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EMC、対応環境を強化した「ViPR 2.0」やx86サーバーをストレージ化する「ScaleIO」を提供
Software Defined Storage製品を大幅に強化
(2014/6/18 14:38)
EMCジャパン株式会社は18日、Software Defined Storage(SDS:ソフトウェアで定義するストレージ)を実現するための製品群を発表した。ストレージ統合・管理ソフトの新版「ViPR(ヴァイパー) 2.0」や、x86サーバーのコモディティハードウェアを利用して大規模分散ストレージ環境を構築できる「EMC ScaleIO」、これらを利用したストレージアプライアンス「Elastic Cloud Storage Appliance」を順次提供開始する。
サポートプラットフォームを拡大したViPR 2.0
これらのうちViPRは、企業内にさまざま存在するストレージの管理を統合するための管理ソフト製品。自社製品だけでなく、マルチベンダーのさまざまなストレージインフラを一元管理可能なコントローラ「ViPR Controller」と、異種ストレージの橋渡しを行うゲートウェイソフト「ViPR Data Services」の2つから構成され、いずれもVMwareの仮想アプライアンスとして提供されている。
ViPR Controllerは、種類の異なるストレージを性能要件などに応じて仮想化・プール化し、同一のインターフェイスから一元管理できるので、プロビジョニングやデータ管理が容易に行えるようになる。この性格上、対応するストレージが多ければ多いほどユーザーにとっての利便性が向上することになるが、現在は「VMAX」「VNX」「Isilon」といった自社製品と、NetApp FASに対応している。
今回のViPR 2.0では、日立(HDS)のストレージを新たにサポートしたほか、Vblockとの連携に対応。さらに、OpenStackにおいてブロックストレージの管理を行う「Cinder(OpenStack Block Storage)」経由で、IBM、HP、デル(EqualLogic)、Oracle、NetAppといったベンダーのストレージとも連携可能になっている。
一方のViPR Data Servicesでは、ジオレプリケーション/ジオディストリビューションにより、マルチサイトでの運用が可能になっている。EMCジャパン システムズエンジニアリング本部 シニアシステムズエンジニアの平原一雄氏は、「ネームスペースをすべてのサイト間で共有し、データの所在を気にせずにデータアクセスが可能。サイトが落ちた時でもシームレスなフェイルオーバーアクセスが可能なほか、アクセス傾向によってオブジェクトを最適配置するので、ストレージアクセスとネットワークの最適化、冗長化を両立できる」と、この価値を説明した。
また、アーカイブストレージ「EMC Centera」のAPIをサポートしたことで、Centeraのソフトウェアの変更をすることなく、ViPRに対応しているすべてのプラットフォーム上で、Centeraの機能とコンプライアンス機能が利用可能になったとのこと。
このほか、後述するScaleIOを基板としたViPR Block Services機能により、コモディティサーバーをベースとしたブロックストレージ機能を提供する。なおサーバー機器は、HPのモジュラーサーバー「HP ProLiant SL4540 Gen8」をまずサポートしている。
ViPR 2.0の提供開始は7月1日で、価格は個別見積もり。
柔軟な伸縮性とスケーラビリティを備えたScaleIO
新たに発表されたScaleIOは、コモディティのx86サーバーに搭載されたローカルストレージを共有ブロックストレージとして集約するソフト。もともとは米EMCが2013年に買収した米ScaleIOの技術を利用しており、HDD、SSD、PCIeフラッシュカードといった形態を問わず、仮想ストレージプールを作成して共有することができる。
1000ノードを超える大規模構成のスケールアウトが可能で、サーバーを追加・削除するとデータを自動的に分散・再配置するほか、すべてのノードにおいてI/O処理を並列に行うため、複雑なデータ配置設計が不要になる点もメリット。ストレージとコンピュートの両リソースを、コモディティサーバーという単一レイヤに統合するので、データセンターのアーキテクチャも簡素化するという。
用途としては、仮想サーバー基盤やデータベース、検証・開発環境などを想定しているとのこと。コンセプトとしては、EMC子会社であるVMwareの「VMware Virtual SAN」に似ているが、買収前にScaleIOのCEOを務めていた、米EMC アドバンスド ソフトウェア部門 副社長兼ジェネラル マネージャー SDS/ScaleIOのBoaz Palgi氏は、「Virtual SANはVMware ESXiに限定され、かつ規模も限定されているのに対し、ScaleIOは数千台まで拡張でき、物理・仮想のさまざまな環境に対応する違いがある」と述べ、両者は直接バッティングせず、住み分けられるとした。
なおScaleIOの最小価格は119万7000円(税別)からで、6月18日より提供開始となる。
迅速に提供可能なアプライアンス製品
Elastic Cloud Storage Applianceは、ViPR Data ServicesとScaleIO、サーバーハードウェアなどを統合して提供するアプライアンス製品。モジュラー型のスケールアウトソリューションであり、1ラックでは最大2.9PB、クラスタ化によりEB(エクサバイト)規模にまで拡張できるという。
機能面では、ユーザー自身がViPRとScaleIOを利用すれば同じことは可能だが、「アプライアンスとしてパッケージングしており、OSなどのパッチメンテナンスも含めて、EMCが一貫してサポートを提供することが大きな違い。迅速な展開が求められる場合に、システムとして組まれていて確実に動く製品を利用できるほか、管理コストの増大といった問題に対応できる点が強みだろう」(平原氏)とした。
ラインアップには、オブジェクトストレージとHDFSのアクセスに特化した3モデルと、これらに加えてブロックストレージの機能を利用できる2モデルを用意している。
価格は個別見積もりで、提供開始は2014年第4四半期を予定する。