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NECと日本オラクルがクラウド領域で提携、「30年にわたる協業の成果を生かす」

Oracle Cloudを国内のNECデータセンターから提供、保守や人員育成も強化

 日本電気株式会社(以下、NEC)と日本オラクル株式会社は14日、クラウド事業において戦略的提携すると発表した。オラクルのクラウドサービス「Oracle Cloud」をNECの国内データセンターから提供するほか、Oracle CloudとNECの業務ソリューションとの連携を実施する。

30年にわたる協業をクラウドへ拡大

 NECでは、年間3000件のオラクル関連のシステム案件を手掛けているほか、グループ全体で4000名のオラクル技術者を抱えており、オラクルの保守契約システム数は1万5000にもおよぶなど、30年にわたって緊密な協業関係を築いてきた歴史がある。

 今回はさらに、ICTプロダクトは、ビジネス観点やシステム観点において、用途に合わせた利用形態が多様化しているほか、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドのニーズが拡大していることなどを受け、協業をクラウド領域に拡大した。

 NECの執行役員である橋谷直樹氏は、今回の協業の理由を「システム構築が資産を持つ形から利用型へ変化する中で、オラクル製品を利用しているお客さまに対して、NECのSI力、サポート力により、クラウドの選択肢を増やし、柔軟かつ最適なシステム構築のニーズに応えるため」と説明する。

NECとオラクルの協業実績
NECの執行役員、橋谷直樹氏

 一方のオラクル側では、日本オラクル 執行役副社長 クラウドテクノロジー事業統括の石積尚幸氏が、「NECのお客さまとして多くの企業が(オラクル製品を用いた)システムを構築してきており、そのクラウド移行を支援したい。Oracle Databaseのような既存のシステム領域を一番安心・安全にお使いいただけるのは当社のクラウドで、移行によってTCO削減も可能になる。それを原資として、新規ビジネスの開発を進めていただきたい」と、提携の理由を話す。

 さらに、「クラウドサービスを提供することによって、多くのお客さまに利用していただけるようになったものの、当社では残念ながら、地方におけるフットプリントはほとんどない。NECが持つ、地方のカバレッジに相乗りさせていただきたい」と述べ、NECの力を活用することで、地域に密着したクラウドを提供したい考えを示した。

NECの全国販売・サポート網を活用してクラウド利用の促進を図る
日本オラクル 執行役副社長 クラウドテクノロジー事業統括の石積尚幸氏

Oracle Cloud環境をNECの国内データセンターから提供

 協業ではまず、顧客やパートナーのデータセンター内にOracle Cloud環境を構築する「Oracle Cloud at Customer」(以下、at Customer)を、NECの国内データセンターに設置し、同センターを通じて顧客ごとに日本オラクルのクラウドサービスを提供。ユーザー企業のデータを保全しつつ、既存システムのクラウドへの円滑な移行を支援するという。

 日本オラクルの石積副社長は、「『at Customer』は、簡単にいうと、当社のデータセンターにある機械を切り取ってお客さまのデータセンターに設置するもので、当社の資産であり、運用管理も当社が担当する。データは外に出したくないというお客さまはまだ多いが、これにより、データセンターから外に出すことなく、オラクルのクラウドが使える点が特徴だ。これを今回、NECのデータセンターに置かせていただく」と取り組みを説明した。

 「at Customer」は従来のようにユーザー企業のデータセンター(オンプレミス環境)への設置も可能で、これと、NECのデータセンターに設置される「at Customer」、米国のデータセンターから提供されるOracle Cloudとの連携にも対応するため、効率的な統合運用管理を行える。

国内のNECデータセンターからOracle Cloudを提供

 また、NECが提供するさまざまなサービス、ソリューションとの連携も行っていく。NECでは、地方公共団体向けソリューション、次世代PLM(製品ライフサイクル管理)ソリューション「Obbligate III」など、さまざまな業務ソリューションを提供しており、SaaSに限っても約100種類をラインアップしている。これらの製品・サービスとOracle Cloudとを連携させることで、より利便性の高いサービス提供を目指すとした。

 なお、クラウド環境への移行支援という点は、この協業においてオラクルがもっとも重視していることだ。日本オラクルの石積副社長は、「一足飛びにすべてクラウドへ、というお客さまもあるかもしれないが、『at Customer』の利用、自前でのプライベートクラウド構築など、クラウド移行には5つくらいのパスがあると考えている。NECは、その全てにおいて技術力、製品力、インテグレーション力があり、当社のお客さまのクラウド化を進めていただけるだろう」と述べ、大きな期待を示していた。

両社の協業により、ユーザー企業のクラウド移行をさまざまなパスで支援するという

 一方では、保守サービスへの取り組みも拡大する。Oracle Cloud at Customerについても、マネージドサービスの一環として一次保守を提供することにより、NECのデータセンター内に設置された「at Customer」だけでなく、顧客企業に設置された「at Customer」を含め、オラクル製品の統合的な保守サービスに対応するとのこと。

 人員の面では、今後3年間で1500人のOracle Cloud対応人材を育成するとのこと。オラクル関連では現在4000人のエンジニアを抱えるが、「製品に寄ったエンジニアリングメンバーが多い。クラウドでは運用などを含めて、多様なことを考えなければいけない」(NECの橋谷執行役員)ことから、IT環境をトータルで見て、既存システムからクラウドへの移行を支援できるようなスキルを持つ人材の育成を図る。

NECがOracle Cloudの一次保守を提供
Oracle Cloud対応人材の強化

 なおNECでは、こうした協業をさらに拡大し、IoT、AI、データレイク、セキュリティなど、さまざまな領域で新たな事業の創出を目指す。IoT領域では、オラクルの進んだクラウドサービス/技術を自社データセンター内に拡充し、IoT基盤「NEC the WISE IoT Platform」と連携させることにより、デジタル産業を支えるプラットフォームを実現していくとのこと。

 NECはこれらの取り組みにより、2020年までの4年間で、関連する領域を含めて1500億円の事業創出を目指すとしている。

単なるクラウドサービスの提供ではなく、ほかの環境やサービスとのインテグレーション、保守、運用管理などを含めたトータルソリューションの提供を図る
1500億円の事業創出を目指す
NECの橋谷直樹執行役員(左)と日本オラクルの石積副社長(右)