および製品、ブランドは独立した体制となっている。この買収は9000億円規模になっており、「IT業界におけるこれまでの買収事案では第9位の買収金額。米Oracleによる米Sun Microsystemsの買収金額を12%上回っていた」という。

 一方、NTTデータ・スマートソーシングは、国内外の複数のBPO拠点を活用し、NTTデータグループの間接部門や一般企業など200社を対象に、2009年からBPOサービスを提供してきた。

 今回の提携によって、NTTデータ・スマートソーシングでは、Concur Travel&Expenseをベースに、「コンサルティングサービス」「システム導入サービス」「業務BPOサービス」「サポートサービス」の4つのサービスを提供する。

 コンサルティングサービスでは、企業の社内規定や、ガバナンス、コンプライアンスに順守させ、発生費用の観点から見直す「制度コンサルティングサービス」、経費支出傾向の分析、他企業間接費データなどのベンチマークを用いて間接費を可視化し、それらをもとにオペレーション変更の提案、コスト削減提案を行う「間接費可視化サービス」、経費履歴データの分析を行い課題に経費利用や不正利用の疑いを検出する「不正検出サービス」、各種手配状況を把握し、航空会社やホテルの集約、出張規定の厳格化を通じて、費用を最適化する「ビジネストラベルマネージメントサービス」をラインアップ。

 システム導入サービスでは、顧客企業の経費規定にあわせたシステム設定支援を行う「コンカー導入支援サービス」を提供する。また業務BPOサービスでは、請求書や領収書をもとにシステムへのデータ入力を行う「請求書/領収書入力代行」、システムチェックをクリアした申請に対する規定違反チェックおよび申請内容の審査を行う「審査・承認サービス」を用意した。

 最後のサポートサービスでは、社内規定の変更などに応じて、Concur Travel&Expenseの設定変更サービスを行う「コンカー運用サービス」に加え、Concur Travel&Expenseに関する社員からの各種問い合わせに対応する「ユーザーヘルプデスク」も提供する。

NTTデータ・スマートソーシングにより提供されるBPOサービス

 コンカーの三村真宗社長は、「経費精算プロセスは、従業員にとっては作業負担が大きく、一方で、ガバナンスを維持し、経費の正当性を検証するために、経理担当者が労働集約的な作業を行っているのが実態。今回の提携の発端は、BPOサービスとして提供することで、労働集約的な作業を削減できるのではないかと考えたことがある」と、提携の経緯を説明。

 さらに、「経費情報の分析も提供することで、ガバナンスを強化しつつ、従業員の生産性を担保し、経費の最適化につながる。また、1万人の企業では、約10人で経費担当処理作業を行うケースが多く、Concur Travel&Expenseを導入するだけで、約6割の経費が下がる。だが、BPOサービスとすることで人件費を費用化できるため、費用の総額を抑え、社内で自前で人員を持つよりもコストを引き下げることができる。Concur Travel&Expenseという仕組みを提供するだけでなく、サービスとして提供することで、経費精算プロセスにおける課題解決につながる」などと効果を説明した。

 また、「間接費の業務改善への関心度が高まっており、さらにBPOサービスの市場も拡大している。国内企業に向けて新たな価値を生み出せると考えており、出張経費管理分野で新たなクラウド型BPOの提供を通じて、間接費の最適化に貢献したい」とも話している。

スマホからも利用できるConcur Travel&Expenseの画面

 コンカーとNTTデータ・スマートソーシングは、同BPOサービスにおいて、営業およびマーケティング活動で協業を進め、初年度に20社、今後3年間で100社の受注を計画。20億円の売上高を目指すという。

 「まずは、両社が持つ合計600社の顧客基盤をもとにクロスセルで展開していく。当初3年間は1000人以上の企業、4年目以降は1000人未満の企業をターゲットとする。さらに、将来的には、グローバル展開を予定しており、日本・石巻、中国・無錫、インドのBPOセンターを活用。石巻、無錫では、このサービス専任担当者を育成する」(コンカーの三村社長)。

コンカーとNTTデータ・スマートソーシングで共同アプローチを行っていく

 一方、NTTデータの笹田和宏執行役員は、「今回のコンカーとの提携により、NTTデータが取り組むソリューション型BPO事業を加速することができる。Concur Travel&Expenseは、ユニークなサービスであり、多くの企業に採用してもらえるものになる。100社という目標は控えめな数字であるが、状況をみて、リソース投入などを行い、ビジネスにドライブをかけていくことも想定している」と期待を寄せた。

 NTTデータ・スマートソーシングの和田泰之社長は、「このサービスにおいて、全世界6500人のBPOセンターの要員を活用する。国内Travel&Expense市場は約3兆円、そのうち旅費交通費が1兆円の市場があるといわれており、その市場に参入できること、NTTデータグループの約1万人の社員の出張旅費および近接交通費の精算業務を、中国・無錫のBPOセンターにおいて12人で運用。コストを3割削減したという実績も生かせる。また、SAPの傘下に入った企業と組める点や、Concur Travel&Expenseを導入することで、スマートな経費精算が可能になるという点にも魅力を感じた」とコメント。「今後、カード会社や旅行会社との連携を図ることで、さらに利便性を高めたい」などとした。

NTTデータ 執行役員 笹田和宏氏
NTTデータ・スマートソーシング 代表取締役社長の和田泰之氏

大河原 克行