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「実践した自社の働き方改革を社外にも積極的に提案」――、ヴイエムウェアのロバートソン社長

 ヴイエムウェア株式会社は1日、同社のビジョンや事業戦略に関する説明会を開催した。2015年3月にジョン・ロバートソン氏が同社の代表取締役社長に就任してちょうど3年が経過したこともあり、説明会では同氏がその間に起きた変化などを中心に振り返った。

ヴイエムウェア 代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏

 説明会の冒頭で、ロバートソン氏はまずVMware Inc.としてのこれまでの業績について触れ、2016年度の売上高が70億9000万ドルだったこと、社員が世界全体で2万人存在すること、顧客が50万社、パートナーが7万5000社に達している述べた。

 これは、同社が順調に事業ドメインを拡大してきたことにある。3年前にVMwareは、コンピューティングの仮想化を中心とした事業を展開していたが、これからはネットワーク仮想化や、Software-Defined Storage(ソフトウェア定義型ストレージ)、ハイブリッドクラウド、セキュリティ、デスクトップ仮想化などにも注力し、大胆なIT革新を進めると宣言。

 その結果、「当時コンピューティング仮想化分野はわれわれの売上の約7割を占めていたが、他分野にもビジネスを拡大した結果、今ではコンピューティング仮想化の売上は全体の約4割になっている」とロバートソン氏は説明。日本法人でも事業分野の拡大を進め、「ビジネスは約2倍に、従業員も約2倍になった」としている。

VMware Inc.の実績

 日本法人としては、この3年で企業文化の変革にも注力した。ハイブリッドな人材を取り入れることで、多種多様なアイデアが集まり、イノベーションにつながるという考えだ。これは、VMwareがグローバル全体で取り組んでいるダイバーシティやインクルージョンを推進する「VMinclusion」というイニシアティブとも通じるもの。ただ、ロバートソン氏の社長就任時には日本法人で人材の多様化があまり進んでおらず、「当時の日本法人には私以外に外国人がほとんどいなかった」(ロバートソン氏)という。

 それが今では、外国人の採用も進んでいるほか、女性も「この3年で100%以上増加した」とロバートソン氏。

 また、新卒の学生も積極的に採用し、ここ数年、毎年10人以上の新卒社員を採用しているという。昨年には、IT分野に精通していない学生にもITやVMware製品について学んでもらおうと、「University Challenge」というインターンシップ(就業体験)プログラムを提供。こうして若い人材と接する機会を増やしたことで、「社内の平均年齢も下がり、会社が元気になってきている」とロバートソン氏は述べた。

 また、「モバイル世代の若者の考えは、PCを中心とした旧世代の人材の考えと大きく異なる。世代の違う人材が一緒になることで、新たなアイデアにもつながっている」としている。

3年間の取り組みについて

 ヴイエムウェア社内での働き方改革も進んだ。ロバートソン氏が見た社長就任時の日本法人は、「会議が多く、皆が夜遅くまで働いている。次世代の製品を提供しているにも関わらず、社内は旧世代の働き方をしている」というもの。営業担当者も、顧客先を回る合間に少しでも時間があれば社内に戻っていた。

 「日本は労働に対する倫理感が高いが、会社にいることが必ずしもいいことではない。どこでも働ける技術を提供しているのだから、客先に直行し、客先から直帰してもいい。『Work at Anywhere』を推進しよう」とロバートソン氏は提案。その結果、社員が会社にいる時間は減った一方で、業務効率は高まったという。

 「適切なワークライフバランスを保つべき。会社に長くいることよりも、パートナーや顧客と会う時間を増やすこと、そして何より家族との時間を増やすことが重要だ。幸福度の高い従業員は、顧客にも満足度の高いサービスを提供できるのだから」とロバートソン氏。こうして実践した自社の働き方改革を、技術面のみならず文化や法制度も踏まえた上で顧客にも提案しているという。

デジタルトランスフォーメーションを推進

 今後の事業戦略については、「デジタルトランスフォーメーションを推進する」とロバートソン氏。中でも、データセンターとアプリケーションのモダナイゼーション(最新化)を進めることと、デスクトップとモバイルを連携させ、デジタルアプリケーションにどこからでもアクセスできるようにするという。「これらをすべてセキュアな環境で提供することが、特に日本では重要だ」とロバートソン氏は述べている。

今後注力するのは「デジタルトランスフォーメーション」

 このほか、引き続きマルチクラウド事業も推進するほか、モノのインターネット(IoT)および社会インフラにも注力するとしている。特にIoTについては、「日本は製造業が強いこともあり、この分野では日本が先行している」とし、これまで以上に日本企業との連携を強化していくことを示唆した。「日本企業とのコイノベーション(共同イノベーション)が今後のキーになる。新たな発表に期待してほしい」(ロバートソン氏)。

 このように、さまざまな分野で新たな取り組みを進めてはいるが、「いい意味で根底にあるVMwareのビジョンは変わっていない」とロバートソン氏。それは、「Any Device、Any Application、Any Cloud」と、さまざまな製品を通じてあらゆる環境をサポートする同社の姿勢だ。

 「これは大きなテーマとして今後も続く」とロバートソン氏は述べ、「VMwareの技術で日本の働き方改革も支援できる。日本社会そのものを改善できるよう貢献していきたい」とした。

変わらないVMwareの根底にあるビジョン