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「Dellは世界最速で成長する総合IT企業だ」~マイケル・デルCEO

Dell World 2014基調講演

 米Dellは、11月4日~6日(現地時間)まで、米テキサス州オースティンのオースティン・コンベンションセンターにおいて、同社最大のプライベートイベント「Dell World 2014」を開催した。

 全世界から約5250人が参加。もともとはユーザー向けイベントとしてスタートしたイベントだったものが、今年はパートナーの参加にも幅を広げたのが特徴だ。会期中にはパートナー企業を対象にしたパートナーサミットも開催され、パートナービジネスの拡大を目指すDellの姿勢を鮮明にするものとなった。

 また、これまでの「ソリューションプロバイダー」としての企業姿勢から、「世界最速の成長を遂げる総合的テクノロジー・ソリューション・ベンダー」という新たな姿勢を強調。次世代型コンバージドアーキテクチャ「Dell PowerEdge FX」をはじめとする新たな製品群の発表などを通じて、エンド・トゥ・エンドソリューションを提供することができる企業としての存在価値を訴求するものとなった。

私はいい仕事をする機会を得ている

米Dellのマイケル・デル会長兼CEO

 開催2日目となった11月5日午前10時からは、米Dellのマイケル・デル会長兼CEOの基調講演が行われた。

 デル会長は、「クラウドによって、大企業しか利用できなかった高価なシステムが、多くの人たちに利用されるようになっている。また、モバイル、ソーシャル、ビッグデータによって世界は大きく進化している。こうしたなかで、Dellは、テクノロジーによって、エンド・トゥ・エンドによる一貫したサービスを提供してきた。これがDellの基本戦略である」と前置き。

 「当社は、パートナーシップによって、幅広いソリューションを提供できるようになった。パートナーシップの取り組みについては、今後もDellを信頼してもらいたい」と述べ、パートナー戦略を重視していく姿勢を強調した。

 また、非公開化したことについてもあらためて言及。「多くの会社がM&Aを行っているが、それは顧客のため、パートナーのためになっているのか。Dellは非公開会社になったことで、エネルギーの100%を顧客の成功のために投資することができる。そして、未来のためにも投資することができるようになった」などと語った。

 さらに、顧客と年間20億にのぼる会話をしていること、Dell自らがあらゆる分野にわたる何百人ものリーダーと対話する機会を持っていることを示しながら、「私はいい仕事をする機会を得ている」などと述べた。

 続けて、約20年にわたるパートナーシップ関係を持つEmersonのチーフストラテジーオフィサー、ピーター・ゾーニオ氏が登壇。デル会長は同社を、「デジタルトランスフォーメーションをけん引している企業である」と紹介。

 ゾーニオ氏はそれを受けて、「もともとコントローラは1社が開発するものであったが、PCが登場したことにより、制御部分には、効率のいいPCを使用することになった。その点でも、Dellとのパートナーシップは自然であった。IoTの広がりにあわせて、さまざまな領域にセンサーが活用されている。環境モニタリングであったり、省電力化、信頼性向上といった領域にも広がり、センサーで収集した情報を分析することにも注目が集まっている」などとし、「われわれのビジネスの3分の2が北米以外である。Dellは、デリバリーやサポートという点でグローバル体制を持つこと、テクノロジーリーダーであることが、パートナーシップの根底にある」と語った。

デル会長(左)と、Emersonのチーフストラテジーオフィサーであるピーター・ゾーニオ氏

Dellの今後を示す4つの取り組み

 デル会長はまた、Dellが掲げる「トランスフォーメーション」、「コネクト」、「インフォーム」、「プロテクト」という4つの取り組みから、Dellが置かれた立場や新製品、今後の方向性などを示してみせる。

 「トランスフォーメーション」では、データセンターの変革について説明。Dellは、11カ国にデータセンターを設置し、1秒間に800万件のトランザクションを処理していること、ソフトウェアデファインドデータセンター化を図ることで、コンピューティング、ネットワーク、ストレージを横断的に管理し、データセンターをサイロ化しない取り組みに挑んでいることなどに触れた。

 さらに、第13世代サーバーである「R730xd」では、100TBのストレージをサポート、フラッシュメモリ採用によるパフォーマンス向上を達成。新たなストレージプラットフォームを提供するものになると位置づけた。

 また、中小規模のデータセンター向けに適した「Dell Storage PS4210シリーズ」、業界最低クラスとなる2万5,000ドルからの価格設定を行った「Dell Storage SC4020 エントリーレベル・フラッシュソリューション」のほか、90台の3.5型HDDを搭載できるDCS XA90を紹介。「1Uで279年分のデータを収納できる。サイズはミニクーパー並みだが、性能は高い」とたとえている。

 デル会長によれば、「今年前半の市場動向をストレージ出荷容量でみると、業界全体で4.3%の成長率であるのに対して、Dellは14.8%の成長率となった。EMCは7.7%減、ヒューレット・パッカードは6.2%減、IBMは7.8%減となっている」そうで、「Dellはナンバーワンストレージベンダーである」と語った。

ストレージ市場でナンバーワンを強調

非公開後もPCへの投資は加速

 続いて「コネクト」に関しては、IoTの広がりにあわせて、Dellがその市場に向けた製品群を投入していること、特に管理機能において特徴を発揮できることを紹介。さらにシンクライアントであるWyse 3000シリーズの特徴に触れる一方で、「DellはPCメーカーとしてスタートしたが、これからは、PCがIoTのハブになる。それはラッキーである。現在、全世界で18億台のPCが利用されているが、これからはIoTのインフラのなかにPCが組み込まれていることになるだろう。非公開後、DellはあらためてPCへの投資を加速している。それは、IoT時代にPCが欠かせないものになるからだ。DellはPCにコミットしており、その姿勢はこれからも変わらない」と述べた。

 また、新たに発表した5Kディスプレイ「Dell UltraSharp 27 Monitor」や、今年前半に発表したモバイルワークステーションの「M3800」、2in1 PCである「Latitude 13 7000シリーズ」といった製品群についても紹介した。

 「PC市場においては、業界全体の成長が4.3%であるのに対して、Dellは19.7%の成長率を遂げている。業界全体の成長のなかにはDellの高い成長率が含まれている。ここからDellの数字を除くと、業界全体の成長率は0.2%増にとどまる。Dellがここまで高い成長を遂げることができたのは、ユーザーやパートナーのおかげである」と語った。

PC市場で唯一勝ち組であることを示す

 最近の基調講演では、あまり製品そのものを紹介することがなかったDellだが、今回の講演では比較的多くの製品について言及していたのが印象的だ。非公開化以降、先進的な技術を搭載した製品が相次いで登場していることを裏付けるものだといってもいいだろう。

 一方、サービスについては、「Dell Data Protection」が前年比で380%という高い成長を遂げていることや、ユーザーサポートであるDellプロサポートプラスが、全世界160カ国以上において、55カ国語に対応。115以上のシステムを対象に、2万4000人のエンジニアが対応していること、さらに全世界5カ所のコマンドセンターを通じたサポート体制を用意していることも強調した。

 「インフォーム」については、Dell・ソフトウェアを通じて提供しているアナリティクスプラットフォームの「Statistica(旧:StatSoft)」と「Kitenga」について言及。ビッグデータを利用したアナリティクスソリューションを提供することで、ヘルスケア分野などで応用。手術後の感染病予防、再入院予防、前立腺がんのリスク予想などに活用できる例を挙げた。

 また、「一般道につながる高速道路の出口のように、UNIXからx86サーバーにスムーズに移行できる道筋をDellは用意している。その上で、アナリティクスソリューションを提供していくことになる」と語った。

 「プロテクト」に関しては、セキュリティを守ること、コンプライアンスを遵守すること、新たな技術を採用することでビジネスへの負担を軽減することの3つの観点から説明。さらに、アイデンティティ・アクセス・マネジメント(IAM)では、ガートナーのマジッククアドラントで、6つの領域において高く評価されていることを紹介した。

クラウド事業の柱は“選択肢を提供すること”

 一方、クラウド戦略についてもDellは言及。「Dellのクラウド事業の柱は、選択肢を提供することにある。プライベートクラウド向けにはコンバージドインフラストラクチャを提供。複数のシステムを管理することができる機能も優れている。さらにクラウドのデリバリーサービスを提供。MicrosoftやVMwareとはソリューションパートナーとしてプライベートクラウドの広がりに取り組んでいる。また、クラウドマーケットプレイスのβ版の提供を開始し、ここではAWS、Google、Azureなどのクラウドサービスも提供していくことになる」と述べた。

 Dellでは、4分の1ラックのサーバーとネットワーク機器だけで、オースティンのような中規模都市におけるあらゆる携帯電話トラフィックをサポートできる「High Velocity Cloud」ソリューションも提供している。

クラウド事業の柱は選択肢を提供すること

 最後に、Dellは、「現在、Dellは世界最速で成長する総合IT企業となった。非公開後以降、Dellは大胆になり、イノベーションのスピードがあがり、事業のあり方を再定義した。その結果、高い成長率を遂げている。これからも顧客の成功に100%フォーカスしていく企業であることには変わりがない」と宣言して、基調講演の幕を閉じた。

世界最速で成長する総合IT企業となったことを訴求

大河原 克行